第2話 マッパーズ
スマホの目覚まし音が鳴った。
スマホを手に取り時刻を確認すると、まだ3時だ。
少しボーッとしていると、なぜアラームを鳴らしたか思い出してきた。
今日は玉野さんたちと大阪に行く日だった。
6時には家を出たい。
急いで支度を済ませる。
持っていくものなどを確認し、スーツケースに詰めていく。
詰め終わったときには、5時頃になっていた。
リビングに行くと、父親がテレビを見ている。
早朝から起きているのは知っていたけど……相変わらず早い。
父親は私に気づき、こちらに振り向いた。
「今日は早いんだな。夏休みの初日くらいはのんびりしたらどうだ?」
……そういえば、父親に大阪に向かうことを伝えていなかった。
顔が引き攣る。
「実は今から大阪に行く予定です……」
「は……? 待て、何も聞いていないぞ?」
最近の海面上昇の件で、急遽大阪に向かうようになったこと。
他にも九尾ギルドの人たちも一緒に行くことなどを話す。
父親が大きなため息を吐いた。
「分かったが……せめて電話で、もう少し早めに伝えなさい」
「ごめん。伝えるのを完全に忘れてた」
時計を見ると、そろそろ家を出ないといけない時間だ。
朝ごはんを掻きこむ。
「もう時間だから、そろそろ行くね」
私がそう言うと、父親が心配そうな表情を浮かべた。
「あぁ……無事にもどってきなさい」
そんな父親を背に、私は家を出た。
*******
待ち合わせ場所の空港に着いた。
すでに【闇纏い】を発動している状態だ。
周囲から視線を感じる。
明らかに不審者を見る目だ。
……居心地が悪い。
【闇纏い】の状態で飛行機に乗れるか心配になっていると、10人くらいの集団がやってきた。
玉野さんたちが来たようだ。
「影殿、おはようなのじゃ。急に誘ったにも関わらず、応じてくれたことを感謝するのじゃ」
「おはようございます。いえ……私も気になっていたので、誘ってもらえてよかったです。
それと確認していなかったのですが……飛行機で行くのに、この格好で大丈夫ですか?」
私がそう尋ねると、玉野さんは笑った。
「どうやって向かうか、影殿には伝えていなかったのぅ。
今回はプライベートジェットに乗るから大丈夫じゃ」
は……?
玉野さんの話では、重村さんがプライベートジェットを貸してくれたらしい。
本人曰く「寝かせておくのも勿体無いからのぅ」とのことらしい。
……相変わらず桁違いだなぁ。
少し遠い目になりながら、飛行機に乗った。
*******
飛行機内の座席は玉野さんの隣の席に座った。
気になっていたことを玉野さんに聞いてみる。
岸さんたちなど他のメンバーもいない件についてだ。
今回の人数が10人ほどなのは、地域側の警戒も維持するためらしい。
岸さんが向こうでは仕切っているらしい。
他にも海面上昇についても教えてもらう。
「調べていくうちに、海でもゲートが発生していることが分かってのぅ。多くのギルドが海の中にあるゲートの対処を現在行なっておる。
大阪付近で、特に海面上昇の原因と予想されているゲートがあっての……そこに今向かっているのじゃ」
一瞬目を見開く。
海の中のゲート。
——嫌な予感しかしない。
ゲート内も水中である可能性がある。
もし予想が合っていた場合、戦えるだろうか。
窓の外を眺めると、雲海がどこまでも続いていた。
雲海に「逃げ場はないよ」と言われているような気がした。
心がひりつく。
……頭を横に振り、考え直す。
それに酸素ボンベは重たいと聞く。
そんなものを背負って、海中で戦うのは無理な気がする。
気になって、私は口を開いた。
「海の中でも周囲を活動可能にするスキル。
それを持った人物が帯同して、ゲート内に向かうことになっておるのじゃ」
玉野さんの話では、先行部隊の調査によりゲート内部も水中。
ただ、陸があることも確認されたようだ。
さらに念のため、簡易型の酸素ボンベを製薬ギルドが開発したと言われた。
それを使えば1時間ほどは水中でも呼吸できるとのことだ。
ただし、使い捨てらしい。
その道具を渡された。
手のひらに乗るサイズ。
この小ささで、どうやって呼吸できるのだろう。
ただ行動の邪魔にはならなさそうだ。
「あまり量はないため、念のためであることを忘れないでほしいのじゃ」
玉野さんにそう言われ、頷く。
製薬ギルドではポーションの開発にも成功したとのことで、ポーションも渡された。
鑑定をすると、下級ポーション以上、上級ポーション以下……といった感じだろうか?
一応ポーチに下級ポーションは入れていたが、貰ったポーションの方が効能が高そうだ。
ありがたく使わせてもらおう。
色々と話しているうちに、飛行機が着陸体制になった。
もうそろそろ着きそうだ。
大阪に着き、今回一緒に探索することになる難波ギルドへ向かう。
タクシーでの移動の途中で、難波ギルドのことを玉野さんに聞いてみた。
「着いてのお楽しみじゃ」
……お楽しみ?
玉野さんが意味ありげに笑っているのが気になった。
(まぁ、知らなくても問題ないだろう)
少し考えに耽っていると、タクシーが止まった。
どうやら到着したようだ。
タクシーから降りたが、周囲には会社らしきものはない。
あるのは巨大なトレーニングジムくらいだ。
疑問に思い、玉野さんに視線を送る。
なぜかニンマリと私を見ていた。
……なんなのだろうか?
背後で自動ドアが開く音がした。
「九尾ギルドさんたち着いたようやな!
難波ギルドへようおこし!」
声がした方を振り向く。
——上裸で筋肉ムキムキの男だらけだった。




