15-レベルが上がれば上がるほど必要なゲームマネーは増えていきます
「おお、おおお!」
ステータスの上がりが凄い。正に目を見張るような成長ぶりだ。
「魔法防御が十二上がってる!」
魔法防御が二倍になったって事だ。しかも宝珠と合わせたら合計三十三で三倍。
素早さや、物理防御もそこそこ上がってるし、初めての装備にしては性能が良すぎる。
説明文には手作りのためかなり丈夫だ、みたいな事が書かれている。
けど低レベルのモンスターで作った装備がこれなんだから丈夫なんて言葉じゃ言い表せない。
頭と、上着にシャツにズボンで二十四も上がったんだから、凄い。
最初の方で取れる装備では一番良いんじゃないだろうか。
宝珠の首飾りと比べたら見劣りしそうだけど、あれは比較的レアなアイテムを固めてるから仕方ないだろう。
「凄いよ! ミナミ!」
「ん、ああ、えーと。ステータスは凄いな」
何故かミナミの歯切れが悪い。苦笑している様にも見える。
何でだろうか。この服の出来が悪いわけじゃないだろうし。
「その、何だ。鏡出すから、見ろ」
そう言うと、ミナミの正面に姿見が出現し、もう苦笑を隠していない彼女がぐるりと回転させた。
素朴な木の枠にはまった姿見には今の僕がしっかりと、頭からつま先まで映っている。
袖無しの毛皮のシャツの肩から生えている肩にふわふわの毛がワイルドだ。
ざっくりと開いた胸元も、肘まで覆う毛皮と足首から膝までを保護する毛皮もワイルドだ。
腰巻きも、獣らしさを全面に出した兎の被り物もワイルドだ。
「……。なのに、何で、子供っぽさが抜けないのかな?」
「あたしの実力不足、と言って上げたいけど、うん。お前の雰囲気が強すぎたせいだろ」
言われなくても、分かってる。でも聞かざるを得なかったんだ。
マネキンに着せればワイルドを通り越して野蛮にすらなる服なんだけど、僕が着ると何故か子供の仮装にしか見えない。
兎の毛皮を使う時点で予想はしてたけど、ここまでになるなんて、思わなかった。
「ウルカ。ざっくり開けた胸元から男には無い色香すら感じるんだけど。どうする?」
「……。もう子供っぽくて良いから胸元は普通にしてください」
「了解。変な奴に目を付けられたくないしな」
結局、どうみても兎な服となってしまった第一回大人改造作戦だがこれで引き下がる訳にはいかない。
材質だ。材質が子供っぽかったんだ。兎とか、ふわふわの毛皮とか、もう大人を舐めてるとしか言えない。
僕は大人になるということを舐めてかかっていたんだ。
兎はあくまで兎であり、狼になれないように、大人になるにはそれ相応の材質が必要に違いない。
決して、決して、僕の雰囲気があらゆる大人感を打ち消す訳じゃないんだ。
打ち消す訳じゃ、無いはずなんだ。
「……へこみそう」
マヨが言った言葉が脳裏をよぎるから更に気分が下降していくよ。
「おい。胸元塞いだけど」
「あ、ありがとう」
これならまだ変な色気は無い。ただの子供だ。
言ってて、嫌になる。
ただだろうが何だろうが子供じゃ駄目なのに。
「後、これ、お金」
「え? 作ってもらったのに何で?」
「作業を手伝ってくれた報酬と素材の分」
ああ。すっかり忘れてた。確かにその料金は貰わないと三十分の狩の成果が無くなってしまう。
「じゃあ、遠慮無く」
僕がそう言うと、直ぐにミナミからお金が送られてきた。
料金は6000Gとかなりの大金……あれ?
これって植林地買えるよね
突然降って沸いた事実に思考が固まるけど、その向こう側で、ミナミが話し続けている。
「後、その服の料金は要らない。お前が手伝ってくれたお陰で良い革がこんなにあるからな」
「へ、へえ。ごうきだね」
何とか、返事だけして、僕は所持金を見る。
やっぱり、一万を悠に超えてる。
「豪気? そうかな?」
不思議そうに首を傾げてるけど、支払った料金も含めて、本当に豪気な人だ。
僕ならせいぜい割引するだけだし、ミナミの懐はなかなか深いに違いない。
「この革使えば50000Gは簡単に稼げるからそんなに豪気とは言えないよ」
「へ!?」
「いや、だから50000Gは簡単に稼げるんだ。ここの賃貸料と、道具の維持費、消耗品の分を差し引いても、25000Gの利益になる。本当に助かった。今日もまた延々と金稼ぎしなきゃいけないと思ってたんだ」
つまり、余りにも収入が多かったから、この兎服の代金を差し引いても六千残ったって事か。
「二次生産って凄いなあ」
出費とか収入が万単位なんて規模が大きすぎるし、気後れしそうだ。
僕も万単位の買い物をしようとしているけど、ミナミの場合は毎日だから、失敗したら大損害になる。
ゲームとは言え、所持金ゼロで工房を追い出されたらショックだろうな。
「そう考えたら二次生産って大変そうだなあ」
「そうでも無い。スキルレベルと少しの人脈があればかなり儲かる」
片付けをしながら、ミナミは何でも無いように言うけどどことなく誇らしげだ。
50000Gも稼げる目処があるってことはミナミがそれだけの努力をしてきたという証明だから誇らしいのも頷ける。
「あたしはこれから更に素材を集めようと思うんだが、ウルカはどうする?」
「僕は、どうしようかな」
もう植林地の為のお金が貯まってるし、さっさと買いに行こうかな。
「ああ、でも斧用のスキルポイントが足りないんだっけ?」
「スキルポイント? 初級のスキルを取るなら南のボスで十分だろ」
「ニポイント欲しいんだよね。そこのボスって一ポイントだけでしょ」
安易に選択したのが、本当に悔やまれるよ。
「また倒せば良いだろ」
「え!? 良いの!?」
「良いも何もレベルが二十以内ならいくらでもポイント取れるぞ。初心者の強い味方だな」
「よし、言ってくる!」
「いや、でもボスの適正レベルは」
何か後ろで聞こえたけど、僕は風を切る音で全て聞き取れなかった。
ドアを押し開け、外に飛び出した僕は、空に向かって踏み出した。
身体が滑るように宙を突き進み、更に一歩踏み出すと空気の抵抗で腰巻きがはためく。
目指すは南門の外に居る、ボスの元だ。
・ウルカーLv10兎系獣人
物攻33
物防11+5
魔攻27
魔防11+22
素早33+8
(プラス値は装備)
・スキル
兎跳びLv3
ハイジャンプLv6
空中動作制限解除Lvー
植林Lv1
植物成長促進Lv1
・装備
野兎頭巾
野兎のシャツー手袋
野兎の腰巻き
野兎のズボンー臑当て
只の靴
スライム宝珠の首飾り
総重量10




