↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
3/16

第3話「私の未来は処刑でした」

私は、三年後に魔王が復活する。


 その事実を思い出した。


 けれど。


 私には、それよりも先に向き合わなければならない未来があった。


「私は……処刑される」


 乙女ゲームの中で。


 私は悪役令嬢だった。


 王太子フィリップとの婚約を破棄され、その後、国外へ追放される。


 そして――最後には処刑される。


 それが、ゲームの中での私の結末だった。


「……そんなの、嫌」


 思わず、言葉が漏れた。


 ゲームの中の私は、何もできなかった。


 婚約破棄をされ、居場所を失い、追放される。


 そして誰にも助けられることなく、命を奪われる。


 それが決められた未来だった。


 けれど。


 私は、ゲームの中のマルグリットではない。


 今の私は――この世界で生きている。


「まだ、何も起きていない」


 婚約は破棄された。


 それは、もう変えられない。


 けれど、国外追放も、処刑もまだ起きていない。


 そして何より。


 私はゲームの結末を知っている。


「だったら……変えられる」


 未来を知っているのなら。


 それを利用すればいい。


 私は魔力が弱い。


 剣を握って戦えるほどの力もない。


 特別な才能があるわけでもない。


 だからこそ。


「私にできることを探そう」


 ゲームの知識。


 それだけが、今の私に与えられた武器だった。


 ゲームの中で起きた出来事。


 これから起きる事件。


 そして――三年後に復活する魔王。


 すべてを正確に覚えているわけではない。


 ゲームの展開だって、現実になれば同じように進むとは限らない。


 それでも。


 何も知らないよりは、ずっといい。


「まずは、王都を離れよう」


 このまま王都に残っていれば、ゲームと同じ未来へ進んでしまうかもしれない。


 だったら。


 自分から、その道を外れる。


 私は父の治める領地へ戻ることを決めた。


 王都から離れた辺境。


 ゲームの舞台としては、王都ほど大きな出来事が起きる場所ではなかった。


 けれど。


 ゲームの中では、そこにもいくつか重要な場所が存在していた。


 今なら、まだ間に合うかもしれない。


 ゲームでは後になって価値が判明する場所。


 魔王復活に備えるために使えるもの。


 それらを、今のうちに調べておく。


 そして領地を整える。


 魔王が復活する三年後に備えるために。


 そして何より。


 自分が処刑される未来を変えるために。


「私は、生き残る」


 誰かに決められた未来ではなく。


「私自身の人生を、私が選ぶ」


 そう決めた。


 けれど。


 王都を離れると決めたからといって、すぐに出ていけるわけではない。


 私は伯爵令嬢だ。


 勝手に王都を出て、領地へ戻ることなどできない。


 それに――。


 父には、婚約破棄のことを伝えなければならない。


「……お父様に、相談しないと」


 婚約破棄を受け入れたこと。


 そして、これから自分がどうしたいのか。


 すべてを話す必要はない。


 前世の乙女ゲームのことも。


 三年後に魔王が復活することも。


 今の私が話したところで、信じてもらえるとは思えない。


 それでも。


 領地へ戻りたい理由くらいは、自分の言葉で伝えなければならない。


「明日の朝、お父様に会いに行こう」


 そうすれば。


 きっと、何かが変わる。


 王都に残るのではなく。


 自分から未来を変えるために動く。


 そのための最初の一歩だ。


     ◇


 翌朝。


 私は父の執務室へ向かった。


 廊下を歩きながら、何度も足を止めそうになった。


 婚約破棄のことを、父はどう思っているだろう。


 怒っているだろうか。


 悲しんでいるだろうか。


 それとも――。


 私は扉の前で、一度だけ深呼吸をした。


 そして、扉をノックする。


「お父様。少し、お話があります」


 私は、新しい人生の最初の一歩を踏み出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。