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6-2 ガジェモン召喚ッ!



「ドッツォ、なんだか嬉しそうだな。

 何かいいことでもあったのか?」


「えへへ……やっぱりわかっちゃう?」


 清掃員事務所を出発し、今日の清掃エリアへと向かう途中。

 ドッツォが妙にニコニコとしているので聞いてみたが、すぐに彼の腰に巻かれているオモチャのベルトに気がついた。


「それ、ガジェモンベルトだよな。

 どうしたんだ?」


 『ガジェモンベルト』はアニメ『ガジェットモンスター(ガジェモン)』に登場するアイテムだ。

 俺は世代じゃないが、このオモチャは子供達の間で大ヒットしたのでよく知っている。

 確かアニメの原作も玩具メーカーだったはずだ。

 つまりオモチャを売るために企画されたアニメというわけだ。


「えへへ。

 これね、友達のアッシロからもらったんだ」


「へぇ。

 ただでくれたのか?

 そりゃ太っ腹だな。

 結構いい値段するだろ、それ」


「うん。

 アッシロはすっごく腕のいいエンジニアなんだ。

 なんでも改造しちゃうんだよ!」


 ドッツォは自慢げに鼻を鳴らすと、広い歩道の真ん中で足を止めた。


「レンマ兄ちゃん、見ててね!

 ガジェモン召喚ッ!」


 ドッツォは叫びながら、身体の前で両腕をぐるりと大きく回し、ヒーローのようなポーズをとった。

 すると、ベルトのバックルが激しく光りながらぐるぐると回転を始め、まばゆい光の中から、ギラギラと輝く巨大な『宝箱』が姿を現す。


「うおっ!?」


 俺は思わず飛びのいて驚いた。


 出現したのは実際の宝箱ではなく、宝箱型のモンスター『ステープルミミック』だった。


 ギラギラとした凶悪な目が側面に付いており、パカパカと開閉する蓋の縁には、牙のように鋭利な針がズラリと並んでいる。

 要するに、特大のステープラー(ホッチキス)と、ファンタジーに出てくるミミックを合成したようなモンスターだ。


 だが俺を驚かせたのは、その実体感だ。

 俺が知っているオモチャのガジェモンベルトは、バックルの液晶ディスプレイにドット絵のモンスターが表示されるだけの単純な玩具に過ぎない。


 だが、今俺の目の前に浮かんでいる映像は、幅1メートルほどもあり、立体感を伴って空中に浮いている。

 しかも金属同士が擦れるような不気味な音を立てながら、蓋をパカパカさせているのだ。


「これ……ホログラム映像なのか?」


「ホログラムとは原理が違うけど、そんな感じ。

 アッシロがオモチャを改造して、空中結像プロジェクターを組み込んだんだって。

 本物みたいでしょ!」


「さすがポータリアン。

 技術力がパネェな……」


 俺は感心しながら、ステープルミミックに触ってみようと手をかざした。

 もちろん表面は固くはない……しかし、まったく感触が無いわけでもない。

 かすかに静電気が走るような、ピリピリとした微弱な感触がある。

 ただの光の投影というわけではないようだ。


「レンマ兄ちゃん、もっとすごいのを見せてあげるから、見ててね!」


 ドッツォは再び腕をぶんぶんと振り回すと、気合を込めて叫んだ。


「ニードルシュートォォッ!」


 ドッツォの号令に合わせて、ステープルミミックの口がパカッと大きく開かれたかと思うと、その暗い内部から、巨大な「コの字」型の金属針が無数に射出された。


 シュババババッ!!


「どわっ!」


 俺は咄嗟に身を守ろうとしゃがみ込んだ。

 だが、すぐに思い出す。

 これは映像なのだ。当たったところで痛くはないはずだ。


 俺が心を落ち着けて顔を上げたとき――。


 ガシャンッ!


 道路の反対側に設置されていた看板が、無残にもなぎ倒された。

 『ただいま在庫整理のためセール中』と書かれた雑貨屋の立て看板だ。


「あっ!」


 ドッツォも予想外のことだったらしく、短い悲鳴を上げて口を押さえた。


 この空中映像は、ただの光ではない。

 なんだかわからないが、少しだけ実体があるらしい。

 針の形をしているからといって突き刺さるわけではないが、勢いよくぶつかれば、現実世界に物理的な影響を与えることができるのだ。


「おい、ドッツォ……これ、オモチャにしてはちょっと危険すぎないか?

 遊ぶときは場所を考えろよ。

 看板だったから良かったものの、壊れやすいものにぶつかったら大変だぞ」


 俺が倒れた看板を元に戻しながら注意すると、ドッツォはみるみるうちに不安そうな顔になった。


「ど、どうしよう……。

 アッシロ、みんなで遊ぼうって言って、たくさんの友達にこれを配っちゃったんだ……」


「マジか?

 それ、相当ヤバくねぇか?」


「うん。

 僕……アッシロに注意しに行く!」


「そうだな。

 まぁ大丈夫だとは思うが、いったん回収してパワーを抑制したほうがいいだろう。

 で、そいつ、どこにいるんだ?」


 ――と、そこまで話していたとき、俺のゴーグルにロニャからのメッセージを示すアイコンが表示された。


<ロニャ> レンマ、ドッツォ、今どこ? 商店街が大変なことになってるよ!


 何が起きているのか……なんとなく嫌な予感はしたが、俺は恐る恐る聞いてみた。


「大変……って何が起きたんだ?」


<ロニャ> いろんなとこでボサッコ人が、モンスターバトルしてる!


 やっぱり……そうなるよな……。






=== 用語解説 ===


【ガジェットモンスター(ガジェモン)】

 文房具などの道具の能力を持ったモンスターを戦わせるバトル系アニメ。腰のベルト(ガジェモンベルト)に宿らせたガジェモンを召喚ポーズをとることで呼び出すことができる。


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