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【ゲート×ソロ成長】孤独な少女は、影を纏い最強へ 〜日常の底で、刃は静かに成長する〜  作者: ショーナ・レーベン
第3章 交錯する刃

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第11話 復活の“K”

 男が壁に激突し、音を立てて崩れ落ちる。

 パラパラと乾いた音を立てて、コンクリートの破片が降り注いだ。


 場を支配したのは、あまりに場違いな静寂。

 ライブハウスを脱出しようとしていた男たちが、突き飛ばされた仲間を見て一斉に振り返る。


「……は?」


 誰かの間抜けな呟きが漏れたが——



——もう遅い。



 眼前の男が驚愕に目を見開く。

 その瞳に映り込むのは、紫電を纏った死神の如き影。

 

 世界が止まって見えるほどの加速。

 私はその勢いのまま、男の顎を蹴り上げた。


「ドォォォォォンッ!!」


 凄まじい衝撃音と共に男が天井近くまで跳ね上がり、壁に叩きつけられて力なくずり落ちる。


(雷遁が切れるまで、あと2分……!)


 一秒も無駄にはできない。

 私は雷光の軌跡を残しながら、次々と敵の懐へ潜り込み、重い一撃を叩き込んでいく。

 5人目が沈んだとき、顔に傷のある男が、喉を引き裂くような怒声を上げた。


「てめぇら! ボサッとしてんじゃねぇ、出口から脱出だ!」


 男たちの動きが変わる。

 我に返った彼らが、雪崩を打って扉へと殺到した。


 だが——。

 

「あら? どこへ行くつもりかしら」


 逃走経路を塞ぐように、凛とした声が響く。

 そこには雪奈さんと、彼女が率いるギルドメンバーたちが完璧な陣を敷いていた。


 退路を断たれたと悟ったのか、傷の男が歪んだ笑みを浮かべる。


「おいおい……天下の雪奈様が、こんな場末のライブハウスに何の御用だぁ? この襲撃をリークされたら、アンタらの面目も丸潰れだろうぜ?」


 その挑発を、雪奈さんは切り捨てた。


「無駄よ。貴方たちの犯行はすべて把握済み。言い逃れできない証拠もね」


 二人が言葉を交わしている間も、私は止まらない。

 残光となって敵を仕留めていく。雷遁、残り1分。


 外で待機していたメンバーたちも次々と雪崩れ込み、ライブハウスを完全に包囲する。


「ちっ! だったら全員、ここで始末するだけだ!」


 傷の男がこちらを睨む。

 その瞳に宿った、ゾッとするほどドロリとした憎悪。


 背筋に冷たいものが走る。

 思わず足が止まりそうになるほどの、純粋な殺意だった。


(……いや、怯んでる場合じゃない)


 小さく息を吐き出し、雑念を振り払う。

 周囲でも乱戦が始まった。私も、私の役割を果たすだけだ。


 再び地面を蹴り、戦場を駆ける。

 

 ライブハウス内は、完全に戦場と化していた。

 壁は削れ、床は砕け、天井から埃が落ちてくる。

 鳴り響くBGMの爆音。


 苦戦している味方を援護し、さらに3人を無力化したところで——全身を重い疲労感が襲った。


 雷遁の効果が切れた。

 

「はぁ、はぁ……っ」


 荒くなる呼吸を整えつつ、即座に『気配遮断』の感覚を研ぎ澄ます。

 存在感を消し、深い闇の中へ身を沈めた。


 一息つきながら戦況を確認する。

 辺りには氷漬けになった者や、重度の火傷で悶絶する男たちが転がっていた。


 中でも凄まじいのは玉野さんだ。

 鉄扇をしならせ、猛獣のような笑みを浮かべて敵を次々と豪打している。


(……よっぽど、鬱憤が溜まってたんだな)


 その獰猛な戦いぶりに少し頬を引きつらせ、私はそっと視線を逸らした。


(残りは……10人ほどか。これなら押し切れる)


 確信した、その瞬間だった。



——脳内に、突き刺さるような【罠感知】のアラート。



 見れば、傷の男が手に禍々しい魔力を集束させ、爆弾を生成していた。


「これでも喰らいやがれッ!!」


(まずい……!)


 即座に踏み込むが、距離がある。

 男がその爆弾を地面に叩きつけようとした、その時。



——眼前に、一筋の閃光が走った。



 ターボエンジンのような爆発的な踏み込み。

 現れた人影が、渾身の拳を振り抜く。


「オラァアアッ!!」

 

 傷の男が紙屑のように吹き飛び、床を転がっていく。


「ハッ……てめぇのその小細工、もう見飽きたんだよ!」

 

 そこに立っていたのは——岸さんだった。


 意識昏睡と聞いていたけど……無事で良かった。

 少し口元が緩む。


 だが、まだ終わってはいない。

 私は表情を引き締め、立ち上がろうとする傷の男に視線を戻した。


 男は鬼のような形相で、血を吐き捨てるように叫んだ。


「くそっ……! なんでだ……これほど力があるお前らが……なんで俺の家族は守ってくれなかったんだよ!!」


 悲痛な叫びに、周囲の空気が凍りつく。


「俺たちはあのゲートのせいで、すべてを失った! お前らがもっと早く、ちゃんと守ってくれていれば……今も生きてたはずなんだ!

 なのに、お前らは英雄面して……! これは復讐だ、正当な権利なんだよ!!」


 その絶叫を、玉野さんが受け止める。

 周囲の敵は、もうこの男を除いてすべて制圧されていた。


「守れなかった命はある。……それは事実じゃ。認めよう。

 じゃがな、それがお主が他人を傷つけてよい理由にはならんぞ」


 雪奈さんも静かに近づいてくる。


「その力を、誰かを守るために使おうとは思わなかったの?

 得た力で無関係な人を襲うなんて、ただの逆恨み。人として論外だわ」


 ……私も、二人の意見に近い。


 今後同じ境遇の人を増やさないために、その力を使えばよかったのにと思う。


 ただ、もしも父親や咲を失ったら……。


 ズキンと心が痛んだ。


「クソが……!」


 なおも足掻こうとする男を、雪奈さんの氷が瞬時に封じ込める。


 もう動いている男はいない。

 完全に終わったようだ。


「この男たちは、うちのギルドで引き取るわ。……少し、吐かせたいこともあるしね」


 雪奈さんの冷ややかな言葉と共に、男たちが連行されていく。

 玉野さんが私の方へ歩み寄ってきた。


「影殿……助力、感謝する。お主がいなければ、もっと被害が出ていたはずじゃ」


「いえ……最後は、何もできませんでしたから。少しでもお役に立てたなら、良かったです」


玉野さんは「最初の奇襲こそが勝機を作ったのじゃ」と笑い、後で連絡を入れると約束して別れた。


 独り、夜道を歩きながら考える。

 

 手に入れた、強大な力。

 あの男たちのように、使い方を一つ間違えば、それは凶器に変わる。


 力を得ることは大事だ。

 けれど、それをどう振るうべきか。


 夜風に吹かれながら、私は自分の掌をじっと見つめ直した。


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