表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【転生】辺境伯家の長男 《千客万来》スキルに今日も振り回される  作者: jadeit
学園編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/74

第65話 事件は無事解決……?

 調査を依頼してから、数日が経った。アルマレッタ商会と王国の調査員にほぼ丸投げしている俺には、正直なところ進捗はよく分からない。だが、あの人たちならきっと全力で動いてくれているだろう。そんなことを思っていた矢先。


「――レオン様!」


 寮の部屋でのんびりしていると、扉の向こうからノックと共に聞き覚えのある声がした。扉を開けた瞬間――。


「申し訳なかったっす!!」


 そこには、今にも床に頭をめり込ませそうな勢いで土下座しかけているルーク先輩の姿があった。


「えっ!? ルーク先輩!? どうしたんですか!?」

「レオン様が店に来てくれたのに、留守にしてしまって……!」


 どうやら、俺がアルマレッタ商会を訪ねたことを聞いたらしい。


「ああ、それなら大丈夫ですよ。マルセルさんが対応してくれましたし」

「そうっすか……それならよかったっす」


 ほっと胸をなで下ろすルーク先輩に、俺は本題を切り出した。


「それで、調査の方はどうですか?」

「はいっす。ヴァイス商会は、帝国じゃ名前を知らない商人はいない、ってくらいのデカい規模らしいっす」


 どうやら帝国では有名な商会だったようだ。


「王国進出を狙って、鉛のゴブレットを帝国から持ち込んだみたいっすけど……」

「やっぱり、あまり売れなかった感じですか?」

「っす。何人かの貴族の方が購入した記録はあるんすけど、誰が買ったかまでは、まだ追い切れてないっす」


 ルーク先輩は、申し訳なさそうに肩を落とした。


「いえ、数日でそこまで分かれば十分すごいですよ」

「そう言ってもらえると助かるっす……」

「それに、リヒト様の方でも調査してもらってますから、すぐに判明しますよ」

「っすね。こっちでも情報が入り次第、共有するっす」


 そう約束して、この日はルーク先輩と別れた。


* * * * * * *


 春休みが明け、学園には再び賑わいが戻ってきた。


「みんな、おはよ~」


 二年次生となった俺は、見慣れた面々と顔を合わした。


「うむ。二年次も頼むぞ」

「後輩もできるのだから、問題は起こすなよ」

――挨拶しただけなのに釘を刺されてしまった。


「ちょっとカインくん。それじゃ僕が問題児みたいじゃん」

「十分問題児だと思うが」

「失礼な! 僕は真面目な優等生なのに……」


 抗議すると、リヒト様は視線を逸らし、微妙な表情を浮かべた。


「そ、そうだな。確かにレオンは真面目ではあるな」

(なんだろう、その含みにある言い方は……)


「……それでヴァイス商会の件だが――」


 俺がリヒト様をジト目で見ていたら、話題をそらされた。まあ、俺も気になっていたからいいけど。


「あ~、どうなった? ルーク先輩の話だと、誰が買ったかは、まだって感じだったけど」

「うむ。ローデリヒ・ヴァイスという男が、まだ王国に滞在していてな。販売先は特定できた」


 さすが、王国お抱えの調査員。仕事が早い。


「どうやらローデリヒは、鉛の毒性について説明した上で販売していたようだ」

「そっか。それなら安心だね」

「ああ。念のため、ゴブレットの所在確認を進めている。購入者以外が使用すると危険だからな」

――これで一件落着、かな。


「大事にならなくてよかったね」

「うむ。レオンが気付いたおかげだ」

「まあ、今回はお手柄だな」

「えへへへ……照れるな~」


 素直に褒められると、やっぱり嬉しい。……と、そこでふと違和感に気付いた。


「あれ? そういえば、エリスは?」

「む? 知らんのか?」

「エリス嬢の父上の体調が優れないらしくてな。まだ領地から戻ってきていない」

「え……そうなんだ。大丈夫かな」


 少し胸がざわつく。


「まあ、数日もすれば戻ってくるだろう。その時に気にしてやればよい」

「……うん、そうだね」


 そう答えつつ、俺はなぜか払拭できない小さな不安を感じていた。


* * * * * * *


「ハーイ。私が入学しましたよ!」


 数日後。俺たちはカフェテリアに集まっていた。その理由は、目の前で元気いっぱいに手を振っているこの人――聖女のマリアさんだ。


「入学おめでとう。これでマリアさんも学園の仲間だね」


 俺がそう言うと、マリアさんは、ぱぁっと表情を明るくして頷いた。


「ハイ! とても楽しみデス」


 そして、隣にいる勇者様へと向き直る。


「どうですかユウキ! 私の制服姿は?」


 そう言うなり、くるりと一回転。


「うん。よく似合ってて可愛いよ」

「えへへへ。ユウキに褒められました」


 自分で振っておいて、照れるマリアさん。

――うん、普通にカワイイね。


 場の空気も自然と和み、カフェテリアはいつもの賑やかさを取り戻していた。


 ……はずだった。俺が何気なく周囲を見渡していると、隣からチョイチョイと小さくつつかれる。


『おい、レオン』

『ん?』


 ミナミさんが、声を潜めて囁いてきた。


『エリスは、どうしたんだ?』


 その視線の先。マリアさんと話しているエリスは、笑顔ではあるものの、どこかぎこちない。


『ああ……お父さんが病気みたいでさ』

『……なるほどな』


 ミナミさんは納得したように小さく頷いた。


『だから最近、元気ないのか』


 エリスは領地から戻ってきてから、ずっとどこか沈んでいる。父親のことを聞いてみたが、言葉を濁されてしまった。今もこうして、マリアさんの話に合わせて笑ってはいるが――。


(……無理してるよね)


『病気じゃ……僕たちには、どうしようもないしね』

『そうだな』


 ミナミさんは腕を組み、小さく息を吐いた。


『それなら、今は少し様子を見るか』

『うん……』


 無理に踏み込んで、ウザがられたら俺のメンタルが持たない。笑ってはいるが、どこか遠くを見ているような……そんな気がしてならなかった。結局その後もエリスの元気は戻らないままだった。


――はぁ~。こういう時どうしたらいいんだろぅ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ