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貧乏脱出を掲げて冒険者になったら、女神みたいな魔法使いと出会った ~知恵と工夫で難題クエストを一緒に攻略だ!~  作者: 小日向 ななつ


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6:再会と緊急クエスト

 大迷宮ハンバルド――多くの冒険者が完全踏破に挑み、未だに達成されていない大迷宮の一つだ。

 なんでも、この迷宮は奥に進めば進むほど強力な魔物と、死が救いだと思えるほどのえげつないトラップが待ち構えているらしい。


 他にも理由があるって聞くけど、経験が浅い新米冒険者では絶対踏破できないと言われている。


 僕は、そんな大迷宮ハンバルドの出入り口前に立っていた。


「これが、大迷宮の入口……」


 僕はゴクリと、唾を飲み込む。


 大迷宮の出入り口。

 それは、どう見ても地下へ降りる階段にしか見えない。

 魔物が出てこないように見張りがいるかと思っていたんだけど、それらしい人はいなかった。


 代わりにクエストボードが置かれ、クエストを受諾する受付嬢の姿もあった。

 どうやらここでもクエストは受けられるようだ。

 その証拠にたくさんの冒険者がクエスト用紙を手に取って受付嬢に声をかけている。


 僕みたいに一人で大迷宮へ挑もうとしている少年。

 作戦会議をし、時には脱線した話で盛り上がっているパーティー。

 クエストなんてお構いなしにアグラをかいて楽しく酒を煽っている大男。


 あれ、あいつどっかで見たことがある気がするな。

 ま、いっか。たぶん気のせいだろう。


 そんなこんなで、冒険者達がたくさんいる入口前で僕は胸を膨らませていた。


 ああ、一体どんな魔物がいるんだろうか。

 トラップって、どれほど危険なものなんだろう。


 その全てを乗り越えてやるぞ!

 それでクエストを達成して、お金をたくさん稼ぐんだ!!!


 僕は気合いを入れ、大迷宮へ足を踏み入れようとしたその時だった。


「あっ、また会ったわね!」


 かわいらしい声が僕の耳に飛び込んできた。

 振り返るとそこには、誰もが振り向く絶世の少女である魔法使いのアリサさんがいた。


 アリサさんの姿を見て、僕はついつい緩んだ笑顔を浮かべてしまう。

 そんな顔を見てか、アリサさんは僕に微笑み返してくれた。


「カロル君だったね。冒険者になれた?」

「はい! 無事になれました!」

「よかった。ならこれから一緒に冒険できるわねっ」


 アリサさんは口元に手を添え、嬉しそうに笑っていた。

 その笑顔に僕の胸を撃ち抜かれてしまう。


 なんだよ、今の。

 猛烈に抱きしめたくなるじゃないか。

 いかん、このままでは変態になってしまう。

 そうなったら一巻の終わりだ。


 僕は抱きしめたいという衝動を抑えつつ、アリサさんに笑顔を浮かべる。

 するとアリサさんはなぜか小首を傾げた。


 どうしたんだろう?

 アリサさんの仕草が気になり、僕はつい訊ねた。


「どうしましたか?」

「一人で大迷宮に潜るつもりなの?」

「ええ、まあ。ここに来たばかりなので、知り合いなんていませんし」


 僕は正直に、自分の状況について話す。

 誰かがいたらいろいろと頼っているだろうけど、いないからどうしようもないし。


 そんなことを思っていると、アリサさんがとんでもない提案をしてきた。


「よかったらパーティーを組まない?」

「え!?」


「実は、一緒にパーティーを組んでくれる人が急用で大迷宮に潜れなくなっちゃって。

 だから、カロル君がよかったらって思っているんだけど、どう?」

「え、ええ!?」


 思いがけず変な声を僕は出してしまった。


 え? いいんですか!?

 新米冒険者の僕と、パーティーを組んでくれるんですか!!?


 わなわなと震えていると、アリサさんが不安そうな顔をした。

 僕を見上げ、答えを急かすように返事を求めてきた。


「ダメ、かな?」

「そんなことありません。ぜひ、パーティーを組みましょう!」


 僕の返事を聞いたアリサさんの顔がパッと花開く。

 僕の手を握り、輝く笑顔のまま感謝を口にした。


「ありがとう! これからよろしくね、カロル君!」


 ああ、幸せだ。

 アリサさんに手を握られて、それに喜ばれて、もう幸せすぎて死んじゃいそう。


「あっ」


 そういえばパーティーってどうやって組むんだろう?

 このまま一緒に活動すればいいのかな?


 なんとなく気になって、受付窓口に顔を向ける。

 だけど、そこに立っているはずの受付嬢の姿はなかった。

 奥に目を向けると、何やら慌ただしくやり取りをしている光景があった。


 どうしたんだろうか?

 そう思い、受付窓口を見つめているとアリサさんが声をかけてきた。


「どうしたの?」

「あ、いえ。その、パーティーを組む時って、何か手続きとかあります?」

「ないわ。あるとしたら、クエスト報酬をどう分けるか、ぐらいかな?」


 なかなかにシビアな問題だ。

 確かに取り分をどうするかは決めておかないと、後で問題になりそう。


「えっと、一般的にはどうしているんですか?」


「均等になるように分ける、かな。

 個人的に手に入れたドロップ品はその人の取り分にすれば、あんまり問題は起きないわね」


「じゃあ僕達もそれで行きましょう」


 ひとまず分け前に関してのルールはこれで行こう。

 お金のこじれは人間関係にも響くからね。そうならないためにも、あんまり不満が出ない方法を取ったほうがいい。


「ふふっ、わかった。ところでカロル君、何かクエストを受けてる?」

「はいっ。アオキノコ採取というのを受けてますよ」

「そっかそっか。せっかくパーティー組んだんだし、他にもクエストを受けてみない?」


 魅力的な提案だ。

 確かに、アオキノコ採取のクエストだけじゃあ食いっぱぐれちゃうからな。

 でも、僕はまだランクが一つ星だからたいしたクエストは受けられないし。


 どうしたものか。

 そう考えていると、受付窓口から「みなさん、緊急クエストです!」という声が放たれた。

 振り返るとそこには、ベルを振って注目を集めている受付嬢の姿がある。


 なんだなんだ、と思って見つめると、受付嬢はこう言葉を続けた。


「内容は解毒草の採取です。納品数は十個。

 クエスト達成者には1000ゴールドの報酬を出します!」


 え? 採取クエストで1000ゴールド!?

 アオキノコじゃあ十個で100ゴールドだぞ。

 その十倍って、どういうことなんだ?


 あまりの破格の報酬に、僕が驚いていると隣に立つアリサさんが手を握ってきた。

 反射的に顔を向けると、アリサさんは目を輝かせながらこんな言葉を言い放つ。


「やろう、カロル君!

 採取で1000ゴールドなんて破格すぎるわ!」

「え、ええ。いいですよ」


 すごいがっつきだ。

 まあ、冒険者だからね。

 美味しいクエストあったら飛びつくよね。


 それにしても、どうして急にこんなクエストが。

 というか、このクエストって僕でも受けられるのか?


「あの、アリサさん。ちょっと聞きたいことがあるんですけど……」

「どうしたの、カロル君?」

「緊急クエストって言ってたじゃないですか。それって、僕でも受けることができるんですか?」


 僕の質問を聞いたアリサさんは、ハッキリと「うん」とうなずいて答えてくれた。


「緊急クエストは誰でも受けられる特殊なクエストなんだ。

 まあ、裏を返せば発注者はそれだけ切羽詰まってるってことでもあるんだけどね」


「ああ、だから誰でもってことになるんですか」

「うん。でも、解毒草で1000ゴールドか。

 もしかしたら発注した人は、相当切羽詰まっているかもね」


 神妙な面持ちのアリサさんを見て、僕はあることを思い出す。

 それはギルドに駈け込んできたパーティーについてだ。


 確か、ポイズントードの毒にやられたって話だったな。

 もしかしたら、あのパーティーかも。


「どうしたの?」


 ちょっと前の出来事を思い出していると、アリサさんが僕の顔を覗き込んできた。


 背が低いためか、上目遣いで僕を見つめてくれる。

 こんな人とパーティーを組めるなんて、ものすごく幸せなんだけど!


「いえ、なんでもありません」


 とはいえ、気を緩めちゃいけない。

 男らしく、キリッとしてないと嫌われちゃうぞ。


「そう? じゃあ、すぐに緊急クエストを受けよう。早くしないと誰かが先に達成しちゃうわ!」


 こうして僕は、アリサさんとパーティーを組んだ。

 そして、緊急クエスト【解毒草の採取】を受け、二人で大迷宮へ潜っていく。


 ああ、なんて幸せな響きなんだ。

 二人で大迷宮へ、って。


「僕は幸せ者だぁー」


 おっと、つい心の声が口から出てしまった。


 さて、ここからは気を引き締めて挑まないと。

 なんせ、これから入るのは誰も完全踏破したことがない大迷宮。


 何が待ち受けているか全くわからない未知の世界だ。

 下手したら、いやちょっとしたミスで命取りになる。

 大きな緊張感が僕を包み込む中、アリサさんが胸を叩いた。


「安心して。私がいろいろと教えてあげる」

「え?」

「こう見えても、私は君よりもお姉さんよ。だから、頼りにしてねっ」


 アリサさんはウインクし、ぱたぱたと駆けて階段を降りていく。

 僕はその後ろを追いかけ、階段に足を踏み入れようとした。


 だが、その前にある言葉が引っかかった。


「僕よりもお姉さん?」


 え? アリサさんって、年上なの?

 え? もしかしたら同年代なんじゃないかって思ってたけど、違うの?

 というか、年上なの!? あの小ささで!!?


「えぇえぇぇえええぇぇぇぇぇっっっ!!!!!」


 僕は衝撃的な事実を知り、絶叫した。

 その声は賑わっている冒険者達を静まらせ、一斉に視線を集めたのだった。


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