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【ゲート×ソロ成長】孤独な少女は、影を纏い最強へ 〜日常の底で、刃は静かに成長する〜  作者: ショーナ・レーベン
第3章 交錯する刃

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第12話 また、今日みたいに

 7月21日。


 傷の男を捕縛してから5日経った。


 現在の私のレベルは33。

 フーガとの決戦まで残り10日ほど。


 毎日限界近くまでゲートに潜っているが、なぜかレベルが上がりにくくなってきた。

 どの個体を倒しても、今までの半分ほどの経験値。


 まるで、『経験を積め。レベルだけを上げるな』と言われているかのようだ。


 なぜそうなったかは分からない。

 今のままではフーガのレベルには追いつかない。


 じれったく感じる。

 とりあえず、スキルレベルを意識して上げていく。

 

 その日も分身体をゲートに送り、学校に行くと咲が近づいてきた。

 

「天音おはよー! 明日……予定大丈夫そう?」


(明日……?)


 一瞬何のことか分からなかったが、思い出す。

 私の誕生日か。


 最近、根を詰めすぎて完全に忘れていた。

 正直、予定を入れるのはできれば避けたい。


 断ろうと考えたタイミングで、咲が話す。


「天音……最近余裕がなさすぎ。たまには息抜きをしないと、いつか怪我をしそう」


 自分では意識していなかったけど……そうなのかもしれない。


 少し肩の力を抜く。


 ……怪我、ね。


 思い返すと、少し根を詰めすぎていたのかもしれない。


「咲おはよー。明日は大丈夫だよ」


 そう返すと、咲は笑った。


「それなら良かった! 明日の昼頃に天音の家に行くね!」


 チャイムが鳴り、自分の席に戻る。


(……息抜きか)


 休むことの葛藤もあったが、結局明日は遊ぶことを決めた。



*******



 次の日、昼。

 

 家で鑑定などのスキルを使い、スキルのレベル上げを行う。


 家のインターフォンが鳴った。

 玄関に向かい、咲を出迎えにいく。


 玄関の扉を開けると、咲が少し離れて手招きをしていた。


「……え?」


 なぜか咲はタクシーで来ている。


 一瞬呆然としたが、とりあえず向かう。


「誕生日おめでとー!」


 咲が笑顔で言ってくる。


「ありがとう……それで、このタクシーはなに?」


 気になったことを聞いてみる。


「今日は外で祝いたいと思って、タクシーで来ちゃった!」


 予約もしてあるから早くと急かされ、タクシーで連れ出された。





 タクシーが止まった。

 目的場所に到着したみたいだ。


 タクシーから降りると、場違い感のある場所だった。


 黒大理石の入口。

 全面ガラス張りの壁が陽光を反射している。

 

 明らかに高級感のあるビルだ。


 頬が引き攣った。


「咲……場所を間違っていない?」


 私が咲に尋ねると、咲が苦笑していた。


「私もやりすぎだと思ったんだけど……ね。中に入ってみたら分かるよ」


(咲が企画したわけではない……?)


 咲に背中を押されて、戸惑いながらビルの中に入る。


 ……普段着で来たが、浮いていないだろうか。


 ビルの中に入ると、ほのかなアロマの香りがする。

 ピアノが奏でられており、その繊細な音が少し心地いい。


 エントランスを見回していると、完璧な制服を着こなしたコンシェルジュが近づいてきた。


「お待ちしておりました。相沢天音様ですね? 案内しますので、どうぞこちらに」


 そのまま奥に案内され、扉を抜けた。



「「「「誕生日おめでとう!」」」」



 そう言われ、クラッカーの音が鳴り響いた。


 目を丸くし、周囲を見回す。


 会場内は広々としており、数百人でも入れそうだ。

 中央には複数のテーブルが置かれ、白い布で覆われている。


 少し離れたところには、料理が何十種類も並べられている。


 目の前には松田さん、重村さん、SPの方々。

 そして、父親もいた。


 背後から咲が話しかけてくる。


「どう? びっくりした?」


 驚いたに決まっている。


「うん……そもそもいつ重村さんたちと知り合ったの?」


「……言ってなかったっけ? 私、重村商事でバイトをしているんだ」

 

 詳しく聞くと、咲はバイトをしているときに、重村さんに話しかけられた。

 いきなりトップの人がきて緊張していたが、私の話で盛り上がり、二人はすぐに意気投合したみたいだ。


 ……そういえば、私の正体を知る者として同級生で親しい友人と、父親の二人が増えたことを重村さんに伝えた気がする。


 二人で話していると、重村さんが近づいてきた。


「どうじゃ……いい会場じゃろう? 咲くんがこの会場の飾り付けを行ったのじゃよ」


 その後、耳元でボソリと重村さんに言われた。


「以前に、天音ちゃんに助けられたとだけ咲くんには話しておる。それ以上は話していないぞ」


 一応……配慮はしてくれたみたいだ。


 お辞儀をすると、「どこまで知っているか分からなかったからな」と重村さんは笑っていた。


 奥に案内され、テーブルにつく。 

 どうやらビッフェ形式みたいだ。


 皿を持ち、取りに行く。


 目移りしてしまうほどの料理が、ずらりと長いテーブルに並んでいる。


 ガラス板の上で、宝石のように輝く色とりどりの前菜。

 こんがり焼けたローストビーフの香りが、食欲を刺激する。


 どれから手をつけるか、迷いながら選んでいった。


 



 多くの量を食べ、満腹になった頃。


 咲がコンシェルジュに耳打ちしているのが見えた。

 コンシェルジュが大きなケースを抱え、戻ってくる。


 ケースを見つめていると、咲が笑顔で話しかけてきた。


「天音、改めて誕生日おめでとー! これプレゼント!」


 かなり大きなケース。

 人が入れそうなほど大きい。


 それを咲から渡された。


「ありがとう……中を見てもいい?」


 頷かれ、ケースを開けてみる。

 

 目に映る、鈍く光る漆黒の革鎧。

 触れると、軽量ながらも鋼のような硬度を感じさせる。

 関節部は動きを妨げないよう細かく裁断されている。



【物品鑑定:革鎧】

状態:正常 品質:高品質

スキル:防御力アップ(中) / 環境適応(小)



 鑑定をすると、防具にスキルがついていた。


 無事でいて欲しい。

 そんな意図を感じる装備だった。


 胸が込み上げる。


「ほんとに嬉しい……咲、ありがと!」


 私がそういうと「大事に使ってね」と少し咲は照れていた。


 重村さんと松田さんも近づいてきた。


「いいものをもらったのぉ。ワシからはこれをプレゼントじゃ!」


 重村さんにどこかの鍵を渡された。

 

 ……なに、これ?


 松田さんが「コホン」と咳をして説明してくれる。


「私は止めたのですが……家をプレゼントだそうです……」


 松田さんがタブレットを開き、詳細を見せてくれる。

 タブレットを持つ松田さんの手が、わずかに震えていた。



——画面に映し出されたのは、現代の城塞と見紛うような邸宅だった。



 周囲を囲む漆黒のフェンスは、高い石造りの外壁と一体化している。

 

 200坪を超える広大な敷地の中心にあるのは、シルエットが美しい3階建てのモダン建築。

 ライトアップされた白亜の外壁が、夜の闇に浮かび上がる様は、住居というより一つの芸術品のようだった。


「……は?」


 理解が追いつかない。


 思考が止まった。


 ギギギっと首を重村さんがいる方向に動かす。

 重村さんが満面の笑みでサムズアップをしていた。


 違う。そうじゃない。


「これ、明らかに人にプレゼントするようなものじゃないんですけど……」


 重村さんに尋ねる。


「その家は元々、ほとんど使っていなかったものじゃ。

 天音ちゃんの隠れ家として自由に使うといい。マスコミなどから身を隠す拠点が必要だろう」


 家の名義をそのままにして、税金は重村さんが払うと笑っていた。


 顔が引き攣り、松田さんを見つめる。


「傘下ギルドの手助けをしてもらっていたのに、報酬をあまり渡せなかった分……だそうです。

 ……止められなくて申し訳ありません」


 松田さんがどこかからハリセンを取り出し、手が震えている。

 重村さんを眺め、悩まし気な表情を浮かべていた。


 ……今はこの家のことを何も考えないようにしよう。


 このことは後回しにする。

 

 気づけば父親もそばにいた。


「天音、誕生日おめでとう。……あまり家に居れなくてすまないな」


 父親は頭を掻き、申し訳なさそうな表情を浮かべている。


「うん……大丈夫だよ」


 そう返事をしておく。


「それと、これは誕生日プレゼントだ。他の人ほど豪華じゃなくてすまないが……」


 父親が小さな箱を渡してきた。


 箱を開けてみる。



——私が昔欲しがっていた時計。



(覚えていてくれたんだ)


 胸の奥が熱くなった。


「ありがと……大事にする」


 時計をギュッと握りしめる。


 目頭が熱くなり、視線を父親から逸らす。


 視界の隅で父親の表情が映った。

 穏やかな顔で私を眺めていたのが、とても印象的だった。



*******



 家に戻り、もらったプレゼントを自室に飾る。

 それらを眺め、自然と口元が緩んだ。


 重村さんのは正直、予想外すぎたけど……それだけ大事にされていると思うと悪い気はしない。


 心の奥底から活力がみなぎる。


 今日のことを、私は一生忘れないだろう。


 フーガと戦うまで後10日。



 また、今日みたいな生活を送るために——奴を倒す。

 


 


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