8:初めてのパーティー戦闘:強襲
強力な魔法を発動させようとしているメイジゴブリンを止めるべく、僕は前進していた。
そんな僕の進行を止めるように、複数のゴブリンが現れたのだった。
よく見るとメイジゴブリンの周りに数体の護衛がいる。
どうやらあいつらを倒さないといけないようだ。
「ギィー」
「ギギィー!」
盾やこん棒を持った前衛のゴブリン達が僕を威嚇した。
いや、それだけじゃない。ゴブリン達は目を赤く輝かせ、僕を殺そうと飛びかかってきた。
「おっと」
僕は右足を軸にし、後ろへ下がるように身体を回転させて顔面に迫ってきたこん棒を躱す。
すると今度は、死角から肩を叩き壊すようにゴブリンがこん棒を振り下ろしてきた。
それに気づいた僕は回転の勢いを利用し、ゴブリンの顔面に蹴りを入れた。
それを見てか、前後から挟み撃ちするように飛びかかってきた。
一方は頭を、一方は胴体を狙っていた。
それを確認した僕は、まずは屈んで頭を吹っ飛ばそうとしたこん棒を躱す。
同時に剣を突き出し、胴体を狙ってきたゴブリンの胸を貫いた。
「ギギッ!?」
全ての攻撃が凌がれたためかゴブリン達が怯み、後ろへ下がる。
チャンスだ。
そう感じた僕は、ゴブリンを一網打尽にするべく突撃した。
僕はそれに追撃をかけようとする。
だが、大地を蹴ろうとする寸前に、アリサさんが大声で僕を呼び止めた。
「カロル君、下がって!」
言われた通りに僕は後ろへステップする。
直後、燃え盛る火球が僕の身体を横切った。
火球はそのまま逃げ出したゴブリン達へ飛びかかり、全てを飲み込むように大きな火柱を上げた。
「ギャー!!!」
轟音と共に、ゴブリン達が灰となっていく。
僕は火球を放ったであろうアリサさんに顔を向けた。
よく見ると杖には赤い光が仄かに残っており、足元にはまだ輝きを残している魔法陣がある。
どれほど強力な魔法を使ったのかわからないけど、おかげであのゴブリン達をねじ伏せる手間が省けた。
「ありがとうございます!」
「どういたしまして。あとはあのゴブリンだけよ!」
僕は前に顔を向け、走る。
残っているのはあのメイジゴブリンだけだ。
あいつが魔法を発動させる前に叩かなければ。
僕は足に力を入れる。
メイジゴブリンを倒すために、力いっぱいに大地を蹴った。
「急いでカロル君! もうすぐ魔法が発動しそうよ!」
「ギギギギャギャギャッッッ」
気がつけばゴブリンの背に、赤い魔法陣が幾重にも重なって広がっていた。
もうすぐ魔法が放たれる。
だからなのか、メイジゴブリンは勝ち誇った顔をしていた。
くっ、このままじゃ間に合わない。
でもこれ以上のスピードは出ないぞ。
そう思った瞬間、アリサさんが叫んだ。
「リングを指にはめて!」
僕は先ほどもらったリングの存在を思い出す。
言われた通りに指にはめると、途端に身体が軽くなった。
軽くなったおかげか、一気にメイジゴブリンとの距離が詰まった。
メイジゴブリンは劇的に速くなった僕を見てか、一気に青白い顔へと変化させた。
「ギャギャギャーーーッッッ!!!」
僕は剣を強く握りしめる。
そして、勢いのままに駆け抜け、メイジゴブリンの頭をはねた。
倒れていく身体は灰となって霧散し、展開していた赤い魔法陣も消えていった。
「よしっ」
メイジゴブリンを倒せた。
僕は戦闘に勝利したことに喜んだ。
だけど、喜びすぎたためか僕は着地することを忘れてしまった。
だから、そのまま滑り落ちるように転んでしまう。
「あらぁー?」
転んだせいか、握っていた剣を手放す。
どこかで剣が突き刺さる音が聞こえると同時に、僕は背中を打った。
幸い、受身をちゃんと取ったからケガらしいケガはしなかったけど、全身が砂ぼこりまみれになってしまった。
「くぅー……」
なんで最後はこうも締まらないんだ。
いや、それよりも身体の感覚がおかしい。
なんというか、異常に軽い。
もしかしてアリサさんがくれたこのリング、とんでもないアイテムなんじゃないか?
僕がそう考えていると、アリサさんが心配して駆け寄ってくれた。
「大丈夫? カロル君」
「はい。なんとか」
無理矢理笑顔を作り、アリサさんに笑いかける。
僕のそんな顔を見てか、アリサさんはちょっとだけクスッと笑った。
「ごめんね。もっとちゃんと説明をすればよかったわ」
「いえいえ。それよりも、助かりましたよ。
アリサさんがくれたリングがなかったらゴブリンを倒せませんでした」
リングの身体強化のおかげで、メイジゴブリンを倒すことができたんだ。
だから僕は、アリサさんにお礼を告げる。
「ありがとうございます、アリサさん」
そんな僕の言葉を受けてか、アリサさんはちょっと照れくさそうに笑った。
「どういたしまして」
アリサさんの手を借り、僕は立ち上がる。
そして闇が広がる大迷宮を見つめた。
冒険もクエストも始まったばかり。
それでも僕は、初めてパーティーを組んで行った戦闘を無事に終えたのだった。




