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冒険者のおしごと

 早朝、といってもパン屋が店を開ける程度の時刻に俺は東門へ来ていた。

 東門詰め所、俺が普段利用する『冒険者の店』である。

 『冒険者の店』はその名の通り冒険者に依頼を行いその成果に対して報酬を支払う施設である。

 普通『冒険者の店』は酒場や宿などに組み込まれており、ここのように警備兵舎に組み込まれているのはこの街ではここのみである。

 名前どおり東門にあるため街の中心部からは遠くこの辺りに店は少ない。

 なぜ俺がここを利用するかといえばここにはほかの冒険者はあまり来ない、もっと言うと酔っ払いとか強面のチンピラとかはまず来ないことが一番の理由である。

 前にも少し言ったが冒険者は基本、一般の社会からドロップアウトした連中で気の荒い連中が多い。

 そんな連中が酒場などにたむろってるのだ何度か利用したが怖い思いをしたことも多い。

 今はもう俺のほうが強いがそれでも怖いものは怖いし関わらないですむならそれに越したことはない。

 まあ探せばもっと雰囲気のいい『冒険者の店』もあるのだろうがこの街中に数十ある店すべてをまわるのは億劫なのでやはりここを利用している。

 ここ自体、利用する者も少ないのでほかの冒険者とはあまり面識がない。

 よって俺はソロ冒険者だ。ぼっち、いやソロでのメリットもあるにはある。面倒な人間関係もないし、報酬は総取りだ。俺が金を持っている理由もこれが大きい。

 デメリットは交渉、警戒、戦闘、採取、確認など自分で全部しなければいけないことだ。

 正直、誰かと組みたいのだがまともな知り合いがいないため結局今日もひとりでここにいる。


「どうも、今日は何かあります?」

 すっかり顔なじみとなった警備兵に声を掛け詰め所へ入る。

「おうダイチ、今日は『仕事の日』かい?まったくいいご身分だな」

 最近は週に2・3日くらいしかここに顔を出さない。

 それで一般の人より稼げるならそれでいいかと思うし楽が出来るならそれに越したことはない。


「なら一緒に出てみます? 儲けは折半でいいですよ?」

「冗談よせよ、なにが悲しくて命賭けなきゃならんのだ」

「兵隊だって戦うのが仕事でしょうに」

「訂正する、たったひとりでモンスターに向かってくのは正気の沙汰じゃない」

「俺はそうやって食ってるんだけど……ってまあいいや。それで今日はどんなのが?」

 その日は街の南西にある森に出たヒドラ、空飛ぶ大蛇を退治する依頼を受けた。

 ここから反対の西門から出なけりゃならない、出発は昼だな。




 昼食を食べ西門を出た俺は森に入ってすぐに運良くヒドラを発見することが出来た。

「でけえ」

 まず口に出た感想がそれ。木に巻きついて頭だけこちらに向けて威嚇しているがまた随分と大きい。

 例えるなら頭が軽ワゴン車くらいの大きさで胴の長さがコンビニをぐるっと一周できるくらいといったところだろうか。

 すでに数人被害が出ている。

 そら人も飲まれるはずだわ。とか考えているとヒドラは飛び掛ってきた。

 馬鹿でかい蛇がこちらへ突っ込んでくるのだからもちろん怖い。

 怖いのだがそれでも人間、何度も恐怖を経験すればそれなりに身体は動くもので……


「【弾跳】!」

 地面近くへ持っていった槍先からオーラを爆発させ、その勢いでヒドラの頭を跳ね上げたところで勢いを殺さずに一回転、ヒドラの首を切断する。

 ヒドラの頭と胴の両方から距離をとり動かなくなるまで待つ。

 しばらくバタバタと動いていたがものの数分で動かなくなるが一応確認のため槍で突いて死亡を確認したところでやっと息を吐く。

 我ながら慎重すぎると思うがここで油断をして痛い目を見たことは一度や二度ではない。


「ふう、どうにか何事もなく終わったな。帰るか」

 とはいえ、この馬鹿でかいヒドラを持って帰らないといけない。

 本来なら確認のための頭と売却用の皮だけでいいのだがコイツ人を喰っているので解体時に遺体と御対面となりかねないのだがそれは簡便願いたい。

 一応森の外に台車を置いてあるのだが、全部乗るかな?




「あー、疲れた」

 ヒドラの死骸を持って街を横断するわけにも行かないのでぐるッと回って東門まで台車を引いていたらもう夕方である。

 労働には十分すぎるだけの報酬は得たがもうヘトヘトである。

 今日は少しいいものを食おうかなと詰め所を出て思い出した。

「台車、返しに行かないと……」

 もうひと仕事か明日は休もう、とかそんなことを考えながら台車を引いて西門へと歩きはじめた。


この話のようなモンスター退治は普通の冒険者は4~6人のグループで行います。もちろん単独・少数でやる人がいないわけでもないんですがとても珍しいです。

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