第16話 世界の謎
——【雷遁】——
——世界から音が消えた。
そして気づく。
いつの間にか、目の前にフーガがいる。
この世界でもフーガは動いていた。
でも——捉えた。
ナイフを動かし、迎撃する。
「ギィィィン!!」
爪とナイフがぶつかった。
激しく火花が撒き散らされる。
っ!
——重い!
体が軽くのけぞる。その勢いのまま後ろに跳んだ。
フーガが目を見開く。
「お前もこの世界で動けるとは……ますます勧誘したくなったぞ!!」
フーガが獰猛な笑みを浮かべ、そんなことをほざいた。
……死んでもごめんだ。
拒絶するようにナイフを一閃する。
だが回避された。
速度がほとんど同じで、力は向こうが上。
フーガにこんなスキルはなかったはずだ。
奴の残り時間が分からない。
冷や汗が頬を伝う。
雷遁の継続時間は残り2分ほど。
効果が切れたら——終わる。
急ごう。私から仕掛ける。
地面を踏み込み、フーガを目掛けて加速する。
音さえ置き去りにする速さ。
そしてナイフと爪が当たる瞬間——
——地面に沈み込む。
【影潜伏】
後ろから奇襲を仕掛ける。
「それは一度見たぞ!」
爪をこちらに振るってくる。
——っ!
ナイフで爪を防ぐ。
だが、勢いまでは防げない。
後方に吹き飛ばされていく。
私を追撃しようとするフーガ。
それを目視し、空中で【足場生成】を発動した。
遠くに離れる。
……同じパターンは使えないか。
呼吸を軽く整える。
残り1分。時間がない。
なら——
もう一度仕掛ける。
そして、近づいた瞬間に分身を発動。
近くで二人になる。
フーガは一瞬動きが固まった。
だがナイフが当たる直前で、左に跳ばれる。
ナイフが素通りする。
——まだだ。
前方に【足場生成】で壁を作る。
壁を足で押し、真反対に急転換して移動した。
フーガを目掛けて、一気に突進していく。
「はぁあああああ!!」
ありったけの魔力を放出する。全身から咲き乱れる雷。
それをナイフに伝わせ——
——フーガを切り裂いた。
雷光が遅れて爆ぜ、空間が白く染まる。
「がぁああああああ!!」
フーガは雷に打たれ、全身を焼き尽くされていく。
肉を焦がす臭いが鼻につく。
焼き爛れており、原形を留めていない。
生きているのが不思議なほどだ。
それでも——消えていない。
まだ息があった。
(まずい)
トドメを刺さないといけない。
一歩前に進む。
その瞬間——雷遁が解除された。
ズンッ
体が急に重くなる。
(……このタイミングで)
息が乱れた。
でも、早めに動かないと回復される。
疲れた体に鞭を打つ。
近づこうとしたタイミングでフーガが声をかけてきた。
「……今回はワレの負けを認める。
もしワレを見逃すというのなら、代わりにお前が知りたい情報を教えよう」
足が止まった。
一瞬、時間稼ぎかと考えた。
だが、戦いから分かる。
フーガは騙すような性格ではない。
ここでフーガを見逃すのは……正直痛い。
でも——知りたい情報が多い。
「分かった。あなたを見逃します。その代わり質問には、嘘偽りなく答えて」
「……魔王様に誓って嘘はつかないと宣言しよう」
……ここまで言うなら嘘はつかないだろう。
「だが……今の状態で、長くはこの場にとどまれぬと先に伝えておく」
留まれない理由は分からないが、それなら早めに知りたいことを聞こう。
「魔王はどれくらい強いの? それとあなたと同じ幹部に何人いるか教えて」
フーガは苦虫を潰したような表情を浮かべた。
「ワレを含め、幹部は3人。相性にもよるが……全員ワレと似たような強さだ。
そして魔王様の強さだが……ワレら3人含めても魔王様には届かないと言っておこう」
「は……?」
思わず耳を疑った。
フーガだけで精一杯だというのにそれが3人。
しかもそれ以上の化け物がいる。
「……今なら幹部に推薦してやることもできるが?」
「それはない」
侵略してくる奴らの幹部とかありえない。
もっと強くなって……絶対に抗ってやる。
他の気になることを聞いていこう。
「魔王に弱点はあるの?」
「……それだけは絶対に言えぬ」
この感じだと……何か弱点はありそうな気がする。
でも口を割るのは難しそうだ。
別の質問をしよう。
「あなたたちがゲートを使ってこの世界にくるのはなぜ?」
フーガが目を瞑った。
「まずは認識が間違っていると言っておこう。
ワレらはそれを使ってこの世界に来ているのではない。閉じ込められているのだ」
……ゲートに閉じ込められている?
一体、誰に?
「誰がこのゲートを作っているの?」
「それは——」
フーガが答えようとしたときに、奴の体が薄くなりだした。
「すまぬが……もう限界のようだ。これ以上は付き合えぬ」
フーガはそう言い、立ち上がった。
そして、以前にも見た黒い渦が地面にできる。
「今回はワレの負けだ……次は軍勢を率いてやってくる。
そのときにまた合間みえよう! 今度はワレが勝つ!」
フーガはそれだけを言い残し、渦に呑まれていった。
……。
まだ聞きたいことが多くあったんだけどなぁ……。
でも——
——今回は私の勝ちだ。
玉野さんや雪奈さんたちが近づいてくる。
他のメンバーも大勢が歓声をあげていた。
今は……この勝ちを噛み締めよう。
「私たちの勝ちだ!」
私は右手を挙げ、歓声に応えた。
後書き
フーガ戦いかがだったでしょうか?
フーガから知り得た情報は極僅か……やっぱりトドメを刺すべきでしたかね。
第3章「交錯する刃」はエピローグを挟んで終了となります!
ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました!
第4章ではいよいよ謎が少しずつ解明されていき、話が大きく動き出します。
第4章も1日1話ペースで更新していきます!
お昼休みに、少しだけゲートの向こう側を覗きに来ていただけたら嬉しいです。
少しでも「フーガ戦、熱かった!」「この先の展開が気になる!」と思っていただけましたら、
ブクマやページ下部の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして評価していただけると、とても嬉しいです!
「このキャラの間話を見たい!」といった感想も大歓迎です!
次の話もよろしくお願いします!




