第5話 ユニーク武器
アラヤと会った後、玉野さんに情報を共有した。
『アラヤとの交渉成立、感謝するのじゃ! 送れる人数は、半径3m内に収まる人数。およそ百人ほどじゃな。
そして、現状成功率3%か……かなり厳しいのう。できる限り、レベル上げをする必要があるな』
玉野さんと話し合い、逆侵攻する日は5日後と決まった。
ゲート作成限界の4日前。
準備期間と、逆侵攻にかかる時間を考えた結果だ。
携帯で玉野さんに連絡した後は、すぐにゲートに潜った。
ゲートでスキルのレベル上げや経験値を稼ぎ、家に帰る。
家に入ると、珍しく父親が早めに帰宅していた。
椅子に座り、コーヒーを飲みながらくつろいでいる。
「今日は帰ってくるのが早いんだね?」
「秘書のおかげで、だいぶ仕事にも慣れてきてな。これからは早めに帰ってくることができそうだ」
父親が嬉しそうに言う。
そんな表情を見るのは、少し久しぶりだった。
申し訳ないが……今のうちに、色々と父親に話しておこう。
このまま黙っているわけにはいかない。
地球に魔王軍が攻めてくること、そして逆侵攻のことを父親に伝えていく。
父親も、最近の物資の動きには違和感を覚えていたらしい。
重村さん経由で、ある程度の事情も知っていた。
だが、ここまで状況が悪いとは思っていなかったらしい。
「それは……絶対にお前が行かないとダメなのか?」
「うん。お父さんは知らないと思うけど、私、相当強いんだよ?」
少しでも安心させるため、父親の横へ瞬間移動したかのように移動する。
そんな私を見て、父親が目を丸くした。
「そうか……俺も行けたらいいんだけどな……」
顔を伏せながら、父親が呟く。
「逆に心配になるから、それはやめて。
それよりも帰ってくる場所になっていてほしい。……それだけで頑張れるから」
少しだけ恥ずかしいが本音で語る。
こんなふうに、今後話せるか分からない。
話せるときに話しておきたい。
父親は一瞬、言葉を失っていた。
「……そうか。お父さんは待つから、絶対に無事に戻ってきなさい」
そう言って、私の頭を撫でてきた。
今までの時間を埋めるように、それからも父親とたくさん話した。
*******
逆侵攻の前日。
咲から連絡がきた。
『天音に頼まれていたナイフが完成したよ。
ちょっとそっちに向かうのは厳しそうだから、私の家まで取りに来て欲しい』
……向かうのが厳しい?
疑問に思いつつも、咲に返信をする。
『今から行くね』と連絡を入れて、咲の家に向かった。
家に入り、咲を見て驚く。
咲の目の下に深い隈ができていた。
化粧で誤魔化そうとしたのだろうが、隠せていない。
そんな状態でも、咲は眠そうな気配を全く感じさせない。
「これを先に渡しておくね。手に馴染むか確認してみて? 少しなら、この場で直せるから」
咲からケースを渡され、そっと開ける。
——全てを飲み込むような漆黒のナイフ。
そのナイフは深い闇で覆われており、相対する者には見えにくそうだ。
ナイフを握ると、驚くほどしっくりくる。
まるで長年、共にあったような感覚。
手にする者を守るような、そんな強い気持ちを感じさせるナイフだった。
ナイフを鑑定する。
⸻
【物品鑑定:月影】
状態:不壊 品質:ユニーク
スキル:障壁発生 / 体力回復(中)/ 自動帰還
武器ユニーク:不壊
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色々とスキルが付いている。
だが、真っ先に目に入ったのはこれだった。
——【武器ユニーク:不壊】。
私は確かに壊れにくいナイフを頼んだ。
それに応えるために……どれだけ無理をしたのだろう。
「手にしっかり馴染んでいて大丈夫。咲……本当にありがとう」
「どういたしまして」
それまで咲はジッと私を見つめていたが、ニコッと笑った。
「うん。どこかに消えるような、嫌な気配がもうないね。……良かったぁ。
その武器をどう使うかは分からないけど……絶対に無事に戻ってきてね?」
張り詰めていた糸がふっと切れたみたいに、咲が意識を失った。
慌てて咲を支え、ベッドに運ぶ。
聞こえないと思うが、寝ている咲にもう一言だけ「いつもありがとう」と伝えておく。
咲の口元がわずかに緩んだ気がした。
……いい夢を見ているといいのだけど。
咲の母親に、咲が眠ってしまったことを伝えて、私は家に帰る。
こんなになるまで、咲も頑張ってくれたんだ。
私も負けていられない。
胸の奥に、静かに火が灯った。




