表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/67

10-3 こっちの世界へようこそ!




 次は俺がロニャに質問を返す番だ。

 さっきの仕返しに「彼氏はいるのか?」と聞いてやろうかとも思ったが、すぐに考え直した。


 社交的で友達も多いロニャのことだ。彼氏がいてもおかしくない。

「もちろんいるよぉ。超イケメンだし!」などとのろけられたら、こっちがダメージを食らってしまう。


 俺はこの機会に、ロニャの弱点を見つける方法は無いかと考えを巡らせた。


「それじゃあ、俺から質問な。

 ロニャ。お前、俺達に内緒でアニメ見てんだろ」


「はぁ?」


 俺が唐突に切り出すと、ロニャは露骨に怪訝な顔をした。


「ドッツォはアニメ好きを公言してるし、アリチェも同人漫画ファンだと自らカミングアウトした。

 それに引き換え、お前は自分だけがオタクじゃないって素振りをしているが……俺は知ってるぞ!

 お前が陰でこっそりアニメを見ていることをな!」


 俺がテーブルをドンッと叩くと、ロニャがビクッとして肩を揺らした。

 実を言うと、俺の方には何の根拠も無い。

 ただのデタラメであり、試しにカマをかけただけだったのだが……。


 ロニャの視線が泳ぎ始めたのを見て、俺は確信した。

 こいつ、絶対に見ている。


「そ、そんなわけないじゃん。

 なにを根拠にそんなこと言ってんのよ!」


「ふん。いいのか言っても?

 個人の行動ログはデータベースに記録されているんだぞ。

 ちょっとした技術さえあれば、いろいろ調べることができてしまうんだ……」


 不敵に笑って暴露を匂わせる。

 もちろんデータベースをハッキングすることなんて俺にはできないが、ロニャは技術的な話には疎いところがある。

 このブラフにはひっかかるはずだ。


「ちょ、ちょっと懐かしくなって見ただけだし……」


 (ひっかかった!)と俺は心のなかでほくそ笑んだ。

 あとはさらなる情報を引き出すために誘導していけばいい。


「タイトルは?」


「……ムーンシャドウ」


「アイドル忍者ムーンシャドウか。

 懐かしいな。

 で、久しぶりに見てみてどうだった?」


「かっこよかったよ、火影(フレイムシャドウ)

 今見ても憧れちゃうし!」


 火影(フレイムシャドウ)というのは5人の主人公のひとりで、燃えるようなオレンジ色のロングヘアが特徴の情熱的な美少女忍者だ。

 言われてみると、ロニャのイメージに重なるところがある。


「ロニャ……お前」


「な、何よ」


「そのオレンジ色の髪、染めてるんだよな?

 火影(フレイムシャドウ)になりたかったのか?」


「う……」


「彼女みたいな、心も身体も強い女になりたくて、自分を似せたってわけか?」


 ロニャは言葉に詰まり、顔を真っ赤にしている。

 図星のようだ。

 俺は思いっきり優しい笑顔を作ると、招くように両手を開いた。


「ロニャ……こっちの世界へようこそ!」


「こっちって何よ!?

 別にアニメにハマってるわけじゃないし!」


「いやぁ。

 好きなキャラに外見を寄せるってのは、かなり高いレベルのオタクだぞ。

 ある意味、コスプレ以上の攻めた行為だからな。

 もっと誇っていい!」


 なにも本気でオタク認定したわけではなかったが、彼女の恥ずかしそうな顔が見られただけでも十分な報酬だ。

 今後俺をおちょくってきたら、このネタで返り討ちにしてやる。


「はい、次行くよ次!」


 ロニャは俺の勝ち誇った視線を振り払うように、話題を切り替えた。


「アリち、レンマに質問したいことある?」


「特に無いわ」


 パフェを食べ終えたアリチェが即答し、俺は心からほっとした。

 この拷問のような質問大会も、ようやく終わるのだと。

 だが、ロニャは食い下がった。


「そんなこと言わないでよ、アリち~。

 何でもいいからぁ。

 何かあるでしょ?」


「じゃあ……」


「じゃあ?」


 ロニャが期待を込めて身を乗り出す。

 アリチェは無表情のまま、俺を真っ直ぐに見据えた。


「さっき言ってたハナコって、人工人格でしょ?」


 ――時が止まった。


「え……」


「ハナコって、レンマが地球で付き合ってたっていうひと?」


 ロニャの鋭い視線が俺に突き刺さる。


「そうなの?」


「う……」


「レンマ……人工人格が彼女だったの?」


 執拗な追及に、今度は俺の目が激しく泳ぐ番だった。

 しかし、答えずとも俺の態度を見れば、正解が『YES』であることは明らかだった。


 次第にロニャの顔が赤く染まり、目に涙が溢れそうになる。

 悲しみからではない。

 笑いを堪えているのだ。


「なんてなーっ!

 最初っからわかってたよぉ!

 だってさー、レンマに彼女なんてできるわけないじゃん!

 あはははっ! ウケるぅ!」


 ロニャは腹を抱えて大笑いし始めた。


「うっせーな、ほっとけよ!」


 俺はキレながらも、猛烈な勢いで落ち込んだ。

 これだから歓迎会なんて嫌だったんだ。


「じゃ、これで最後!

 レンマ、アリちに質問していいよ!」


 ――そうか、まだ報復のチャンスは残っていた!


 落ち込んでいる場合ではない。

 俺は気を取り直して頭をフル回転させた。

 こうなったら、相手が女性だからといってもう遠慮はしない。

 アリチェが嫌がるような、とびきり恥ずかしい質問をぶつけてやる!

 セクハラだろうがモラハラだろうが構わねぇ!


 俺がアリチェの私生活に関する不適切な質問をあれこれと思案していたとき――。


「もう答えたから。

 私への質問は終わりよ」


 アリチェがポツリとつぶやいた。


「え?」


「私に、故郷に戻りたいかって質問したでしょ?

 そして私は答えたわ。

 だから、もう私の番は終わっているの」


「はぁあ!?」


「そっか。

 言われてみれば確かにそうだね!

 んじゃ、質問タイム終了~っ!

 おつかれさまでした~!」


「ざけんなーっ!」


 俺の魂の叫びが、誰かに届くことは無かった。






=== 作中に登場する架空の作品について ===


『アイドル忍者ムーンシャドウ』

 普通の中学生5人組が謎の黒猫から忍者の力を授かり、平和を守るために活躍する美少女アイドルアニメ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ