襲撃
「おい、起きろ!!」
「うわっ」
えっ、ここは?
って、そうだ俺は昨日異世界にやってきてやっとの思いでたどり着いた町で一泊したんだった。
この兵士の人はたしかマルさんだったっけ、いきなりたたき起こすとは乱暴だな。
「起きたな。盗賊だ、手伝え」
「え?」
「盗賊だ、モンスターを町に放しやがった。武器はそこの貸してやる、終わったらまたメシ喰わせてやるから出るぞ!」
「え? え~」
俺はマルさんに引っ張り出されながら慌てて入り口に立ててあった槍を掴んだ。
「いや、防具とか、それに昨日言ったとおりモンスターに襲われ……」
「人手が足りないんだ、追い払うだけでいい!」
そう言うとマルさんは火の手が上がったほうへ走っていった。
それを見送って俺は……
「武器があるだけ昨日よりはマシか。一宿一飯の恩義もあるしな」
流されるようになんとなくマルさんの後を追う。
レベルアップの恩恵か先行していたマルさんや他の兵士の人たちにあっさり追いつくが現場にたどり着いた俺が見たのは地獄絵図だった。
燃え盛る炎、狼に似たモンスターに喰われる人々とそれを防ごうとする兵士たち……
「このおっ!」
怒りとも恐怖ともわからない感情を爆発させて俺は叫びながらモンスターに突っ込んでいく。
ドスッと手にモンスターの頭を貫いた感触が伝わる。
そこからは無我夢中で周りのモンスターがいなくなるまで俺は槍を振るい続けた。
武器のおかげか森での経験が生きたのか俺はかすり傷程度しか負わずに十数匹のモンスターを倒した。
どちらかといえば連戦による気疲れのほうが大きかった。
「やるじゃないか、ここはもう大丈夫だな。ほかの場所に応援に行くぞ、行けるか?」
「はあっはあっ、はっ、い」
同じような手順で何度か俺たちはモンスターを倒し、俺はその合間に隙をみて物陰でレベルアップして回復するという戦法を取った。
このまま順調に終わるかと思ったがそう上手くはいかないようで町の中心部にたどり着いた時それは起こった。
「どうした、ダイチ! 足が止まってるぞ!!」
「あ、う」
いや、だって……
「へへ、びびってやがる」
びびるに決まってるだろ!相手は人間なんだよ。
いや、最初に盗賊と聞いていた。
モンスターだって殺した。
死体だって見た。
けどそれはこの世界はどこか現実離れしすぎていてゲームみたいに感じていたから。
でも今槍を向けた相手の目を見て声を聞いた瞬間、気付いてしまった。
これは夢でもゲームでもなく現実でお互いに命のやりとりをしてるんだってことに。
「うらぁ!」
「ひっ」
思わず後ろに大きく飛びずさる。
だが、相手はおかまいなしに斬りつけてくる。
俺は近づかれないようガムシャラに槍を振り回す。
リーチはこちらの方があるから近づいて来れない。
いいぞ、このまま粘れば誰か他の人たちが来てコイツを倒してくれる。
多分そんな都合のいいことを考えていたからバチが当たったんだろう。
いつの間にか後ろから近づいていたモンスターに襲われた。
「うわっ」
モンスターは斬り殺したがその隙を突いて盗賊が近づいてきた。
「今だ!」
「来るな来るな来るな来るなっ!」
「あ」
パニックになりメチャクチャに振り回した俺の槍が盗賊の腹を横薙ぎにした。
「この……」
盗賊は俺を睨み付けなにか言おうとしていたが直後血を吐きそのまま崩れ落ちた。
このあとのことはよく覚えていない。
あとから聞いた話では俺は呆然とへたり込んでいたところを詰め所までつれてきてくれたそうだ。
盗賊たちは隣国から流れてきた傭兵くずれでこの町の兵士たちにも結構な被害が出たらしい。
欠員補充のため俺に兵士にならないかとマルさんたちが誘ってくれたが辞退させてもらった。
ならばと彼らは俺に盗賊撃退の報奨金として幾らかの金と先程まで使っていた槍を餞別にくれた。
今俺はもらった金で被害を免れた宿に泊まっている。
ベットの上で先程のことを考える。
盗賊を殺したとき、殺すこと殺されることの恐怖は感じたが死体そのものに対しての恐怖とか嫌悪感はなかった。
俺はどこかおかしくなってしまったのか、それとも前からだったのかそんなことを考えながら眠りについた。
異世界転移モノのお約束の一つ対人戦闘と価値観の破壊のお話です。
といってもラスト数行ですけど。
次は時間も飛んで半年後、この世界に慣れてきた頃の話になります。




