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6-5 私には絶対無理!




 こうして俺は、ガジェモンベルトをつけたボサッコ人を見つけては、片っ端からバトルを仕掛けていった。


 ガジェットモンスターは、文房具や日用品などの道具をモチーフにしているが、戦闘スキルもだいたいその道具の特徴を生かしたものになっているのが通例だ。


 「メジャーマミー」は全身に包帯を巻いたミイラ(マミー)のようなガジェモンで、指先から鋭利な巻き尺(メジャー)を放つことができる。

 俺がオーバーバフで巻き尺の強度をカチカチにしてやると、案の定、巻き尺は巻き取れなくなり、奴は身動きがとれなくなってしまった。

 そこですかさず捕獲スナッチすれば、戦闘終了だ。


 「マグネカブト」とも戦った。

 奴の巨大なツノは強力な磁力を持ち、金属の武器や鎧を引き付けてしまうのだが、そもそも俺の「フセンジロ」は紙のような素材でできているので、まったく影響を受けなかった。

 月面基地の地面は磁力ブーツが吸い付くようにどこでも磁性体が使われているので、磁力最大化のバフをかけてやったら、マグネカブトは貼り付けにされて動けなくなってしまった。

 すかさず捕獲スナッチしたのは言うまでもない。


 口がスプレー缶のノズルになっているイカ型ガジェモン「スプレークラーケン」に至ってはもっと簡単だった。

 目潰しのイカスミを噴射してくる面倒な相手だが、スプレーの噴射力を100倍にしたら、イカスミだけでなく体内のいろんなものを吐き出してしまい、『のしイカ』のようになってしまった。


 他にもいろいろなガジェモンと戦ったが、俺はそもそも運動やスポーツが苦手なので、いくら遊びとはいえ連続して体を動かし続けるのは正直キツい。

 30分も経つとだんだん面倒くさくなり、技名を叫んだり、ヒーローのようなポーズをとることもしなくなっていた。

 実際、技名はベルトに内蔵されたマイクに認識されればいいだけなので叫ぶ必要は無いし、ポーズに至っては気分を盛り上げるためだけのものなので、まったく不要な動作なのだ。


「レンマ兄ちゃんのオーバーバフは最強だね!

 もう、あらかた片付いたみたいだよ!」


 ドッツォが興奮気味に声を上げた。


「おぉ……そうか。

 ようやく休めるな……」


 俺が肩で息をしながら商店街を見渡すと、あんなにいたガジェモンバトル狂のボサッコ人たちの姿は消えていた。

 遠巻きに避難していた観光客たちも、騒動が収まったことを察して、徐々に通りの中央へと戻りつつあった。


「レンマって普段はヌケてるしニブちんだと思ってたけど、こーゆーオタク的なことは妙に得意だよね~。

 ウケる~」


「私には絶対無理。

 公共の場で本気でオモチャのベルトを巻いて遊ぶなんて。

 ある意味、その強靭なメンタルだけは尊敬するわ」


 ロニャとアリチェが、俺のことを称えながらも実質的にディスっている。

 だが、今の俺にはいちいち突っ込むだけの元気は残っていなかった。


「……いったいどういうことなのか、説明してもらおうか」


 俺の疲労感に追い打ちをかけるように、背後から、粘着質な奴の声がした。

 保安部警備課のアレシオだ。

 騒動の最中はどこかで安全を確保していたのか、あるいは吹っ飛ばされて気を失っていたのか、今の今まで姿が見えなかった。

 騒ぎが収まったのを見計らって出てくるあたり、実に奴らしい。


「そもそも、そのベルトは何なんだ?

 どこで入手した?

 『地球外貿易に関する条約』に違反している可能性がある。

 わかるように説明しろ」


 相変わらずの上から目線の問い詰めに、俺が溜め息をつくよりも早く、ドッツォが身を乗り出した。


「あのね、アレシオさん!

 ガジェモンベルトはガジェモン研究所のチヨダ博士が、ガジェモン問題を解決するために政府からの要請を受けて開発した装置だよ。

 空間に浮遊するガジェ粒子の物理現象を応用していて……」


 ドッツォはキラキラした目で、アニメ「ガジェットモンスター」の内容を説明し始めた。

 もちろん、アレシオが知りたいのは「現実のオモチャ」としてのガジェモンベルトの出処であってアニメの設定ではないのだが、どんどん険しくなっていくアレシオの表情が面白かったので、俺はそのまま放置することにした。

 ロニャもニヤニヤと笑いながらこの状況を楽しんでいる。


 ――そのときだった。


 ドォォォンッ!!


 それまでの小規模な戦闘とは比較にならないほどの激しい爆発音が、商店街に轟いた。


「キャアアアア!!」


 人々の悲鳴が上がる。

 見ると、洒落たカフェのオープンテラスに並んでいたテーブルや椅子が、何らかの衝撃波によって吹き飛ばされ、宙を舞っていた。


 そしてその破壊の中心点、瓦礫が散乱する空中に、《《それ》》は姿を現した。


 高さ10メートルほどもある、巨大なドラゴンのフォルム。

 ガスバーナーのような青い炎を噴き出す頭部。

 凄まじい回転を続けるドリル状の両手。

 そして、巨大な金属ハンマーの形をした重厚な尾。


「コ、コンバイン・ドラゴン……ッ!」


 ドッツォが、息をのんでその名を呼んだ。


「まさか、超レア級の最強ガジェモンが、どうして……!?」


 コンバイン・ドラゴンが身体を不気味にくねらせながら回転すると、そのハンマー状の尾が、隣接する商店のシャッターを一撃でひしゃげさせた。

 叩き割られた店の看板が、火花を散らしながら地面に転がる。


「奴は何をやっているんだ!?

 あれはガジェモンバトルじゃない!

 ただの破壊活動だぞ!」


 プログラムの暴走か、あるいは何者かによる悪意ある操作か。

 いずれにしても、状況を確認しなくてはならない。

 俺達は警戒しながらコンバイン・ドラゴンとの距離を縮めていった。


 すると、空中映像の下に、異様な姿の男が立っていることに気がついた。


 黒いローブのような衣服をまとい、フードを目深に被っている。

 影になって顔はよく見えないが、フードの隙間からは2本の触角が突き出していた。


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