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9-3 あいつ、酷いよ!





「おぉーっと、ここでネメス・デュアルが大きく引き離したーっ!」


 俺達が噴水広場に近づくと、大音響でMCの実況が聞こえてきた。

 既にレースは始まっており、多くのポータリアン観光客も、歓声を上げながら観戦を楽しんでいる。


 広場の中央に作られたホビーボット用のサーキットは、50メートル四方ほどの大きさがあり、安全のため周囲が頑丈なガラス板で囲まれていた。

 コースの横には長テーブルがずらっと並べられており、急ごしらえのパイロットデッキになっていた。

 その上に10名ほどのポータリアンが立ち、ゴーグルを装着してサーキットを見下ろしている。


 地球人とは違ってポータリアンは普段ゴーグルを使わないが、ホビーボットは地球人向けに作られているため、操縦にはゴーグルが必須なのだ。

 ゴーグルの外側につけられたカメラが、プレイヤーの手の動きを正確に捉えることで、ロボットを操作するシステムになっている。


「ネメス・デュアルが3周目に突入!

 このまま逃げ切ってしまうのかーっ!?」


 どうもMCの声には聞き覚えがあると思ったが、それもそのはずだ。

 いつもと口調は違うが、パイロットデッキの上でマイクを握りしめて実況中継しているのは、紛れもなくロニャだった。

 こんなイベントにも関わっていたとは、いつもながら彼女の行動範囲の広さには驚かされる。


「凄い熱気だね!」


 ドッツォは目を輝かせ、ガラス板に張り付いて試合に見入っている。

 サーキットに近づくと、ホビーボットが姿勢制御のためスラスターを吹かすプシュップシュッという噴射音と、機体同士が激しくぶつかり合う金属音が響き渡る。


 さらに時折、爆発音とともに破片が飛び散り、頬が熱で熱くなるのを感じる。

 ボットレースは単にスピードを競うレースではない。

 武器を使った攻撃が全面的に許されているのだ。

 身の危険を感じるほどの迫力はビデオゲームとは比較にならない。

 この臨場感が、ボットレースの最大の魅力なのだ。


 ロニャの絶叫MCは続く。


「さぁて、いよいよ最終コーナーだぁ!

 残るはラストスパートのみ!

 いや、違う!

 ネメス・デュアル、攻撃体勢をとっているぞ!」


 バトルは佳境に差し掛かっているようだ。

 首位を独走している黒いロボット『ネメス・デュアル』は、アニメ『重星覇装じゅうせいはそうヴォルラック』の18話に登場した最強の敵だ。

 主役機ヴォルラックの欠点を全て改良した進化形であり、スペック上はあらゆる点でヴォルラックを上回っているとされている。


「アッシロだ!

 見て、アッシロも参加してるよ!」


 ドッツォが選手のひとりを指さした。

 毛むくじゃらのボサッコ人の中でも、特に恰幅のいい体型には見覚えがある。

 以前、玩具の『ガジェモンベルト』を魔改造して騒動を引き起こした、ドッツォの友達だ。


 しかし戦況は思わしくないようで、眉根を寄せながら肩で息をしている。

 彼が操縦している緑色の量産機『ゲラフ』は2番手についているが、その正面には、背中のリングを不気味な赤色に輝かせたネメス・デュアルが待ち構えていた。


「でたぁ、必殺!

 レクイエム・リーングッ!」


 ロニャの叫びとともに、リングから真っ赤な光線が放たれ、ゲラフのボディを無慈悲に貫いた。


「ぎゃんっ!」


 アッシロの悲鳴が響く。


「あぁっ!

 アッシロ!」


 ドッツォの叫びも虚しく、ゲラフのボディは爆発音とともに四散し、燃えながら無惨な破片となって落下した。


 ライバルを完全に仕留めたネメス・デュアルは、ゆっくりと反転してゴール地点を向くと背中のメインスラスターを点火し、ラストスパートを決めた。


「ゴォーーーーーーォオルッ!

 ナーグ選手の駆るネメス・デュアルが、バトルロワイヤルを勝ち抜きました!

 強い、強すぎる!

 2番手に圧倒的な大差をつけての圧勝です!」


 ロニャの絶叫とともに、ゲームの終了を示す勇ましいBGMが流れる。

 見物客たちからも、割れんばかりの拍手と歓声が巻き起こった。


 パイロットデッキの上で余裕のガッツポーズをしたのは、見知らぬアンテラ人の男だった。

 肌は黄色く頭からは2本の触角が生えているが、銀色の髪が豊かに波打ち、ファンタジー映画に出てくるエルフのように美しい顔立ちをしたイケメンだ。


 隣でがっくりとうなだれているアッシロとは対照的に、彼は勝利など当然の結果とばかりに、優雅な微笑を浮かべている。


「アッシロ、大丈夫!?」


 ドッツォが放心状態のアッシロの元に駆け寄った。


「ありがとう。

 私は大丈夫です。

 でも……ゲラフが……」


 アッシロは、メインストレートの路上で破片となって散らばっている、かつての愛機を悲しい表情で見下ろした。

 ボットレースでは火薬やエネルギー兵器の使用も許されている。

 ゲラフのパーツは高熱で溶けてしまっており、可哀想だが修復は不可能だろう。


「あいつ、酷いよ!

 もう勝つことは決まってたのに、わざわざ振り向いて攻撃してくるなんて!」


 ドッツォは涙を浮かべて、勝者を睨みつけた。

 ネメス・デュアルを操縦していたアンテラ人は、既にパイロットデッキから降り、椅子に腰掛けて優雅に寛いでいる。


 そこへマイクを持ったロニャが歩み寄った。


「それでは勝利者インタビューを行いまーす!

 見事、バトルロワイヤルで勝利しました、ナーグさんです!

 皆様、改めて盛大な拍手をお願いいたします!」


 拍手は男連中からはパラパラと疎らだったが、一部の女性陣からは「きゃぁあっ、ナーグ様ぁ!」と黄色い声援が湧き起こった。

 このアンテラ人、男からは嫌われ、女からは好かれるタイプのようだ。


「ナーグさん、今のご感想をお願いいたします!」


「感想と言われてもねぇ。

 特に感じることは何も無いかな。

 あまりに歯ごたえがなかったしね」


「さすがエースパイロット!

 ご存じないかたのために説明しますと、ナーグさんは地球遊覧船の護衛を担っている、現役の戦闘機パイロットなんです!

 皆さんの旅行の安全を守ってくださっているヒーローなんですよ!」


「プロだと!?

 そりゃ強くて当たり前じゃねぇか!

 なんでそんな本職のパイロットが、こんなホビー競技に参加してんだよ!?」


 俺の驚きの声に、ドッツォもフンフンと頷く。

 ロニャは司会の立場として勝者を持ち上げているだけだと思うが、ナーグは満更でもない様子だ。


「よしてくれよ。

 弱きものを守ることは、強き者の義務だからね。

 当然のことをしているだけさ」


「きゃぁあ、素敵ぃ~!」


 ナーグの歯の浮くようなセリフにまたもや女性陣から声援が湧き起こる。

 なんでこんな奴がモテるのか。

 イケメンなら何でもいいのか?

 世の中は間違っている。


「ところでナーグさんの狙いは、やっぱり優勝賞品のフィギュアなんですか?」


「個人的には、そんなものに興味は無いんだけどね。

 人から頼まれたからやっているだけさ。

 断る理由も無かったしね」


「なんと!

 その幸運なかたはいったいどなたなんでしょうね!」


 ロニャが冷やかすように言ったが、俺はナーグの背後に立つ怪しい男の存在に気がついていた。


 青いアロハシャツを着たグレーネ人。

 金持ちコレクターのビンキだ!






=== 登場人物 ===


【アッシロ】

 18歳。男性。ボサッコ人。星間連盟貿易局のエンジニア。ドッツォのアニメ仲間。改造が好きすぎて自制できない。


【ナーグ】

 男性。アンテラ人。地球遊覧船の護衛を担う戦闘機パイロット。男から嫌われ女から好かれるタイプのイケメン。


=== 重星覇装ヴォルラック・用語解説 ===


【ヴォルラック(VOLRACH)】

 主人公レオンが駆る全高62メートルの巨大機動体。

 武装は光子槍(ゼロ・ランス)重力集中殴打グラヴィティ・スマッシャー多重干渉盾(ディスコード・バリア)


【ネメス=デュアル】

 全高74メートル。レオンの兄クロイツの機体。

 ヴォルラックの後継機であり完成形。

 武装はディアブロ・クレスト、インフェルノ・バースト、レクイエム・リング。


【ゲラフ】

 ザル=グラード帝国の量産型兵機。群体行動を得意とする。



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