表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/67

6-4 チートスキルで無双だぜ!



 商店街「リューン・シャンゼリゼ」は、もはや本来の姿を失っていた。

 空中を飛び交う攻撃エフェクトと、耳をつんざく爆発音。

 俺は腰に巻いたガジェモンベルトの重みを感じながら、戦場の中心へと歩みを進めた。


 ドッツォとロニャが、不安と興奮が入り混じった表情で俺の後ろについてくる。

 アリチェは無関心を装っているようだが、まぁ、いつものことだ。


「おい、待て!

 そこまでだ!」


 俺達の前に、険しい表情の男が立ちはだかった。

 保安部のアレシオだ。

 眉間に皺が寄っており、いつも以上に不機嫌そうなオーラを放っている。


「お前……そのベルト。

 最初からおかしな奴だとは思っていたが、まさかこの状況でボサッコ人たちの騒動に加わろうってのか!?」


「だったらどうした」


 俺が短く返すと、アレシオはさらに眉根を寄せた。


「させるか!

 ただでさえ手が付けられないほどめちゃくちゃな状況なんだ。

 これ以上、ややこしくすんじゃねぇ!」


「何もできねぇ奴はすっこんでろ。

 邪魔なんだよ」


「なんだと……この野郎!」


 アレシオが激昂し、俺の胸ぐらを掴もうと手を伸ばした――その瞬間。


「レンマ兄ちゃん、危ない!」


 ドッツォが横からタックルをかましてきた。

 衝撃を受けて、俺の身体が大きくよろける。


 ドォォォンッ!


 激しい爆発音とともに、アレシオの身体がゴミ袋のように後方へ吹っ飛んだ。


「ぐはぁっ!?」


 アレシオがいた場所に浮遊していたのは、透明な緑色でブニョブニョとした不定形のモンスター『スライムのり』の空中映像だ。

 さっきの衝撃は、こいつの身体から放たれた攻撃の余波だったのだ。


「サンキュー、ドッツォ。

 助かったぜ」


「さっそく対戦相手のおでましだよぉ!」


 ドッツォが指を差した先に、ゆらぁ~と不敵な笑みを浮かべたボサッコ人が歩み寄ってきた。

 ドッツォに比べるとかなり痩せていて、神経質そうな鋭い目つきの男だ。


「見たところ、ガジェモンベルトをつけているようですね。

 私の『スライムのり』と勝負していただきましょうか!」


「いいだろう。望むところだ!」


 俺は身体の前で両腕をぐるりと回し、ド派手なポーズを決めた。


「出でよ、煉獄の書記官――フセンジロ!」


 俺が叫ぶと、ベルトのバックルが激しく回転し、まばゆい光が溢れ出した。

 光の中から現れたのは、黄色い甲羅を持つ小さなアルマジロだった。


 だがよく見れば、それは甲羅ではなく、付箋紙だ。

 身体中に黄色い付箋紙が無数に貼り付いているアルマジロ。

 強そうには見えず、かっこいいわけでもなく、もちろん可愛くもない。


「ぷっ、はははは!」


 フセンジロの姿を見たボサッコ人が笑い出してしまったのも無理はない。


「何かと思えば、全ユーザーから最弱と蔑まれているガジェモンじゃないですか!

 私もなめられたものですね」


「……笑っていられるのも、今のうちだぞ」


「手加減はしませんよ。

 喰らえ、のりスプラッシュ!」


 ボサッコ人が叫ぶと、スライムのりの体から分離したネバネバの液体が、散弾のようにフセンジロを襲った。


「避けろ! フセンジロ!」


 俺の命令に従い、フセンジロは瞬時に身体を丸めると、凄まじい速度で地面を転がった。


「す、素早い!」


 ドッツォが驚きの声を上げる。


 『のりスプラッシュ』は地面にベシャッとぶつかると、たちまちカチカチに硬化し始めた。

 もし命中していれば、一瞬で身動きがとれなくなっていただろう。


「ちょっとレンマ!

 そいつヤバいじゃん!

 どうやって戦うわけ!?」


 ロニャがしびれを切らしたように叫ぶ。


「フセンジロのスキル『オーバーバフ』は、対象のスキルを限界まで強化することができるのさ」


「はぁ?

 強化?

 味方じゃなく敵を?

 ちょっと何言ってるのかわかんないんだけど!」


 ロニャは納得していないようだが、このスキルを言葉で説明することは難しい。


「いいから見てろって。

 ……オーバーバフ!

 瞬間接着ッ!」


 俺が号令をかけると、フセンジロの身体から1枚の付箋紙が射出される。

 それは空中でひらひらと舞うと、スライムのりの身体にピタッと貼り付いた。


「……なんですか?

 それが攻撃のつもりですか?

 ただの紙じゃないですか」


「ふふ。

 お前のスキル『のりスプラッシュ』。

 あまりに弱いから、固まる速度を最大にしてやったよ」


「はぁ?

 ちょっと意味がわかりませんね。

 勝ち目が無いもんだから、やけになったんですか?

 あれ……?」


 スライムのりの様子に異変が起きた。

 透明だった緑色の身体が、次第に白く濁り、カチカチに硬化し始めていたのだ。


「こ、これは……身体が固まっていく!

 動けない……動けない!」


「そう。

 お前のガジェモンは、自分の身体を接着成分で固めちまっているというわけさ。

 お前が命令を出せば出すほど、自分自身を固めるパワーが増大する」


「な、なんと……ッ!」


 スライムのりはもはや全身が真っ白になり、彫刻のようにぴくりとも動けなくなった。


「これが、オーバーバフのスキルなのか!」


 ドッツォが感動に瞳を輝かせる。


「あぁ。

 本来は味方を強化するスキルなんだが、どういうわけか初期バージョンではおかしな挙動になっていたんだ。

 セカンドエディションからは制限(ナーフ)されたけどな」


「そうだったんだ!

 さすがレンマ兄ちゃん!」


「さぁて。

 そろそろ大人しく、お縄を頂戴しな!

 捕獲(スナッチ)!」


 俺が両腕を回しながら叫ぶと、バックルから青い光の渦が放たれた。

 固まった「スライムのり」の身体は、ぎゅるるんとバックルの中心へと吸い込まれていく。


「捕獲完了」


「かはぁ……っ!」


 ボサッコ人のベルトから光が消え、男は膝をついて蒼白になった。

 ペナルティにより、彼はもう24時間召喚することができないのだ。


「レンマ兄ちゃん、やったね!」


「やるじゃん、レンマ!」


 ドッツォとロニャが歓声を上げ、俺の周りに駆け寄る。

 遠巻きにバトルを見ていた観光客からも、「おぉーっ!」と感嘆の声が漏れた。

 アリチェは何も言わなかったが、この状況を楽しんでいるように見える。


 俺は商店街の中心部に向かって進撃を開始した。


「さて、チートスキルで無双だぜ!」




=== 用語解説 ===


【フセンジロ】

 「ガジェットモンスター(ガジェモン)」に登場するモンスター。名前の由来は「付箋紙+アルマジロ」。全モンスターの中で最弱と言われている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ