第8話 ユニークスキル
九尾ギルド襲撃事件があった日、22時頃。
家に帰り、リビングに入る。
父親がソファーに座り、ニュースを見ていた。
『T県では、モンスターに対する人手が足りずやむなく撤退、縮小を——』
父親が私に気づき、テレビの画面を消す。
そして、こちらに振り向いた。
「流石に、帰ってくるのが遅すぎないか?」
父親は眉をひそめ、怪訝そうな表情を浮かべている。
「……今日、九尾ギルド襲撃事件が起きたの知ってる?」
「あぁ、俺も関連企業で働いているからな」
それなら、事情を説明しやすい。
「そこで働いている知り合いと連絡が取れなかったから、心配で見に行っていたの」
父親は「なるほど」と言い、納得したみたいだ。
ここからが本番だ。
学校を長めに休むと伝える必要がある。
「それで言いにくいんだけど……明日から学校を休んで、多めにゲートに潜りたいの」
そう言うと、流石に止められた。
襲撃事件が頻発しており危険なこと。
今は少しでも力が必要なことを、根気強く説明する。
15分ほど口論を続けた。
最終的には、父親は折れた。
しぶしぶと休む許可はもらったが譲歩案を出された。
「本当は良くないんだが……俺の親しい医師に、インフルエンザの診断書を出してもらおう。
それで1週間は休めるはずだ。それ以上は学業に支障が出る。許可はできない」
……1週間か。
本当はもう少し休みたかったが、これ以上は難しそうだ。
「分かった。それでお願い」
話し合いが終わり、自分の部屋に戻る。
今日は、もう遅い時間だ。
お風呂に入り、すぐに眠った。
*******
次の日は病院に行き、インフルエンザの診断書を出してもらった。
医者の先生に「あまりお父さんをいじめるなよ」と笑って言われた。
少し恥ずかしい。
その日からはゲートに入り浸り、ひたすらモンスターを狩っていく。
短剣術や物真似などのスキルレベルも上げたい。
闇雲にナイフを振り回すのではなく、短剣術のスキルが教えてくれる型を意識する。
学校を休み始めて初日で28レベルになった。
家に帰ると、咲からラインがきていた。
『インフルエンザって聞いたけど大丈夫? 何か買っていこうか?』
どう返事をするか迷ったが、咲には正直に伝えておこう。
『実はインフルエンザじゃなくてゲートに潜っているの。最近、物騒だから少しでも強くなっておきたくて』
すぐに既読がついた。『プンスコ!』と書かれたスタンプが送られてくる。
『サボり魔〜! 一応ノートは代わりに取っておくけど、テストが近いんだし勉強しなよー?』
……テストのことを今は忘れておこう。
スタンプで『善処します!』と送って、その日は眠った。
次の日は物真似のスキルレベルが4に上がる。
発動可能時間が9分から11分に伸びた。
4日目はレベルが29に上がる。
思ったより遅い。
……3日で1レベル。
この調子でレベルを上げても、フーガの40レベルには追いつけない。
それに、今は1日中潜り続けてこのペースだ。
放課後だけになるとさらに厳しい。
焦燥感に駆られてくる。
今よりもペースを上げる必要がある。
さらに速度を上げ、狩り続ける。
5日目で短剣術のレベルが2に上がった。
具体的に敵のどこを攻撃するといいか、なんとなく理解できた。
理解できたことで効率が上がり、6日目でレベル30に近づいてくる。
オークの首を狩った時だった。
身体に白い光が灯り、力がさらに湧き上がる。
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【レベルが上昇しました:29 → 30】
体力:+2 / 魔力:+2 / 攻撃:+3 / 防御:+1 /
敏捷:+4 / 器用:+4 / 感知:+3 / 運:+1
【ユニークスキル解放:選択してください】
【ステータス】
名前:相沢 天音 レベル:30
ジョブ:【忍者】 種族:人間
体力:66 / 魔力:68 / 攻撃:97 / 防御:44 /
敏捷:127 / 器用:122 / 感知:90 / 運:41
スキル:【気配遮断 Lv.4】 / 【鑑定 Lv.4】 /
【物真似 Lv.4】 / 【影潜伏 Lv.3】 /
【雷遁 Lv.2】 / 【短剣術 Lv.2】 /
【罠感知 Lv.1】
ユニークスキル:
称号:【闇纏い】
所持スキルポイント:0
経験値:15 / 3000(次のレベルまで 2985)
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ステータス画面を見ていた時に、ある文字で目が止まった。
「……ん?」
声が漏れた。
【ユニークスキル解放:選択してください】
……おぉ。
思わず、右手をギュッと握りしめた。
ユニークスキルをどうやって獲得するか、今まで疑問だった。
だが、やっと出てくれた。
ユニークというくらいだ。
かなり良いスキルを選べることに期待だ。
スキル詳細を眺めていく。
⸻
ユニークスキル:【影の使徒】
恩恵として、元々あった死霊の能力を発動可能。
影と死を媒介にする能力。
死霊を影として使役可能。
死霊の強さは元の敵に依存する。
代償として、身体能力がやや落ちる。
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思わず、息を呑んだ。
このスキルは、確かに強い。
持続時間の記載もなく、常時使えるのだろう。
今までのスキルと比べ、別格だ。
しかし、工場内で岡本が人を操っていたのを思い出す。
『助けて! まだ死にたくない!』
そう叫んでいる人たち。岡本に体を操られ、涙を流していた。
あの時のことを振り返り、胸が痛くなった。
似たことができる【影の使徒】には、強い嫌悪感がある。
【影の使徒】は取りたくない。
次を見ていく。
⸻
ユニークスキル:【雷影の化身】
恩恵として身体が雷属性に適応する。
雷属性による魔力、体力消耗を軽減。
影から分身を生成可能。
生成可能数は魔力に依存する。
僅かでも傷ができた場合、分身は消える。
分身と思考の共有が可能。
分身の強さは自身に依存する。
代償として、雷以外の属性スキルが取れなくなる。
⸻
これは……かなり理想的なスキルだ。
現状の切り札である雷遁が使いやすくなる。
しかし、代償の雷以外の属性スキルが取れなくなるのはかなり重い。
後々、火遁を取り、遠距離攻撃の手段を増やそうと思っていた。
火遁が取れなくなるのは痛い。
だが、分身できるようになるのは魅力的だ。
とりあえず候補に入れて、次を見ていこう。
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ユニークスキル:【瞬身の忍】
恩恵として速度が上がる。
自身が見える範囲で瞬間移動ができる。
再使用可能時間:30秒
代償として、連続で使いすぎると激しい頭痛。
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説明はシンプルでもとても強い。
私は速度で圧倒するタイプだ。速度が上がるのは嬉しい。
30秒ごとに瞬間移動ができる。
不規則な動きで相手を撹乱するのは、私のスタイルには向いている。
ただし、こちらの代償は激しい頭痛。
どれほどの痛みか分からないが、集中力は下がるだろう。
継戦能力は下がる点が微妙だ。
私が選べるユニークスキルは
【影の使徒】
【雷影の化身】
【瞬身の忍】
この3つだけだった。
この中だと【雷影の化身】か【瞬身の忍】のどちらかを取りたい。
フーガと戦う場合を考えてみる。
【雷影の化身】の場合、
メリットは雷遁を使いやすくなる。
途中で効果が切れても、劇的に疲労しなくなるのは嬉しい。
さらに、分身で複数戦ができること。
フーガもコピー体を作ってくる。対戦ではかなり役に立ちそうだ。
デメリットとして、フーガと戦う場合は……特にない。
【瞬身の忍】の場合、
メリットは速度が上がること。
純粋なステータスが上がるのは、フーガと戦う上では大事だ。
さらに、瞬間移動でフーガの隙をつきやすくなるのは大きい。
デメリットを考える。
フーガと戦っている途中に激しい頭痛がした場合。
——その時点で致命的になりかねない。
今の私の成長具合だと、ギリギリの勝負になるだろう。
継戦能力が落ちるのはきつい。
フーガと戦う上で取るといいのは【雷影の化身】だと思った。
ただ、今後のことを考える必要がある。
火遁が取れなくなるのはまだいい。遠距離攻撃のスキルはまだある。
雷属性が効かない敵が出た場合はどうするか。
これが一番重要だ。
思考を巡らせる。
(毒生成のスキルなどを取って、補えばなんとかなる……かな?)
どうしても無理な場合は、玉野さんたちに対応してもらおう。
私は、【雷影の化身】を取ることに決めた。
ステータス画面をタップしていく。
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【ユニークスキル獲得:雷影の化身】
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「ふぅ」
無事に取れて、ホッとする。
フーガと戦うまで残り22日。
もっと強くならないといけない。
まずは、このスキルを使いこなそう。
少し顔が緩む。
使ってみるのが楽しみだ。




