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N・A・SーOnline  作者: 想磨
11/22

11-仲間を作り、楽しみましょう

 自分らしく、とは言ったものの結局やることは変わらず、ただひたすら兎とスライムを踏み潰す作業だ。


 他にやることなんて思い付かない、と言うのもあるけど、ミナミさんの事もある。


 ミナミさんが素材不足で困っているのだから僕が補わなければいけない。


 ここで引き下がるなんてイケメンでダンディな大人とは言えないからだ。


「やっぱり格好いい大人たるもの、困ってる人を見たら助けるべし、だね」


 そうと決まれば素材集めだ。


 スライムの膜じゃ透け透けな服になってしまうから、兎を中心に狩ろう。


「スライム膜の服に、未練は無い」


 女の子に向かってそんな服を着て欲しいなんて、口が裂けても言えないから作れたとしても無駄だ。


 いやいや、そもそも考えるだけでもいけない。これじゃあ小学校にたまに居るエロガキじゃないか。


「跳んで移動すれば頭、冷えるかな」


 スキルも上がって心頭滅却出来て、一石二鳥だ。


 よし。そうと決まれば、直ぐに跳ぼう。


 今の僕は軽く跳ぶだけでもかなりの高さを出せる。


 そこに、更に兎跳びの能力で高さを出して、門の上に登った。


 門の上から見ると大草原の雄大さがよく分かる。


 反対を向けば、素朴で暖かみのある街並みが一望出来た。


「この高さなら屋根まで登れそうだ」


 門の上から跳び上がると、予想通り、屋根へと登れた。


 以前この屋根を走っていた人が居たから想像出来ていたけど、足場は良い。


 屋根の真ん中に平坦な箇所があるから、そこを走っていたんだろう。


 僕は物語で語り継がれる怪盗のように駆け出し、軽やかに飛び跳ねて、南門まで走り去った。


「よし。南門に到着。確か兎は南西に多く居た筈だよね」


 遠目でしか見てないけど、多分、間違っていないはずだ。


 記憶を頼りに西へと歩き続けて居ると、僕の想像通り、兎があちらこちらで草を食べていた。


 見た目は可愛いのに、何であんな濁声だったんだろう。


 思い出しながら、狩場を探して周りを見やれば半袖短パン姿のプレイヤーが数人居て、剣や大鎌を振っている。


 皆、思い思いの流儀で振るい、スキルを使って華麗に倒している。


「うらやましくない。僕には脚がある。うらやましくない」


 だけど、もう少し奥の方へ進もう。兎の群れが居るかも知れない。


 僕は緩やかに隆起した丘を目指して、空を跳んだ。


 髪と一緒に兎の耳がなびく感覚から、かなりの速度を出してる事が分かる。


 跳躍の速度は素早さ依存何だろうか。


 でも、そんな事になったら素早さが高くなればなる程跳躍力高くなるから、有り得ない。


 スキルレベルに依存するんだろうか。


 もし、そうなら最終的に目まぐるしい速度になりそうだ。


「後で、マヨに聞いてみよう。あれ?」


 丘に隠れていた平原で、誰かが兎を突き刺している。


 見覚えがある、あの露出度の高い黒の服から察するにミナミさんだろう。


 位置が側頭部にずれたポニーテールもあるし、間違いない。


「サイドテールって言うんだっけ」


 姉さんがカツラみたいな奴で僕にやらせた髪型だから間違いない。


 何で男の娘にならないのか、姉さんは悩んでたけど、これで似合ってたら僕は間違い無く二階の窓から飛び降りてた。


「ただでさえ子供みたいなのに」


 嫌な思い出は忘れて、とにかくミナミさんと合流しよう。


 そう思って、接近したけど、、彼女様子がおかしい。


 針のような剣で小さな兎を攻撃しているんだけと、動きに切れがない。


「切れというか、覇気?」


 更に近付けば、彼女の声が微かに聞こえてきた。


 だけど意味の無い呟きなのか、うまく聞き取れない。


 更に近付くと、呟きの内容は聞き取れた。


 いや、聞き取ってしまった。


「嫌わレた嫌ワれたキラわれた嫌ワレた嫌わレタ嫌ワれタキラわレタキラワレタキラワレタ」


 足の先から兎の耳の先まで、悪寒がひた走る。


 覇気が無いわけでも、切れが無いわけでもなかった。


 その代わり、背中に変な気配を背負っている。


「これは重症だ」


 早く何とかしないと、何が起こるか分からない。


「ミナミさん!」




 呼び掛け、近付くと、ミナミさんがゆらりと顔を上げ、虚ろな表情を見せた。


 お化け屋敷にそのまま置けるくらい、怖い。


「ミナミさん?」


「何だ。あの御方に嫌われた惨めで愚鈍なあたしに何か用」


 何という陰鬱な雰囲気。周りの麗らかな景色も色褪せて見える。


「あの、マヨはあの程度で人を嫌いになりませんよ」


「嘘だ。だっていきなりあんな、あんな話を」


「大丈夫です。マヨはマヨネーズを無体に扱わない限りは人を嫌いになりません」


「本当か?」


「ええ。まだまだ挽回のチャンスも作るつもりです」


 そしてあのモテモテ野郎を困らせてやるのだ。


「ば、挽回のチャンス?」


「ええ。挽回のチャンスです」


 あわよくば修羅場なんてものも作りたいから、今ミナミさんに抜けられたら困るんですよ。


「ふふふ、任せて下さい」


「そうか。お前、良い奴だなあ」


 僕の思惑なんて知らないミナミさんはすっかり元通りになり、尖った剣を振った。


「なら、あたしは代わりに君の服を作って大人にしてやろう」


「本当ですか!?」


 とうとう僕が生まれ変わるのか。


 いや、落ち着け、衣服は着こなしが大事なんだから。


 でもオーダーメイドの服だからびしっと決まってダンディになるかも知れない。


「だけど、手が足らない。悪いが手伝え」


「喜んで!」


「そうか。じゃあ、作戦会議をしよう。ウルカは何が出来るんだ?」


 僕が出来ることなんて一つしかない。


「跳躍からの踏みつけです」


「へえ。他には?」


「無いです」


「……レベルは?」


「十レベル」


 そう言うと、ミナミさんの表情が不思議そうになった。


「始めてから何日経ってるんだ?」


「今日が初日です」


「はああ?」


「始めて二時間も経ってません」


「一体何をしたら……ああ、だからあれだけのアイテムがあったのか」


 納得したミナミさんが針のような剣をしまって、大きな糸車を取り出した。


 大小二つの車輪が付いた木製機械を撫でて、ミナミさんが頷く。


「つまり、君が敵をおびき寄せてあの御方が一掃したんだな。ならあたし達も同じ作戦で」


「いや、逆ですけど」


 ミナミさんの撫でる手が止まり、信じられないような表情で見る。


 まあ、信じられないよね。


「マヨが集めて、僕が倒しました」


「その頃はレベル一だろう」


「マヨに言われるままに跳躍をして、踏みつけること十分。気が付けばこんな状態でした」


「うん。流石はあの御方だ」


 本当に流石だよ。簡単に人を信じさせる。


 これが厚みのある人間性のなせる技か。


「だから、ミナミさんが敵を引きつければ僕が直ぐに倒しますよ」


「だけど、あたしのスキルにはそんな能力は無い」


 じゃあ僕が、なんて言いたいけど、僕が出来るのは跳躍のみ。


 攻撃して引っ張ろうとしてもここに居る兎程度じゃ一撃で死んでしまう。


「ウルカも引っ張る事が出来ないなら仕方ない。勝負をしよう」


「勝負?」


「どれだけ素材を集められるか。時間は三十分。どうだ?」


 ミナミさんのレベルは高そうだから、勝てる可能性は低い。


 けど男にはやらないと行けない時がある。


 紳士でダンディな男になるんだからこれぐらいで怖じ気づく訳にはいかない


「やります」


「そうかそうか。素材の数が多い方が勝ち。制限時間は三十分。用意」


「あ、待って下さい。どうやって数えるんですか?」


 大量の素材を数えるなんて作業をすれば、途中で力尽きる事は目に見えてる。


 だからといって自己申告じゃ、きっちりとした勝負とは言えない。


「そうだな……。肉は売れば、数が分かる。それ以外はあたしの借りている工房で取り出しながら数えれば良いんじゃないか?」


「え? 三十分で集めた奴をですか?」


「気合いで何とかなるだろ。気合いで」


 気合いは万能じゃないですよ。ミナミさん。


「……分かりました」


 こうなれば気合い十分なミナミさんに押し付けよう。


「よし。じゃあ、三十分後にここで集合だ。始め!」



 言うや否や、ミナミさんは糸車のペダルを踏んで車輪を回し始めた。


 連結された車輪が紡ぐはずの糸を付けないままからからと回転する。


 何をしているのか、気になっていると、ミナミさんが手で何かを手繰り寄せた。


 すると、周りにいる兎達の身体から細い糸が伸び、ミナミさんの手の中に、そして糸車へと吸い込まれていく。


「何ですか。それ」


「見てれば分かる。でも勝ちたいなら見ずに動き始めな」


 にやりと笑って、ミナミさんは糸を紡ぎ続ける。


 そうは言われても気になって仕方がない。


 ミナミさんの手に集まった細い糸が糸車に作られた小さな穴に吸い込まれ、捻れていく。


 捻れたそれは輝きを放つ太い糸になり、連動して回る軸へと巻き取られた。


 一連の動作は、芸術のようで、輝く糸が織り成す物語に僕は見惚れていた。


 やがてミナミさんはペダルを踏む足を止め、軸から糸を取り出す。


 捻って作り上げた糸は先が分岐していて、兎達に繋がっている。


 ミナミさんはそれをちらりと見やり糸切り鋏を取り出した。


 そして何気ない動作で真ん中から断ち切る。

 一瞬でミナミさんの周りに居る、身体から糸が生えた兎達が倒れ、消えていく。


 二十匹は下らない兎達が一斉に死んだのだ。


「て、あれ? 何で?」


「あたしの魔法だからだ」


 つまり、ミナミさんは範囲攻撃なんてお手の物ということだ。


「ぼんやりしてるなんて余裕だね」


 ミナミさんが笑って、手を差し伸べると、十メートルも向こうの兎から糸が伸びて手に収まった。


 その光景に僕は弾かれたように走り出した。


 ミナミさんの周りに居る兎は多分直ぐに刈り尽くされる。


 遠くに行かなくちゃ。


 でも幾ら離れても見栄だけで即決したこの戦い、勝つ自信が全く無い。


「あれは反則だよ。僕なんて文字通り、虱潰しにやるしか無いのに」


 僕は取り敢えず、見掛けた一匹に八つ当たりの一蹴りを浴びせた。



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