第4話 名付けた存在
次の日。
英霊にならずに足掻くと決めた。
そのためにできることをしていく。
まずはアラヤに、私たちを魔王がいる領域へ送れるか尋ねよう。
準備をしてゲートに向かう。
アラヤは「ゲートに鑑定を行え」と言っていた。
それで会うことができるだろう。
ゲートを前にして改めて思う。
そういえば、今までゲートを鑑定してこなかったな、と。
まるで、思考を逸らされたかのように、その考えが頭に浮かんでこなかった。
……普段ならすぐに思いつくことだ。
おそらく——本当に逸らされていたのだろう。
表示される情報を予想しながら、ゲートに鑑定を叩き込んだ。
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【物品鑑定:異物個体転送封鎖領域——第五次世界模倣地帯】
状態:エネルギー不足 品質:高
スキル:【絶対防御】
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……エネルギー不足は分かる。
だが、他が少し曖昧だった。
気になった部分を詳細鑑定する。
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異物個体転送封鎖領域——第五次世界模倣地帯
ガイアが作った封鎖領域。
第一次世界ウールトゥースから転送される個体が直接地球に侵入することを防ぐ効果がある。
内部は第五次世界クィンヴォールの一部を模倣している。
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……アラヤからの説明では理解できていなかった部分があったが、やはり予想通りだったらしい。
これで、ゲートによって魔王軍の侵攻が抑え込まれていたとハッキリした。
そして、他に書かれていることを推察していく。
内容から察するに、第一次世界ウールトゥースは魔王のいる世界だ。
そして、それを「第一次」と呼んでいる。
そのことから、おそらく「第一次」という言葉は、魔王がいる世界の存在が名付けた……と思われる。
だが、地球には第何次と書かれていない。
それなのに、他の世界には第五次などと記されている。
地球の存在が認識されていなかった可能性もあるが——
——名付けた存在にとって、それらの世界を管理する必要があった。
なぜかは分からない。
だが、直感的にそう感じた。
さらに、なぜ別の世界を模倣したのだろうと考えていると、目の前に別のゲートが発生した。
……アラヤが呼んでいるのだろう。
交渉材料を思い浮かべながら、ゲートを潜った。
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真っ白な世界に辿り着いた。
目の前には、アラヤが佇んでいる。
アラヤの機械のような視線が私を貫く。
その瞳には何も宿しておらず、無機質さを感じさせる。
私を観察した後、アラヤが口を開いた。
『適合個体01——相沢天音。
意思。英霊拒否。
代替案、逆侵攻——成功確率計算中。
現状、約3%。
英霊案、推奨』
機械のようなボイス。
協力する意思が感じられない。
わずかに苛立ちが湧く。
そう告げられ、思わず声が出た。
「それなら、英霊になったら人類は守れるんですか!」
『否。汝の親しい者、保護のみ。
その他の人類、生き残る者少数』
……親しい人を保護すると言っても、正直信じられない。
保護という名の監獄のような生活が待っていそうだ。
それに、英霊になっても生き残る人が少ないなら、何のために英霊になるのかが分からない。
それならば、逆侵攻に可能性を賭けた方がまだマシだ。
アラヤによると、成功確率は3%ほどらしいが……0%ではない。
少しでも可能性があるのなら、本気で取り組める。
『汝の意志。固定。
変更はほぼ不可。
その他の案、検討中。
逆侵攻、成功確率。最も高いと判断。
逆侵攻案——支援。了承』
……嫌な感じだが、とりあえず支援は行ってもらえそうだ。
「魔王がいる世界まで転送することができますか?
可能なら、何人まで大丈夫でしょうか?」
『エネルギー不足問題あり。
汝を中心。半径約3m。転送可能。
但し、妨害確率90%以上。
転送後、即座の戦闘。高確率で発生。
核となる汝が死亡時——その他の者、強制帰還』
ゲートボスを倒したときに、他のモンスターも消えたことを思い出す。
強制帰還はそれと同じということだろう。
……死ぬ気はないが、意地でも生き延びよう。
他のことも考えていく。
(アラヤたちが転送封鎖領域を作れるように、向こうも似た物を作れる可能性が高いわけか)
『是』
成功確率が現状低いとしても、もっと強くなったり、装備を整えたら上がるだろう。
諦めるつもりはない。
ならば、後は準備をするだけだ。
一応、他の気になったことも尋ねておく。
支援してもらえることに少しだけ感謝し、アラヤのいる空間から帰ろうとする。
『……助言。覚悟』
元の世界に戻る前に、アラヤが一言だけポツリと言う。
……すでに覚悟は決まっている。
だが、その一言だけが妙に胸に引っかかった。
一応覚えておこう。
来た道を引き返し、ゲートを潜り抜けた。




