5-3 芽吹きの理由
しばらくするとカクがフードの人物達を数人連れて戻ってきた。
「どけどけ」
カクはそう言い俺を手で払うとフードの人物達と地面の土を掘り起こしている。
「何やってんだ」
「何で新芽が咲いたか調べてんだよ!」
カクの叫び声と同時に嫌な音が鳴る。
――カランカラン
魔物が街に来た合図だ。
俺はすぐに地面を蹴り音の鳴る方へ走り出す。
「レイルさん!」
「俺も後で行きます!」
音の場所へ着く前に何人かの組織の人間に話しかけられた。
音の鳴る場所へ到着するとフードを被った人物達がジオガンで応戦していた。
「レイルさん!」
フードの人物が俺の名を呼ぶ。
「どいて!倒すから!」
俺は腰の木刀を引き抜き、熊の見た目の魔物を叩き斬る。
――バン
熊の魔物は真っ二つになり、地面に落ちる。
熊の魔物からは淡い光と白い線が地面にこぼれ落ちている。
「すげー!俺初めて見たんです!」
フードの人物が俺の手を握る。
「そ、そう。とにかく無事で良かった」
「レイルさんが来てから誰も怪我人が出てないんですよ。もううちの組織ではその話題で持ちきりですよ!」
フードの人物は嬉々として話す。
「どれだけ強い魔族が来てもレイルさんが来たらすぐに倒してくれるって!どうしてそんなに強いんですか」
「どうしてって……脈気だよ」
フードの人物は地団駄を踏む。
「やっぱり秘密ってことですね!でも分かりました!警戒に戻ります!また魔族が現れたらよろしくお願いします!」
フードの人物は俺に手を振り街を覆うように取り付けられている柵沿いを走っていく。
「なんだよこいつら……」
新芽の咲いていた方へ帰ろう。
新芽の所に戻ろうと歩く。
フードの人物達が慌しく街を駆け回っている。
そんなにあの新芽に大騒ぎしてるのか。
少しおかしくて笑ってしまう。
「おいレイル!なにやってんだよ」
フウジが前方から駆け寄ってくる。
「なにって魔物倒してたんだけど」
「そんなことより!ボスが本部に居ないんだ!探すの手伝ってくれ!」
俺はフウジの肩を叩いて、新芽の所まで連れて行った。
新芽の周りへ着くと人集りができていた。
ガブが奥でフードの人物数人と何かを話している。
「おーいボス!」
フウジの叫びにガブは反応する。
「フウジか。お前もこっちこい」
「なんだよー、ボスー」
フウジは俺のことをほったらかしにしてガブの方へと向かう。
なんだよ。
俺だけ話に入れてないみたいじゃないか。
少し拗ねてしまう。
「レイル。魔族は倒してきたの?」
声のした方を向くとノアがいた。
いつの間にいたんだろう。
「うん。魔族は倒してきた」
「見てみたかったな。レイルが戦ってるところ」
「そんなのいつでも見せるよ」
その後もノアとくだらない話を続ける。
街のことや組織のことについて多く話したと思う。
「あっ、レイル待っててくれたのか」
フウジが帰ってくる。
「成り行きでだけど、そうなるな」
「私はみんなの話が終わるのを待ってたよ」
俺とノアは返事をする。
「待たせたな。今後の街について話していたんだ」
ガブが急に話に入ってくる。
「うわっ!ボス!どっから来たんだよ」
「ずっとお前の後ろにいた」
ガブはフウジの肩に腕を置く。
「部外者のお前達にも一応教えておく。この街にいるから一応な」
ガブはそう言って俺の目を見つめる。
「お前もさっき見たと思うが新芽が出た。これはこの街では初の出来事だ。新芽が出るというのは農業ができる証だ。最もお前達みたいに王国を知っている奴らからみたらそれがどうしたと言う話だろう」
新芽……農業……
じゃあみんな、農業ができるから喜んでたのか?
「お前達にとっては当たり前でもこの街にとっては大きな一歩だ。自給自足の生活が送れる可能性があるんだからな」
「そうか。よかったよ」
俺は微笑む。
ノアは不思議そうに首を傾げる。
「けど、その面積だけじゃ全然足りないよ?」
「ああ、これだけでこの街全員を食わせるのは不可能だ。だが、こうやって育てることができる。その事実だけで街の大勢は救われる。だから、俺たちは今日から少しずつだが、地下で暮らしている住人を地上に上げていくと決定した」
ガブが誇らしげに語る。
ノアは笑みを浮かべ聞いていた。
「よかったね。ガブさん。街が蘇って」
「なに言ってんだ。まだ蘇ってねぇ。始まったとこだ」
ガブも口ではそう言ってはいるが顔は笑っていた。
俺も二人の会話を聞いていると自然に笑顔になった。
コンガの街が少しずつだけど、確実にいい方向へ進んでいるような気がしたんだ。
――屑拾いの残響本部
軋む音をたてながら扉を開く。
「ここの扉、いつも音が鳴るね」
ノアが俺の隣を歩きながらそっと呟く。
「そうだな、ちょっとうるさいかも……」
「うるさくて悪かったな」
客人の間からケビンが現れる。
しかし、様子がいつもと違う。
杖をつきながら片足は包帯で固定されていた。
「ケビンさん……それは?」
ノアの言葉を聞いたケビンはニコリと笑う。
「これはこないだ地下へ降りる階段でコケてな。ダサくて誰にも言えなくて休みを取ってるんだ」
ケビンの笑った顔が作り笑いなのは俺でもわかった。
ノアもそれを察したのか作り笑いをする。
「じゃあ、今度は落ちないように気をつけないとダメですね」
「アハハ、そりゃそうだ」
ケビンは軽くノアとやり取りをして俺の前に来た。
「レイル、あんたに話したいことがある」
「ここで言えばいいだろ」
俺が軽く言うとケビンは小声で呟く。
「ちょっと二人だけで話したいんだ」
「客人の間で待ってる」
それだけ言ってケビンは客人の間の方へ去っていく。
「レイル、ケビンさんと何の話をしてたの?」
「ああ、なんか脈気でこの傷治せないかーって話だよ」
スッとボケる。
なんとなくだけど、素直に言わない方がいい気がしたから。
ノアは俺の顔を見て微笑む。
「そっか。変な話じゃなくてよかった。また、レイルが危ないことするのかと思ったから」
ノアはそう言って外へ向かっていく。
「どうしたんだ?本部で少しゆっくりしよう」
ノアは首を振る。
「ううん。今はみんなの幸せそうな顔見たいなって思ったからもう一度あの芽が出てるとこに行くね。レイルはしっかり休んどいて」
――ギィィィィィィィ
ノアが出ていき扉が閉まる。
「なんかノア、少し変わったのかな」
ふと呟く。
けど一人になれた。
ケビンの話ってやつを聞いてみようかな。
新芽を見て興奮してるみんなにはついて行けそうにないから。
俺は客人の間に入る。
ケビンはベッドの横に椅子を置き深く腰掛けている。
「早かったな」
「ノアがみんなの顔見たいって外に行ったから」
ケビンは俺の言葉を聞いて少し笑う。
何か企んでいるのか少しだけ警戒する。
「レイル、お前はもっと鋭くなったほうがいい」
「なんだよそれ」
「アドバイスだ」
ケビンはそう言いため息を一度つく。
「話って結局何だったんだ」
「ああ、そうだな。ちょっと長くなるから、ベッドにでも座ってくれ」
ケビンが椅子から立ち上がりベッドのシーツを手で払う。
「ほら、綺麗にしてやったから」
俺はケビンの言葉を不審に思いながらもベッドに座る。
ケビンは座った俺を見て、満足気な表情を浮かべる。
「何か企んでるのか」
「そんなのするわけないだろ……この怪我見てみろよ。お前に普通でも勝てないのにこんな状態でどうやって勝つんだよ」
ケビンは俺に反論しながら椅子に再び座り直す。
「お前を呼んだのは、新芽について説明してほしいからだ」
「新芽について……?」
新芽についての説明?
そんなの俺がしてほしいくらいだった。
そう思ったことだけははっきりと覚えてる。




