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【ゲート×ソロ成長】孤独な少女は、影を纏い最強へ 〜日常の底で、刃は静かに成長する〜  作者: ショーナ・レーベン
最終章 覚醒の刃

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第9話 檻の中にいる獣

 リンドカムイが消滅し、その余波で舞っていた塵が地面に落ちる。

 それと同時に、体に光が灯り、レベルが一つ上がった。


「流石、玉野さんたちっす!」

「骨犬強かったぁ……」

「だが、その相手と戦えるほど俺らも成長できてるってことだろ!」


 誰かの呟きに呼応するように、周囲のメンバーたちも次々と声を上げた。

 疲労困憊のはずなのに、場の空気は明るい。


 私は月影(アルテミス)を鞘に収めながら、あることを考える。

 リンドカムイを倒したが……鑑定は使えるようになったのだろうか。


 他の人たちに鑑定を試してみると、ウィンドウが表示される。

 そのことにホッとする。


 ……どうやら、かなり鑑定に依存していたみたいだ。


 もしかしたら、魔王も【封印】のようなスキルを持っているかもしれない。

 万が一、鑑定できなくても、動揺はしないよう心掛けておこう。


 玉野さんが妖狐の姿を解きながら歩み寄ってくる。

 だが、その顔には隠しきれない疲労の色があった。


「影殿、見事な一撃であった。……だが、感傷に浸る時間はなさそうじゃな」


 リンドカムイを倒した。

 しかし、ここは敵の本拠地がある世界だ。


 メンバーの装備には激しい戦闘の傷跡が刻まれている。

 百人の精鋭たちの中には負傷者もおり、多くの者が魔力も底をつきかけていた。


「連戦を回避したいので、早めに移動しましょう。

 ここに長くいたら、そのうち敵が集まってくるはずです」


 私の提案に、異論を唱える者はいなかった。

 私たちは周囲を警戒しながら、マグマ地帯を抜け出す。


 一旦、地形が入り組んで死角の多い岩陰へと身を寄せ休憩することにした。



*******



 配られた携帯食料を口に運びながら、私は今後の道程を思案していた。

 元々の予定では、魔王城付近まで転送するはずだった。

 

 だが、近くに城らしき物は見当たらず、現在地がどこか分からない。

 おそらく、リンドカムイに転送を妨害されたのだろう。


 この広大な世界を闇雲に歩くわけにもいかない。


 そう考えていると、頭にノイズが走る。


『適合個体01——相沢天音。

 転送後の生存を確認。


 妨害により、転送場所の変更が発生。


 座標データ、転送。有効活用せよ』


 アラヤの機械的な声と共に、私の視界に直接ウィンドウが割り込んできた。

 視界の端に、立体的な半透明の地図が浮かび上がる。


 現在地から北東へ向かうラインが引かれているが……思ったよりも遠い。

 魔王城までおよそ50km。


 ゲートの作成限界の日までには辿り着けそうだが、間に合う保証はない。

 急ぐ必要がある。


 アラヤに感謝を伝えた後、どのルートを通るのが一番良さそうか考えていく。

 ひとまず、玉野さんたちにも地図の情報を共有しておこう。


 玉野さんに話しかける。


「アラヤから地図が送られてきました。

 ここから北東に魔王城があるみたいですが……地図のデータによると、道中がかなり入り組んでいます。

 おそらく、移動だけで二日ほどかかるかもしれません」


 私の言葉を聞いた玉野さんが眉をひそめた。


「ゲートの作成限界まで、あと四日。……準備を含めれば、一日の猶予もないということじゃな」


 風戸さんや雪奈さんたちにも共有していく。


 少し時間が経ち、ある程度休息を取れたタイミングで、玉野さんが立ち上がった。

 玉野さんが手を叩き、注目を集める。


「皆の衆! 休憩は終わりじゃ。

 ここからは強行軍になるが、遅れを取るでないぞ!」


 その号令と共に、私たちは再び歩き出した。



*******



 それからの二日間は、正真正銘の地獄だった。

 空は常に赤黒く濁り、太陽すら昇らない壊れた世界をひたすら歩き続ける。


 空気が重苦しく、移動だけで消耗する。


 時折現れる魔物の群れを、一部の仲間たちが率先して処理していく。

 魔王と戦う際、キーパーソンとなるメンバーは待機だ。


 私も魔物を処理しようとしたが、他のメンバーたちに止められた。

 少しでも体力を温存してほしいとのことだ。

 

 二日ほど歩き続け、ついにその姿が露わになった。


 大地を切り裂くようにそびえ立つ、黒曜石の巨城。

 天を突く尖塔からは、物理的な圧迫感となって瘴気が溢れ出している。


「あれが……魔王城」


 城の禍々しい雰囲気に、体を震わせる者もいた。


 ここからは敵の警戒も強くなるだろう。

 見張りが薄いルートを割り出す必要がある。


 一度、私が偵察に向かうことになった。


 




 慎重に城へ近づく。

 

 想像よりも、巡回している個体は少ない。

 これならば、気づかれずに城に入れる可能性がある。


 そう思った瞬間——猛烈に嫌な圧を感じた。


 背筋がゾッとし、気配遮断を最大まで強める。


 私は木の影に隠れながら、城の最上部を見上げた。

 尖塔の頂上で、一際巨大な影が見下ろしている。


 どこかフーガと似ている。


 巨大な角、漆黒の翼。

 銅像で見たことがある姿と同じ存在。

 

 おそらく——魔王。


 私はそっと鑑定を叩き込む。


 遠すぎて、鑑定結果がどこかハッキリしない。

 だが、ある項目を見ることはできた。


【個体鑑定:魔王アルナ?】

状態:精神汚染(強)——憑依


(……憑依?)


 魔魂に取り憑かれた者と同じ状態。

 さらに詳しく見られないかと思ったが、魔王が城に入っていく。


 ……とりあえず、概ね安全なルートは分かった。

 魔王のことは気になるが、一旦戻ろう。

 


*******



 比較的安全なルートを案内する。


 ルート上で警戒している個体は、私が【気配遮断】で近づき、斬り伏せる。

 そして、城の正門を突破し、内部へ入っていった。




 驚くべきことに、城の内部には兵士が一人もいなかった。

 静まり返った石造りの廊下に、私たちの足音だけが虚しく響く。


 城の主力が外——地球に向かっているのか、あるいは——。


 城の中心部、吹き抜けのホールに辿り着いた時だった。


「……ォ、ォォォオオォオ……ッ!」


 地の底から響き渡るような、猛獣の咆哮。

 それは苦痛と怒りに満ちており、それでいて、どこか聞き覚えのあるトーンを含んでいた。


「この声……まさか」


 少しだけ話し合って、その声が聞こえた場所に向かうことを決めた。

 もし予想通りなら、魔王と同時に会いたくない存在だからだ。

 

 地下へと続く階段を駆け下りていく。


 階段を降りた先は、広大な円形の監獄になっていた。

 壁一面に張り巡らされた回路が不気味に明滅し、その中心に、巨大な檻が鎮座している。


 その檻の中にいたのは、かつて地球で死闘を繰り広げた、あの男だった。


 奴の鎧は見る影もなく砕け、全身を鎖で縛り付けられている。

 かつての尊大な眼光は失われ、ただ獣のように咆哮しているその姿は、あまりにも無惨だった。



——檻に囚われていたのは、魔王軍幹部フーガだった。


 


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