12.ライハート&アンドリュー
実技テストがあった日の放課後の生徒会室
「パトリシアとフェルナンドは人柄も分かってるし、優秀だから生徒会に入ってもらうとして、あと一人女生徒が欲しいよな」
生徒会室にある休憩用のソファに座ったライハートは書類を捲りつつ、紅茶の入ったカップを口元に運ぶ。
「あの子がいいじゃん。リーリエちゃん。なんか変な大きなメガネ掛けてるけど、よく見れば結構かわいい顔だし、なんと言っても面白いし」
アンドリューが向かいの席で、クッキーを頬張るのを目を細めて見た。
「入学式の時に会った聖属性の子だよな?そう言えば、お前あの時、入学式サボろうとしてただろう」
「なんのことかな?」
アンドリューはライハートの冷たい視線を気にも止めない。
「リーリエ嬢は庭で迷子になっていたんだろ?アンドリューが庭に行った時点でサボろうとしてたのは明白だ」
「イヤだなぁ、たまたまだよ」
「まったく、もう少し真面目にやれよ」
ライハートは暖簾に腕押しなアンドリューに諦めたようにため息をついた。
「で、なんでリーリエ嬢なんだ。理由がかわいくて面白いだけじゃ困る」
「あの子、平民なんだろ?だけど、なんかちょっと所作がキレイなんだよね。不思議だよね」
アンドリューがニタリと笑う。
「それに、家紋はないけど、立派な馬車で送迎されてるらしいよ。かっこいい護衛もついてるって噂」
「護衛はレオナルドだろ?事情があって、王宮から派遣したんだ。馬車の方は分からないな」
「平民の魔力検査って一カ月前だろ?だから、平民の魔力持ちは魔力の扱い方を知らないし、大概最初は魔法が使えないまま、入学する。だけど、リーリエちゃんは今日の魔力テストで虹色の光の玉を出したらしい」
「お前、やけに詳しいな」
この短期間で調べ上げたらしいアンドリューに顔を引き攣らせた。
「だが、確かに不自然だよな。学力テストも三番らしい。魔力も扱えるなら、クラスは確実にAだな」
ふむと考える。
「誰か、貴族の後ろ盾があるのか」
「まぁ、そんな気になるリーリエちゃんなんだけど、面白いのは僕たちに近づかないっていうより、近寄りたくないって感じなんだよね」
「あぁ、確かに入学式の時も一刻も早く立ち去りたそにしてた」
「本人は顔に出してないつもりなんだろうけど、顔に思いっきり不本意って書いてある」
思い出したのか、アンドリューの口が楽しそうに弧を描く。
「媚を売るわけでも、臆してるわけでもない。僕たちに擦り寄ってこない女の子は希少だと思うよ。優しくすると勘違いするようなのじゃ、困るだろ」
「なるほど、一理あるな」
王子であるライハートはもちろん、ガルレン侯爵で魔法庁長官の息子のアンドリューも容姿に恵まれたのもあって、小さな頃から欲に塗れた令嬢に囲まれていた。
ライハートはパトリシアが婚約者に決まってからは随分楽にはなったが、パトリシアに取って代わろうとする者が虎視眈々と狙っているので、隙を見せられないことに変わりはない。
できれば、生徒会室でくらいは気を抜きたいというのが、二人の共通した希望だ。
「聖属性持ちのリーリエ嬢のことは、父上がある程度は調べてるはずだ。問題があるとは聞いてないから、大丈夫だろうと思うが、念の為パトリシアに確認してもらおう。彼女は人を見る目がある」
ライハート自身、リーリエと会った感じ、悪い印象はない。
いつも愛想笑いを浮かべているアンドリューが、あまりに楽しそうに笑うのが、驚きではあるが。
ただ、ライハートはリーリエの顔をどこかで見たことがあるような気がするのだ。
会う機会があったとは思えないし、ただの気のせいだとは思うのだが…
まぁ、大したことではないだろうと、再び書類に目を向けた。




