第15話 英霊
突然、石碑の横にゲートが出現した。
このタイミングで、ゲートが目の前に現れる理由は二つしか考えられない。
——アラヤなどに会えるか、もしくは特殊ゲートだ。
アラヤならば、おそらく情報を得ることができるだろう。
その存在と戦闘になる可能性は……できれば考えたくない。
だが、特殊ゲートだった場合、相当危険性が高い。
入った瞬間、ソードアヴェンジャーのようにいきなり戦闘になり得る。
ゲートに入るか考えるが——入らない場合は、二度とこのゲートが現れない気がした。
ここで入らないという選択肢はありえない。
咲に作ってもらったナイフの予備をポーチから取り出す。
覚悟を決めて——ゲートの中に飛び込んだ。
ゲートの中に飛び込むと、そこは完全に真っ白な空間だった。
物が一つもない。
よく見ると、その空間には一人だけ、無機質な存在がいた。
男か女かも分からない。白髪でどこか存在が希薄だ。
その存在が私をジッと見つめている。
鑑定を試みようとし——嫌な予感がした。
発動するのを咄嗟に止めた。
無機質な声が響く。
『適合個体01——相沢天音。
鑑定実行時、汝の脳、焼き切れた確率98%』
なぜかその声が正しいことを言っているのが分かる。
止めなかったらと思うと、ゾッとした。
(……この存在は、私が考えたのと同じアラヤなのだろうか)
そう考えた瞬間だった。
『是。アラヤ』
……どうやら考えを読まれているらしい。
嫌な感覚だ。
だが、聞きたかったことを知るチャンスだ。
私が案内された理由を知りたい。
『初の権限レベル上昇を確認』
……それが理由なのだろうか。
『魔王軍。
猶予時間なし。
戦闘力確認を実行』
何もない空間に、ノイズのような歪みが走る。
次の瞬間——フーガが現れた。
いきなり現れ、襲いかかってくる。
——っ!
瞬時にナイフを取り出し、身構えた。
すぐさま対抗策を組み立てる。
その瞬間、アラヤが『確認終了』と告げて、フーガが消えた。
『反応速度。思考能力。——合格。
戦闘力。思考能力。共に充分と判断』
……一瞬驚いたが、なぜ確認されたのだろう。
『ガイア。エネルギー不足。
よってゲート作成不可。
魔王軍の侵攻。妨害せよ』
(……ガイア。エネルギー不足?)
光の柱を思い出す。
まさか……ドリューたちにエネルギーを吸われたのが効いているのだろうか?
『是』
……ゲートは「怪物を閉じ込める檻」と以前推測した。
ゲートが作成不可になるなら——
(ヤタ王たちの世界のように、地球にも直接、怪物どもが現れるようになる?)
『是』
そう言われ、私は動揺した。
いきなり怪物どもが現れるなら……守るのが厳しくなる。
ドリューは「半分は壊せている」と言っていたが……このことを分かっていたのだろう。
最悪な置き土産だ。
今後どのように動くか迷い、眉をひそめる。
守り方を考えていると、アラヤが口を開く。
『個体名:相沢天音。
敏捷。人類の最上位。
星の防衛機構として適正あり』
無機質なログのようにアラヤの口が動いている。
『提案。契約を要求。
承諾確認後、汝の親しい者、保護。
条件設定。星との契約——英霊になること』
英霊……
英霊になった場合、どうなるのかを尋ねる。
地球内ならどこでも瞬間移動できるようになるらしい。
他にも地球限定だが、能力が上昇するとのことだ。
さらに——ユニークスキル【雷影の化身】の強化。
ほぼ無制限で分身を作れるようになる。
どれもかなり強力だ。
確かにそこまで強くなるなら、魔王軍の侵攻から守れるかもしれない。
それだけなら英霊になるのも悪くはなかった。
だが。
代償が一つだけあった。
——「人々に存在を忘れられる」という最大の欠点が。
父親に。咲に。重村さんに。玉野さんに。
……全員に、忘れられる。
その選択肢はできれば選びたくない。
自分の存在そのものを、誰にも覚えてもらえないのは……嫌だ。
それでも——滅びるくらいなら英霊になる方がいいのだろう。
ここで英霊になるかどうかは、すぐには決められない。
他に選択肢がないか考えた上で、もう一度会いたいと伝える。
『1週間以内。
ゲート。鑑定を行え。
ゲート作成限界。10日。猶予なし』
そう言われ、視界が切り替わっていく。
気づけば、墓場前に戻っていた。
時間を見ると、集合時間が近づいている。
何か方法はないか考えながら、玉野さんたちとの待ち合わせ場所に向かった。
……忘れ去られる。
その言葉が頭に重くのしかかる。
足取りが重い。
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後書き
英霊という選択。
強さと引き換えに、存在を失う。
もし自分ならどうするか——
少しでも考えてもらえたら嬉しいです。
英霊になって、星の守護者になる。
それも一つの選択肢だと思います。
ですが……メリバ風ですよね?
私はハッピーエンドが好きです。
もう一度言いますが、私はハッピーエンドが好きです!
重要なことなので2回言いました!




