第9話 海底神殿の主
現在の時刻は16時半。
作戦決行の時間が近づく。
決行時刻まで、残り1時間半ほど。
そろそろ分身を出そう。
【雷影の化身】を発動させ、現れた4体の分身たちに指示を出す。
私の意思を受けて分身たちはそれぞれの待ち合わせ場所へと散っていった。
私自身は最も神殿に近い『光を発する箇所』付近で潜伏している。
ゲートに入っているメンバー内だと私の素早さが最も高く、光の供給が途絶えたときに何かが起きても離脱しやすいためだ。
巨大な岩の陰に身を潜め、光の柱付近を確認する。
そこには禍々しい銅像と、それを取り囲む12体のサハギンがいた。
神殿に近いからだろうか。
報告よりも数が多い。
それにヤタ族を閉じ込めていたサハギンたちと比べ、しっかり警戒している。
士気は高そうだ。
そして——
(……情報通り、1体大きいのがいるな)
銅像の前方で槍を構え、周囲に鋭い視線を送っている個体を【鑑定】する。
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【個体鑑定:サハギンジェネラル】
レベル:26
スキル:【水泳 Lv.4】 / 【槍術 Lv.4】 /
【剛力 Lv.3】 / 【罠生成 Lv.2】 /
【指揮 Lv.2】
ユニークスキル:なし
状態:正常 弱点:遠距離
⸻
他のサハギンたちはほぼレベル21。
スキルも水泳や槍術などがほとんど。
今の私のレベルは39だ。
サハギンたちとのレベル差はかなりあり、この場所は私一人でも問題なく殲滅できる範疇だ。
ただ……他のチームの人たちは倒せるだろうか。
少し心配になった。
玉野さんのところは問題ないだろう。
だが、風戸さんはレベル29だったはずだ。
ジェネラルと近いレベルのため気になる。
そこでふと思い出す。
風戸さんが槍をお腹で防いでいたことを。
(……なんか鍛錬とか言って倒しそう)
槍を腹筋で弾き飛ばし、「ええ刺激や!」と高笑いしている光景が容易に想像できてしまった。
なんとなく心配するのが馬鹿らしくなり、このことについて考えるのをやめた。
時計を見ると、作戦の決行時間までまだある。
次に取るスキルの候補を今のうちに決めておこう。
私は一旦その場を離れた。
*******
岩に囲まれている場所を見つけた。
ここなら敵が来てもすぐに分かるだろう。
その場でスキルの画面を開く。
今までは水中で戦うことを考慮していなかった。
水中でも使えそうなスキルを見ていく。
だけど今後のことも考える必要がある。
できれば水中以外でも使えるスキルが欲しい。
そう思い、2つの候補をピックアップした。
一つ目。
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【投擲補正 Lv.1】
投擲する際、動きに補正がかかる。
レベルが上がるほど命中率が高くなる。
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咲に遠距離攻撃として使えるクナイを複数用意してもらった。
水中で投げられるか試してみたところ、速さはかなり減衰するが一定の威力を出すことができた。
ただし、水中だと命中率がかなり落ちるため、命中に補正がかかるのは特にありがたい。
水中以外でも効果のあるスキルなため、今後のことを考えてもありだ。
二つ目。
⸻
【電磁砲 Lv.1】
魔力を消費して使う。
周囲に雷の光線を放つことができる。
発動には多少の集中が必要。
その分威力は高い。
Lv.1では、
射程距離:30m
再使用可能時間:30分
⸻
これも遠距離攻撃の手段がほぼない私にとって有用だ。
水中でも使えるかは分からないが……問題ないと思いたい。
それと【雷影の化身】により、雷属性の魔力消費が軽減されるのは大きい。
欠点としてはやはり魔力を消費することだろう。
分身や雷遁の使用可能回数が減るのは痛い。
あとは再使用可能時間も現状は30分と長いことも欠点だ。
それでも手持ちに何もなくとも、遠距離攻撃の手段が一つでもあるのは安心感がある。
次にスキルを取るとするなら、この二つのうちのどちらかと決めた。
時計を見ると、17時半ほど。
そろそろ作戦開始が近づいてきた。
私は岩場を離れ、持ち場に向かった。
*******
時刻は17時59分。
心臓の鼓動を鎮める。
優先事項は銅像の破壊。
サハギンたちの動きを観察し、そのためのルートを模索する。
18時になり、作戦開始の時間になった。
私の場合、そのまま銅像に近づけるため、他の柱のどこかが消えるのを待つ。
少し待ち、玉野さんが向かっていた場所の光の柱が消えた。
(……行こう)
【気配遮断】を維持し、一気に銅像に肉薄する。
サハギンたちが異変に気づくより早く、私は銅像を蹴り砕く。
「ガシャァァン!」
破壊音が響き、光の柱が霧散していった。
「ギギィッ!?」「シャァァッ!」
サハギンたちが銅像の破壊に気づき、激昂している。
だが問題ない。
ナイフでサハギンたちを次々と狩っていく。
そこである個体が水の中に飛び込むのが見えた。
サハギンジェネラルだ。
力量差を悟ったのか、海底神殿の方角へと猛スピードで泳いでいる。
……海底神殿にいる存在に報告するためだろうか。
私はその場で【雷影の化身】を発動させ、分身を一体作成する。
分身に残り掃討を預け、私はサハギンジェネラルを追いかけた。
しかし、サハギンジェネラルの方が泳ぐのが速い。
距離がじりじりと離されていく。
ヤタ王からもらった称号のおかげで、水中でも息苦しさはない。
しかし速度だけはどうにもならない。
(……本当は温存しておきたかったけど)
——【スキル発動:水月歩】——
足元に地面の感触が生まれた。
私は水の底を思い切り蹴り飛ばす。
先ほどまでの遅さが嘘のように、水中を弾丸となって突き進む。
一瞬でジェネラルの背後に食らいついた。
サハギンジェネラルが振り返り、目が見開かれる。
「終わり」
そのまま奴の首をナイフで断ち切った。
サハギンジェネラルが泡となって消えていく。
そして私の身体に光が灯った。
⸻
【レベルが上昇しました:39 → 40】
体力:+2 / 魔力:+2 / 攻撃:+3 / 防御:+1 /
敏捷:+4 / 器用:+4 / 感知:+3 / 運:+1
スキルポイント:+1
【ステータス】
名前:相沢 天音 レベル:40
ジョブ:【忍者】 種族:人間
体力:86 / 魔力:88 / 攻撃:127 / 防御:59 /
敏捷:167 / 器用:162 / 感知:120 / 運:51
スキル:【鑑定 Lv.6】 / 【気配遮断 Lv.5】 /
【物真似 Lv.4】 / 【影潜伏 Lv.4】 /
【雷遁 Lv.3】 / 【短剣術 Lv.3】 /
【罠感知 Lv.3】 / 【足場生成 Lv.2】 /
【水月歩 Lv.1】
ユニークスキル:【雷影の化身】
称号:【闇纏い】 / 【ヤタの友】
所持スキルポイント:1
経験値:6 / 4000(次のレベルまで 3994)
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ホッと一息つく。
ついに40になった。フーガと同じ領域。
(追いついた。いや、フーガも強くなっているかもしれない)
頭を振り、傲りはダメだと考え直す。
サハギンジェネラルを倒すとほぼ同時に、海底神殿に伸びていた光の柱が全て消えた。
全チームの作戦が上手くいったみたいだ。
五つの光が消えた海底は、静寂に包まれていた。
だが、その静寂を切り裂くように、海底神殿の巨大な門が重低音を響かせて開き始めた。
(……嫌な予感がする)
警戒し、門を見つめる。
そこから漏れ出すのは、これまでとは比較にならないほど禍々しい気配。
「ガァァァァアアアアア!」
怪物の咆哮が響き渡る。
ヤタ王の記憶で見た超巨大なサハギン。
——その巨体が大砲のように私に迫ってきた。




