表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【転生】辺境伯家の長男 《千客万来》スキルに今日も振り回される  作者: jadeit
学園編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/74

第63話 【武闘祭】閉会と、忍び寄る影

「それでは、武闘祭の表彰式を始めたいと思います」


 司会役の教師の声が闘技場に響く。六日間にわたって開催された武闘祭も無事に終わりを迎えた。連日の熱戦で、会場にはまだ興奮の余韻が残っている。


「第三位――、一年『ガルム』!」


 その発表と同時に、観客席からひときわ大きな歓声が上がった。


「うわ、すごい歓声だね」

「そりゃ一年で三位だぞ」


 壇上へ上がったユウキくんは、少し照れたように手を振っていた。

――さすが勇者様、キラキラしてる。


「続いて、第二位――、一年『グラニ』!」

「……っ」


 名前を呼ばれたリヒト様は、悔しそうな表情を浮かべてから前に出る。その姿は堂々としているけど、内心はきっと納得していない。


「そして優勝は――、四年『ガルム』!」


 次の瞬間、会場を揺るがすほどの大歓声が巻き起こった。そう、俺たちは決勝戦で、見事なまでに惨敗してしまったのだ。


「ぐぬぬ……決勝に私たちが出られていれば……!」


 隣でカインくんが歯ぎしりしている。


「ユウキくんとの準決勝で、全力出し切っちゃったからね」

「……否定できん」


 前日に行われた準決勝。俺、リヒト様、カインくんの三人は、死力を尽くして勇者ユウキを足止めした。その代償として――。


「筋肉痛で一歩も動けんとは、情けない……」

「いや、あれは無理だって!」


 主力三人が戦闘不能。その状態で四年次生に勝てるほど、現実は甘くなかった。


「これにて、本年度の武闘祭は閉会します」


 こうして初めての武闘祭は、準優勝という結果で幕を閉じた。そして表彰式終了後。俺たちは今、学園のカフェテリアにいた。


「「かんぱーい!」」


 ジュースとお菓子で、ささやかな“武闘祭お疲れ会”をすることになったのだ。


「お疲れ様! 準優勝おめでとう。一年で準優勝なんて前代未聞だよ」

「ありがとう。ユウキくんもお疲れ様」


 グラスを合わせると、ようやく実感が湧いてくる。


「それにしても、惜しかったな」

「ええ。優勝は見えていたのですが……」


 リヒト様とカインくんは、まだどこか悔しそうだ。


「まったくだ! 私たちに勝ったんだから、優勝くらい楽勝だっただろ」

「す、すみません……ミナミさん。私たちが不甲斐ないばっかりに……」


 エリスがしょんぼりすると、ミナミさんが慌てて首を振る。


「い、いや! エリスはよくやったぞ! 悪いのはそこの、へなちょこ三人組だ!」

「えー、しょうがないじゃん。勇者様相手だったんだから」


 俺の言葉に、ユウキくんが苦笑い。


「ちょっと、レオンくん。勇者様って……。でも結局、倒しきれなかったけどね」

「いや、ユウキよ。三人がかりで倒せなかったのは、我々の方だ」


 リヒト様も肩をすくめる。


「でも、まさかエリスさんにやられるとは思わなかったよ」

「い、いえ……あれはレオン様の作戦で……」

「えっへん! エリスはすごいんだよ」

「そうだぞ。さすが私のエリスだ」


 俺とミナミさんの称賛に、エリスは真っ赤になって俯いてしまった。


「あはは。でも来年は、俺たちが勝たせてもらうよ!」

「ふん。次も私たちが勝つ! そして優勝だ!」


 武闘祭が終わったばかりだというのに、もう次の話をしているユウキくんとカインくん。


「それじゃ、改めて――お疲れさまでした!」


* * * * * * *


 武闘祭が終わり、冬学期は平和のうちに過ぎて行った。俺の学園生活一年目は終わり、春からは二年次生となる。


「はぁ~……まさかエリスが領地に帰っているとは……」


 春休みに入って数日。冬休みの失敗を挽回するべく、買い物に誘おうとしたのだが、既にエリスは領地へ帰った後だった。


「仕方ないか……」


 俺は一人で王都の市場をぶらぶらと歩く。


「お、ここが露店エリアか。初めて来たな」


 見たことのない商品が所狭しと並び、眺めているだけでも楽しい。


「お、なにこれ? 魔よけの人形? こっちは……魔道具?」


 そんな中、露店には似つかわしくない、妙に豪華な品が目に留まった。


「ん? 何か豪華な……グラス?」

「坊ちゃん。お目が高いねぇ」


 露店のおじさんがにやりと笑う。


「こちらは貴族様御用達のゴブレットだよ」

「へぇ。でも、なんで露店で?」


 俺が尋ねると、おじさんは声を潜めた。


「知り合いの帝国商人に泣きつかれて仕入れたんだがね……」

「帝国商人?」

「ああ。鉛製なんだが、王国じゃ、あんま売れなかったみたいなんだ」

「へぇ~、それでおじさんが……って、え? 鉛!」


 思わず声が大きくなった。露店のおじさんは俺の声にビクッと肩をすくめた。


「お、おう。王国だと鉛製の食器は珍しいだろ。どうだい? 安くしとくよ」

「いや、おじさん。これでワインとか飲んだら毒になるんだよ!」

「――は?」


 おじさんの顔が凍りついた。


「確か、お酒だと鉛が溶け出しちゃうんだよ」

「鉛は毒なのか?」

「少量だと大丈夫だけど、鉛って体にたまっていくんだ」


 俺の言葉におじさんは真剣な顔をする。


「だから、ずっと使ってるとどんどん症状が悪化するんだってさ」

「……まじかよ」


 おじさんの顔がどんどん青くなっていく。


「もう売れたの?」

「いや俺んとこでは、まだだ」

「よかった……。それでその帝国商人って、どんな人?」

「あぁ、ローデリヒ・ヴァイス。ヴァイス商会って店の商人だ」


 おじさんは腕を組みながら考えている。


「そういや、妙に急いでたな……。まだ王都にいるかは分からんぞ」

「わかった。もしローデリヒさんが来たら毒の事、教えてあげて」

「お、おう、わかった。ありがとな、坊ちゃん」


 証拠品としてゴブレットを一つ買い取り、露店を後にする。こうして俺は、何やら不穏な事態に巻き込まれていくのであった。


――はぁ~。どうやら≪千客万来≫さんは、休暇という概念を知らないらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ