第1話 忘却
玉野さんたちに報告するため、待ち合わせ場所に向かう。
待ち合わせ場所に着くと、ちょうど他のメンバーが集まるタイミングだった。
玉野さんたちは、この場所の調査を行うと言っていた。
その報告をするように、玉野さんが口を開いた。
「海底神殿に集められたエネルギーがどうなっているか、気になってのう。
風戸殿にも手伝ってもらい、中の調査をしていたが……手掛かりのようなものはなかったのじゃ」
玉野さんは残念そうに報告してきた。
「影殿も何か調査してくると言っておったが、どうだったのじゃ?」
そこで、石碑の調査を行ったときに、ゲートが現れたこと。
中にはアラヤが実在したこと。
ガイアがエネルギー不足に陥っており、10日後には怪物どもが直接地球に現れることを伝える。
流石にその情報には、風戸さんも顔をしかめていた。
「アラヤは何か対抗策を言わへんかったんか?」
風戸さんに尋ねられ、英霊のことを思い出す。
……そのことは伝えたくない。
他に対抗策がないとしても……この人たちに「英霊になれ」と言われたくない。
「いえ……特に何も」
私がそう言うと、風戸さんや玉野さんは目を閉じ、黙り込んだ。
重苦しい雰囲気のままゲートから脱出し、難波ギルドのジムに戻る。
「今回は世話なったわ! もしワイらの力が必要そうなことあったらいつでも言ってや!」
もう吹っ切れたのか、風戸さんが明るく言ってきた。
この切り替え能力は正直羨ましい。
「こちらこそありがとうございました。今回、凄く心強かったです」
そう伝え、風戸さんと握手をする。
「うむ。やはりいい筋肉だ。このままうちに入会せんか?」
……訂正。切り替えたんじゃなくて、筋肉のことしか頭にないらしい。
だけど、そのポジティブさには少し救われた気がした。
玉野さんと風戸さんが少し話した後、難波ギルドの人たちと別れる。
空港へ向かう途中、玉野さんがもう一度だけ聞いてきた。
「影殿……本当に対抗策は言われなかったのじゃな?」
振り返ると、玉野さんが鋭い視線で私をじっと見つめている。
「……はい」
そう答えることしかできなかった。
その後は、飛行機で東京へ向かう。
今は誰とも話したくない。
少し体調が悪いと伝え、一人だけで座れるようにしてもらった。
窓の外に浮かぶ雲をぼーっと眺める。
英霊になったら、空も飛べるのだろうか。
変なことが頭に浮かび、自分でも重症だと思う。
ふと、玉野さんの姿が視界に入る。
飛行機の中で、玉野さんが誰かと小声で話しているのが妙に気になった。
玉野さんたちと別れ、考え事をしながら帰路につく。
気づけば家に着いていた。
自室に戻り、真っ暗な部屋の隅っこに座る。
両親が離婚後、よく座っていた場所。少しだけ……落ち着く。
対抗策はないか、思考を巡らせた。
検討①現在みたいに怪物が現れたら、即座に対処する。
——ノータイムで出現するなら、必ず被害が出る。
検討②人を1箇所に集めて、そこだけを守る。
——もし集まれたとしても、いつか食糧が尽きる気がする。
検討③……親しい人だけ守る。
——本当の最終案だ。
どうしようも無くなったのならこれだろう。
だが、できれば他の人も守りたい。
それに、魔王や魔王軍幹部に対処できるかすら怪しい。
フーガには高速移動があった。
あの速度に反応できる人がそこまでいるとは思わない。
考えれば考えるほど、私が英霊になり、分身を大量に作るしか対処方法がない気がする。
それでも被害は出るかもしれないが、アラヤは「地球内ならどこでも転移できる」と言っていた。
きっと被害を最小限にできるだろう。
他にも色々と検討していったが、どれも良い案とは思えない。
(……やっぱり私が英霊になるしかないのかな?)
そう考えた瞬間、携帯の音が鳴る。
咲からの通知だった。
『戻ってきたって聞いたけど、前に話していた花火大会に明日行かない?』
その通知を見て、ぼんやりと考える。
(……もし英霊になるのなら、咲と話せるのも……最後になるかもしれない)
それなら、話せるときに会っておきたい。
『うん。明日行こう』
返事をすると、すぐに既読がついた。
『やった! あ、寝落ちで来れないとかはやめてよ?』
明るいスタンプも送られてくる。
その返信を見ながら、目を瞑った。
……忘れられたくないなぁ。
後書き
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
皆さんのおかげで、最終章がついに開幕です!
今回は小説内での時間がほとんど経過していないので、人物紹介や掲示板回を入れずに最終章に入ります。
ここからはストックとの戦いになりますが、構想はできているので、毎日更新は止まらない……はず!
少しだけ重たい雰囲気が続きますが(と言っても1、2話程度!)、それが終わった後は怒涛の展開になります。
最後までお付き合いいただけると幸いです!




