街での日常
盗賊との戦いから半年、俺は現在ガーフォードの王都ガーフォークで冒険者をやっている。
冒険者とは誤解を恐れずに言うならチンピラ、ゴロツキ、もしくは日雇い労働者といったところだろうか。
普段は酒場でくだを巻き、荒事や雑用で日銭を稼ぐといったのが一般の認識でまあ社会の底辺といって差し支えないだろう。
俺はもう少しましだがモンスターを退治して報奨金を得たり、危険な場所へ赴いて希少な薬草などを採ってくることを仕事としている。
まあ周りからみれば俺もほかの連中と同じ扱いなのだろうが。
最近はレベルが100を越え随分楽になったし、収入は一般人よりは遥かに多いため少し高めの宿に泊まり週に2~3日ほど働くだけで生活が可能になった。
楽が出来るならそれに越したことはないしレベルが上がってもモンスターと戦うのは今でも怖い。
そんなこんなで俺は今、のんびりしながらこの異世界で生きている。
「じゃあお願いします」
鍛冶屋に槍の手入れをお願いして店を出る。
この槍はマルさんに貰った槍から数えて4代目で鋼銀を使用している。
鋼銀とは銀を使った合金で鉄のような粘りと鋼以上の硬度、魔法耐性を合わせ持ち霊的なモンスターに対しても有効な攻撃ができるという特殊な素材である。
欠点は重量がやや重いことと特殊な製法のため高価なところだ。
これ以上を求めるとなるとミスリルやオリハルコンといった一般には出回らないファンタジー御用達の魔法金属などになってくる。
いま身に着けている兜に胸当てと手甲、脛当てもこの鋼銀を使っている。
ほかの装備としてはナイフを数本と手斧を温度調節と防御力向上の魔法が掛かっているコートに収めている。
あとはマジックアイテムが数点、これに所持金などを入れるバックパックが俺の全財産だ。
マジックアイテムはライターみたいな着火棒や注いだ魔力分だけ水の湧き出る無限瓢箪のような日用品の延長物のほか、いちいち魔法を掛けて貰うのが面倒になったために買った言語翻訳のチョーカーみたいなものまであるがどれも高級品だ。
この半年での稼ぎの半分が装備を整えるのに消えた。
まあレベルアップに有利な能力を持っているため金策はかなり楽をさせてもらったと思う。
なにせ通常レベルアップするには教会か市井のレベルアップ精霊を持っている精霊付きにそれなりの金を払わないといけないので俺はその分節約できたことも大きい。
まあ最初の頃は何度か死に掛けたのもいい思い出だ。
とか考えている間に目的地についた。
「すみません、師範いますか?」
俺は仕事以外での数少ない習慣の一つとして道場に通っている。
ここは金さえ払えば冒険者でも教えを受けることができる。
ここでは武器を使った戦闘やモンスターから角やら毛皮やらの売れる部分、ゲームでいう素材の剥ぎ取り方法なんかを教えてくれる。
この世界、ゲームっぽいくせにレベルアップで自動的に技能を覚えるということはなく普通に勉強や練習が必要なのだ。
今まで武術の類は一切したことがないし、ほかにも色々教えてくれるため休みの半分はここで過ごしている。
「――498ッ、499ッ、500ゥ!終わりました!」
「よし、じゃあ次は【穿空】をやってみろ!」
「はい!」
この道場で俺は槍を習っているのだがその延長線上に基本的な動作である突き、払い、斬り、跳ねに対してそれぞれにゲームのような技が存在する。
【穿空】というのは槍術の突きの基本技だ。
通い始めて4ヶ月になるがどうにか使えるのがこの【穿突】と跳ねの【弾跳】の2つ、上位技はおろか払い、斬りはまだ基本技を使うことはできない。
「しかしよくそれで黒獅子を仕留められるもんだなぁ」
俺の【穿空】を見て師範も呆れた声で感想を告げる。
黒獅子とは街周辺での最強格のモンスターで力があり素早く動くため中堅のパーティでも油断できない相手である。
そいつを何とか退治できるのは俺のレベルが100以上あるからだがその実ステータス的には一般的な戦士のレベル50よりも低い。
ようは俺はレベル上限が高いだけの一般人で戦士職ではないため技の習得が遅いのではないかと思う。
決して要領が悪いとかセンスがないとかというわけではないはずだ。
「ありがとうございました!」
訓練を終え、道場を後にする。
もう夕暮れ時だ。
今日も新たな技を覚えることはなかった。
明日は働くかなと思いつつ宿へと向かった。
今回は主人公の装備と技能についての説明回です。
技能や技術もレベル制にするか迷ったのですが覚え方は現実と変わらないものとしました。




