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銀の英雄と世界を覆う噓  作者: hini
4章 奪還編
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5-2 初めての緑

「いや!本当にあったんだよ」


フウジが俺に必死に説明してくる。


「けど、コイツは見てねぇって言ってるじゃねぇか。一緒のルート通ったんだろ」


ガブがフウジに対して言う。


「それはそうだけど……俺の目がおかしかったのか?」


「そうだろうな。色々あったからお前も疲れてんだ」


ガブがフウジを諭す。

なんでこいつらは草が生えてるか生えてないかで言い争ってるのか分からない。


「本当に生えてるかもしれないし。ガブさんは見に行かないの?」


急にノアが話に割り込む。


「そうだよ!確認しに来てくれよボス!」

「それで生えてなかったら俺の目が腐ってるってことでいいからさ!」


ガブは腕を組み唸る。


「確かにノアの言うことは一理ある。だがな、ケビンがちょっと休暇中で本部の情報の集約をしないといけない」


「なんだよケビンさん。こんな時に休暇って!」


フウジの言葉をガブは複雑な目で見ている。

ケビンに何かあったのだろうか。


「ボス。俺がかわりに見てきましょうか?」


本部の入り口の扉が軋む音を立てながら開く。


長髪の男。カクだ。


「カク。警備はどうした」


「マイカが張り切って俺とマルトは邪魔だからどっか行っとけって」

「マルトは真面目だから街の見回りをするらしいけど、俺はそこまでする体力はないので」


カクは俺の方を一目見る。

そしてすぐに目線をガブの方へ戻した。


「カクが来てあるって言うなら流石にボスも信じるよな!」


「ああ、カクなら信じれる。フウジと違って落ち着いてるからな」


フウジがガブとまた言い争いをしているのを横目にカクは俺たちの方へ来る。


「俺はまだあんたを信じてない。けど、ガブさんやフウジが信じてるようだから一旦敵意は捨てる」


カクは手を差し出してくる。

俺はカクの目を見て笑いながら手を握る。


「これからよろしくな」


俺の言葉を聞いてノアも頭を下げる。

 

「私もよろしくお願いします」


「ああ、よろしく二人とも」


カクはノアとも握手をする。


「フウジ!行こう」


カクが叫び本部から出ていく。

俺たちもカクの後をついていく。


「ちょっとカク!待ってくれよ!」


フウジも俺たちに向かって駆け寄ってきた。


俺たちは四人でフウジの草を見たという箇所へ向かう。

フウジとカクが前方を歩き、俺とノアは少し離れた箇所を歩く。


「ノアまでついてくる必要はなかったんじゃないか」


俺の問いにノアは少し目を逸らしながら答える。


「私もみんなと一緒に見たいんだ」


「そっか」


俺は特に何も聞かなかった。

ノアが興味を持つことならさせてあげた方がいい。

笑顔でいるのが一番だから。


「おいレイル!ノアさん!遅いぞ!」


フウジが俺たちの方を振り返り呼ぶ。

横にいるカクも振り返り止まる。


「先行っててもいいんだぞ」


「こういう感動的なもんってのはみんなで見るからいいんだよ」


フウジが叫ぶ。

何が感動的なんだろうか。

疑問に思った。


「そうだね」


ノアはフウジに優しく返事をして早歩きになる。

俺が歩く速度を変えないのを見てノアは手招きする。


「レイル!はやく行こ」


「おっ!ノアさんはわかってんな」


「フウジ。とにかくはやく行こう」


カクが先に進み始める。


「ちょっと待てよ」


フウジがカクを追いかけていく。

ノアは俺に手を振る。


「私も先に行っとくねー!」


ノアもそう言って走って二人を追いかける。

一体草の何がみんなをそんなに動かすんだろう。


俺はペースを少しだけ早めてみんなを追いかけた。


しばらくするとみんなが見えなくなる。

フウジの言っている草が生えている場所を俺は知らない。

困った。


「ほんとだったのかよ!」


カクの叫び声が近くで聞こえる。

俺は建物の隙間を駆け抜け声のした方へ行く。


そこはさっき見た白い線が絨毯のように広がっている場所だった。


「おいレイル!お前も見ろ!」


フウジが俺を無理やり引っ張る。

ノアの横まで連れて行き、手を離した。


「見ろよこれ!俺こんな綺麗な緑初めて見たよ!」


フウジが興奮気味に言う。

しかし俺には白いモヤしか見えない。


「レイル、ここだよ」


ノアは屈んで指を指す。

俺もそれに釣られて屈む。


それでも白いモヤのせいで何も見えない。

脈気って邪魔だな。

そう思った途端、目の前から白いモヤが消えた。


そして目の前には新芽が咲いていた。

辺りにはポツポツと新芽が咲いている。


「お、俺、ボスに言ってくる!!」


言葉に詰まりながら叫びカクが走っていく。

新芽が生えてるだけで大袈裟すぎるだろ。


「レイル!お前見えてねーのか!ここだよここ!」


フウジが俺の頭を押さえつけて新芽の目の前まで顔を持っていく。


「見えてるって」


「見えてんのか!普通もっと興奮すんだろ」


ノアが俺とフウジの会話を笑う。


「ふふっ。レイルはね、ちょっと常識がないの」


ノアにまで馬鹿にされる。

新芽に驚かない俺がおかしいのか。


「それは知ってるよ!こいつの強さも知識も何もかもデタラメだからな」


フウジがノアに向かって言う。

ノアはそれすらも微笑んで聞いている。


「俺も本部戻ってボス連れてくるから!そこで誰かが踏まないように見ててくれ!」


フウジはそれだけ言い残し走り去っていく。

なんなんだよあいつら。


「ねぇ、レイル」


ノアが話しかけてくる。


「なに?」


「新芽が生えただけでみんな大袈裟って思ってるでしょ」


なんでノアはピンポイントで当てれるんだ。

これもオーラ?とかいうよくわからない能力なのか。

 

「王国外の土地はね、基本的に自然はないの」


「なんで?」


素直な疑問だった。

確かに王国で座学を受けてた時に外の世界のことを教えてもらった覚えはない。


「それはね……わかんない」


「わかんないって……」


気まずい雰囲気が流れる。

何となくノアの方を見れない。


「私にも……レガルドの槍でも王国のことはよく分からないの」

「ただ、何かがあるから王国の外に自然はないんだと思う」


「けどエルド村には自然がいっぱいじゃないか」


俺の言葉を聞きノアが語る。


「そうなの。初めて見た時、私はあそこはおかしいと思った。けど、そんなの私にとってどうでも良かったから」


「そっか……」


王国外には自然がないのか。

それは知らなかった。

じゃあ何でここには新芽が生えたんだ?

分からない……


「おっ!マジであるじゃねぇか!」


ガブの声が後ろから聞こえてくる。


「言ったじゃないですかボス!マジであるんですよ!」


カクが嬉しそうに報告している。

ガブは俺の隣に座り込みジッと新芽を眺めている。


「おいカク!なんでここに新芽が咲いたか調べられるか!」


カクはガブの声を聞き姿勢を正す。


「調べられなくても調べます!」


「調べろ!!」


ガブは勢いよく叫んだ。

その声を聞いてカクは急いでまた、本部の方へ走っていく。


「ああ……」


ガブがらしくない掠れた声を出している。


「ガブさん。これで食糧は何とかできそうですね」


ノアがガブの顔を覗き込む。


ガブはノアの顔を優しく遠ざける。


「こんだけの土地じゃ足りねぇよ」

「ざっと横3m縦5mってとこか?これじゃ街のみんなを食わすことは無理だ」


ガブは続ける。


「だが、一歩前進した。これであいつらの危ない仕事も少しは減るな」


ガブが笑顔で呟く。


「なぁガブ。なんで新芽が生えたら食糧が何とかなるんだ」


疑問に思ったから質問する。

ガブは立ち上がり俺の目を見る。


「お前、本気で言ってんのか?」


「冗談でこんなこと聞くわけないだろ」


ガブは俺の返事を聞き深いため息を吐く。


「王国出身の奴らはこれだから嫌いなんだ」

「王国の外の土地に自然がないのはお前達でも流石に勘付いているはずだ。正しくは王国の外の土地全てではなく大部分だが……そこは、今はどうでもいい」


ガブはノアの肩を持ち俺の方へ押し飛ばす。


「一緒に聞けよ?俺は王国が何かしているんじゃないかと見てた。自然がないってことは農業や畜産ができないってことだからな。そういう凄い装置があって俺たちの生活を奪ってると推測してた。だが見ろよ。新芽が咲いた」


ガブは続ける。


「予測が外れて、王国がそんな卑怯なことはしてなかったのも嬉しいが、こうやってコンガの街に自然が生まれそうなことが俺は今嬉しい。お前達王国の人間には分からないかもしれないがな」


ガブはそう言って再び座り込み、新芽を優しい目で眺めていた。


結局、何で新芽が咲いたことが食糧解決に繋がるかはよく分からなかった。

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