3-3 俺を踏み台にしやがった!
「しょうがねぇなぁ~」
俺は気が進まないまま、ドッツォに続いて店内へと足を踏み入れた。
店舗は学校のプールぐらいの広さだが、俺の身長より高い棚が、さながらダンジョンのように立ち並んでいる。
しかも銅像のミニチュアや中世の武具や大型ぬいぐるみなど雑多な商品が積まれていてカオス状態。
小型のロボットなら、どこにだって隠れることができるだろう。
「よーし、手分けして探そーっ!
名付けて『おもちゃ狩り大作戦』!
マジ楽勝だし!」
ロニャは勝手に作戦名を宣言すると、ズンズンと店の中央へと進んでいった。
逃げる敵を捕まえるなら、挟み撃ちにするのが有効だろう。
俺はドッツォと目配せをして、それぞれ別の方向へと散開した。
<ロニャ> 右通路、クリア! 敵影なーし!
<ドッツォ> こっちもいないなぁ。 あ、すごい! この剣かっこいい!
ゴーグルに、仲間の会話ログが表示されるようになった。
どうやらロニャが勝手に『パーティ・チャットモード』を起動したらしい。
<ロニャ> ぬいぐるみコーナー、もっふもふだよ~! ダイブしたい!
<ドッツォ> あ、お面だ。被ってみよっと!
緊張感の欠片もないログが流れていく。
こいつら、完全にゲーム感覚だ。
俺はため息をつきながら、背後にも注意しつつ慎重に通路を進んでいく。
「店先のほうから音がする!」
そうロニャが叫んだ直後、店の奥のほうからもガチャンと何かが割れるような音が聞こえた。
「気をつけろ、敵は複数かもしれないぞ!」
俺は声をかけつつ、音のした方角へ神経を研ぎ澄ませた。
そして――ついに、通路の先で『奴』を見つけた。
1体のボットが床の上に立ち尽くし、じっとこちらを睨んでいる。
身長は15センチ程度しかない。
だが、その威圧感はただ事ではなかった。
緑色の迷彩塗装を施されたコンポジット装甲。
剥き出しのオイルチェンバーが機動性能の高さを示す脚部。
全体のシルエットは人型に近いが、頭部は犬のような形状をしており、その奥でモノアイ・センサーが不気味な赤い光を放っている。
そして肩のスパイクアーマーには、機体番号と思われる数字『01』がマーキングされていた。
「敵を発見!
量産型ゲラフだ!」
<ロニャ> は? 何それ?
思わず固有名詞を叫んでしまったが、すぐにチャットでロニャからツッコミが入った。
そりゃ一般人には伝わらないだろう。
<ドッツォ> ゲラフはね。重星覇装ヴォルラックに登場する宇宙帝国ザルグラードの量産型ロボット兵機だよ!
<ロニャ> はぁ? その情報、今必要?
――確かに。
ロニャが知りたいのは、アニメの設定ではなくオモチャとしての性能だろう。
「大丈夫。
この商品は日本で見たことがあるが、大した運動能力は無いはずだ」
俺はゆっくりと歩きながら敵との距離を縮めていく。
手が届く範囲まで近づけば、こっちのものだ。
猫の子を拾うように奴の首根っこをつかんでしまえば、身動きできなくなる。
そして背中にある電源スイッチを切れば任務完了だ。
「ゲラッ」
ホビーボットが周囲をキョロキョロと見回しながら、怪鳥のような奇声を上げた。
単なる音声発生機能だろうが、確かにアニメ本編でも、こんな効果音が出ていたような気がする。
まるで人間をバカにしているような、イライラする鳴き声だ。
「ふふふ。
追い詰められたようだな……観念しろ」
このホビーボットに会話能力は無いはずだが、つい気分が乗って、大仰な敵役のように語りかけていた。
ゆっくりと、奴の首に向けて左手を伸ばしていく。
――そのとき。
「ゲラッ!」
奴は気色悪い声を上げると、差し出した俺の手をすり抜け、勢いよくジャンプした!
「あぁっ!」
そればかりか前のめりになっていた俺の背中を蹴って、その反動で棚の上へと飛び乗ったのだ。
「舐めやがって!
俺を踏み台にしやがった!」
俺は叫びながら体のバランスを崩し、そのままなすすべもなく前方の壁に激突した。
=== 重星覇装ヴォルラック・用語解説 ===
【ゲラフ】
ザル=グラード帝国の量産型兵機。群体行動を得意とする。
【兵機】
ザルグラード帝国が擁する巨大人型兵器の総称。




