第3章 エピローグ ゲート
フーガを撃退し、大勢で宴会が始まった。
「今日一番の主役は参加して欲しい」と言われ、結局参加することにした。
そこで即興劇を見せられる。
「ここにおりますは、雷神〜!
そして反対方向には異形の悪魔〜!
雷を撒き〜!
最後はナイフで斬り捨てる〜!」
周囲から「よ、待っていましたー!」と歓声が上がった。
以前、私に助けられたと言っていた人たちだ。
「そして一言——『私の方が圧倒的に強いわね』。
言葉でも殴られ崩れ落ちる怪物〜」
……私は何を見せられているのだろう。
流石にそんなことは言っていない。
思わず遠い目になる。
そんな私に玉野さんが酔っ払って絡んでくる。
「影殿〜模擬戦をするのじゃ〜」
玉野さんは千鳥足でふらつき、私の肩に顔を乗せる。
……かなり酒臭い。
「まずは酒を抜いてからにしてください」
玉野さんに水を渡す。
水を飲むと、玉野さんはそのままテーブルに突っ伏して寝てしまった。
……明日以降は覚えていないことを祈ろう。
周囲を見回すと、他の人もどんちゃん騒ぎだ。
そしてある人を見つけた。
フーガから放たれた球状の攻撃が当たった人物。
私が近づいたせいで、巻き添えになってしまった人だ。
幸い、もう問題ないみたいだ。
私は頭を下げて謝罪した。
「俺がトロ臭かっただけだ。むしろ避けられなくてすまんな」
そう言って苦笑している。
エリカさんの持つスキル『ヒーリングメロディ』のおかげで助かったようだ。
「あの人には足を向けて寝れねぇ」と笑っていた。
……後でエリカさんにもお礼を言わないといけないな。
そんなことを考えながら、宴会の喧騒を眺める。
その後も笑い声が夜遅くまで続いた。
*******
宴会が終わり、家に帰る。
騒がしい夜とは対照的に、家の中は静かだった。
自室で一人になり、フーガのセリフを思い出す。
『ワレを含め、幹部は3人。相性にもよるが……全員ワレと似たような強さだ。
そして魔王様の強さだが……ワレら3人含めても魔王様には届かないと言っておこう』
そして今度は軍勢を率いて、やってくると言っていた。
もっと強くなる必要がある。
最低でもフーガは圧倒できる強さが欲しい。
拳をギュッと握りしめる。
それにしてもフーガは最後に気になることを言っていた。
フーガたちはゲートに閉じ込められている、と。
ゲートとは本当に何なのだろうか。
私はゲートのことを何も知らない。
どうにかして調べる必要性を強く感じた。
そこでふと思った。
——石碑に鑑定をしたらどうなる?
*******
——とある漁師視点——
最近、釣りをしていても獲れる魚が変化していた。
「おい、またブリじゃねーか?」
漁師仲間が怪訝な顔をする。
「あぁ。ここらでブリが釣れるはずないのに……変だよな?」
普段はサケなどが主に釣れていた。
だが完全に冷水を好む魚から、温水を好む魚に変化している。
最初はそういうこともあるかくらいだった。
だが、明らかに変化している。
「何が原因だと思う?」
そう聞かれ、肩をすくめる。
「地球温暖化のせいじゃねーか?」
「いや、そんな簡単には変わんねーだろ」
なぜそうなったか俺たちは疑問を持った。
「試しに、海面に印でもつけてみるか?」
「そんなに上昇していたら、俺たちは今頃海に沈んでるわ!」
いつものボケかと思い、ツッコミを入れる。
そのときは冗談だと思っていた。
仲間も試すだけだとふざけて印をつけていた。
その結果、俺たちはやばいことを知ってしまった。
次の日、印よりも少しだけ海面が上がっていたのだ。
満ち潮の影響かとも思ったが、頭から離れない。
その日から毎日調べてみることにした。
「おい、またか?」
漁師仲間が俺に問いかけてくる。
俺はメジャーを用意し、海上と地表を測っていた。
「あぁ……昨日と比較したが、やっぱり高い」
昨日測った時刻と同じだというのに、海面と地表が1cmほど近くなっている。
たったの1cm。
だがここ最近、毎日1cmずつ海面が上昇している。
笑えなくなってきた。
このままだと……近いうちに地表が海で沈む。
顔が青ざめる。
俺は……どう動けばいい?
海の香りが鼻を刺す。
海がまた、わずかに陸へ近づいた気がした。
後書き
力は人を救うが、同時に『人の意志』によって最も醜くもなる。
第3章「交錯する刃」を最後まで読んでいただきありがとうございました!
強敵フーガとのタイムリミットバトル。
そして、ついにユニークスキルの獲得といった一気に天音が成長した章でした。
ここで第3章は一区切りとなります。
石碑の鑑定結果がどうなるのか、そして海面上昇の原因とは?
気になった方はぜひ第4章も読んでいただけると嬉しいです。
少しでも「第3章、面白かった!」「これから海に沈んじゃうの……」と思っていただけましたら、
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