4-25 同じ想い
「何してるんだ!」
俺はガブに向かって声を上げる。
「なにって…部外者から街を守ってるだけだ」
「どうして……誰からも脈気を感じないの……」
サラが震える声で呟く。
「お前、感知能力持ちか…」
ガブは高らかに笑いを上げる。
「ガハハッ!いいなぁ!龍脈兵器ってのは!」
笑いを上げている隙に俺はサラの元へ駆け寄る。
「大丈夫か?」
「まぁ…重症ってとこ…」
サラは立ちあがろうとする。
足の傷跡からは血が溢れ出す。
「んん!」
サラが歯を食いしばる。
「無理するな」
「何よそ見してんだよ!」
――ビュン
カクの方から紫色の線が俺の元へ飛んでくる。
片手を振り、軌道を変える。
――シュウ
天井に光は当たり木が溶ける音が聞こえる。
「カク…やめよう」
ケビンが手を広げている。
ケビンの後ろにいるノアは膝から崩れ落ちている。
こんな状況はやく終わらせないと。
「ねぇ……もうやめてよ……」
ノアの声が聞こえてくる。
彼女の顔には涙が浮かんでいる。
「みんな私のせいで傷ついて……」
「ああ、あんたのせいだ」
ガブが答える。
「あんたがハッキリと来るな。来るなら殺すくらい言わずに心の中で揺れているのが原因だ」
「何言ってんだ!」
これ以上、喋らせるとマズい。
「お前はボスに近づくな」
カクがジオガンをサラの方へ向けている。
遅れてマルトが俺の方へ向ける。
「馬鹿、横たわってる魔族の方に向けるんだよ」
カクがマルトのジオガンの向きを無理やり変える。
「ねぇ……じゃあ……私のしてたことってなんなの」
ノアがガブに問う。
「知らないな。守られているお前が勝手に守っている立場になったつもりでいただけじゃないのか」
「やめろ!」
俺が叫ぶ。
ガブは俺の方に視線を向ける。
「なんでコイツらここに来たか知ってるか?」
「お前を助けるためだ。お前みたいな商品としての価値しかない弱く脆い人間のために……」
ガブは俺の方へ手に抱えていた大砲を向ける。
「お前がコイツらをコンガから出ていくように説得しないなら、俺はコイツらを纏めて殺す」
「そんな……」
ノアの目からは涙が溢れ続ける。
「レイル……私はいいよ……」
サラは俺の方へ満面の笑みを向ける。
「今までサイコーに楽しかった。ノアをよろしく」
「なにいってるんだよ……」
俺はサラの言葉へ耳を傾けないように意識する。
「私から離れて……」
ノアが口にする。
「みんな出て行って!いますぐ!」
ガブはノアの顔を見てニヤついている。
「それは無理だ」
「お前はそう言うと思った!」
ガブが引き金を引く。
俺はサラをケビンの方へ投げ飛ばす。
サラの腹部の傷が風圧で開く。
床にはサラの血飛沫が飛び散る。
「死ね!」
ガブの叫び声と共に紫色の弾丸が大砲から発射される。
ジオガンの時とは比にならないほどの白い線が大砲から漏れ出ている。
「「レイル!」」
ケビンとノアの叫び声が聞こえる。
俺の視線にはもう紫色の弾丸しか映っていない。
――やるしかない
俺は片手で紫色の弾丸を脈気を使い受け止める。
――ジリジリジリ
脈気を纏っていても熱い!
兵器の大きなエネルギーを手に感じる。
あの白い線さえ取れれば!
「ぐっ!」
ガブが膝をつく。
「ボス!」
カクがガブの方へ駆け寄る。
――バァーン
紫色の弾丸が急に破裂する。
紫色の光は雪のようにこの空間に舞った。
「何が起きたんだ」
自分でもわからなかった。
俺の手を見ると火傷の跡。
白い線がやっと俺の身体に入ってくる。
「何をしたんだ!」
マルトが俺にジオガンを向ける。
自分でも何が起こったのかよくわからない。
「サラ!」
ノアが思い出したようにサラへ駆け寄る。
ケビンはノアにサラを預けるとこちらへ向かって歩いてくる。
「う、動くなケビンさん!」
カクがケビンの方へジオガンを向ける。
ケビンは迷わずにカクの前まで歩き、ジオガンを自分の額に押し付ける。
「カク……もう終わりだ」
カクの持つジオガンが震えていた。
「ケビン……!」
ガブがケビンの方を振り向く。
ケビンはカクの腕を下に降ろす。
「ボス……もういいでしょう。これ以上やると全員死にます」
「俺たちが居なくなったら誰がこの街を守るんですか」
ガブはケビンの言葉を聞き黙り込む。
「ほんとにいいのか?」
「ああ、いいんだ」
ガブはケビンの返事を聞くと静かに立ち上がる。
「お前が見つけてお前が連れてきた娘だ。お前の好きにしろ」
「俺もお前がこの街に賭ける想いを目の前の大金で見失っちまってたよ」
「ボス……ありがと」
ガブはケビンの言葉に親指を立て返事をし、ふらふらと本部の奥へと歩いていく。
「お前らはまだやるのか」
ケビンがカクとマルトに話しかける。
「僕は……もう辞めます。訳がわからないので」
マルトはそう言ってジオガンをポケットにしまう。
「俺は……」
カクが言葉を詰まらせる。
「ノア……無理させたね」
サラがノアの顔に手を当てている。
ノアの顔にはサラの血の跡がつく。
「ごめんなさい。サラ」
「いいのよ、これくらい」
サラがノアの腕の中で目を瞑る。
「ケビン、応急処置をしないと……」
ケビンが振り向く。
「そうだな。マルト!救急箱だ」
――カランカランカラン
本部の中に壊れた鈴のような音が鳴り響く。
この音は聞いたことがある。
「まずいな、魔族の攻撃だ」
ケビンが呟く。
「マルト、カク!お前ら行けるか!」
「僕はいけます!」
マルトは勢いよく返事をするがカクからの返事はない。
「悪いマルト、行ってくれ!後から俺も行く!」
ケビンはそう言って本部の奥の方へ走り出す。
マルトも同時に音の鳴る方へ走る。
「ノア!サラは任せた!」
「レイル……」
俺はノアの細い声に振り向かずにマルトの後を追った。
外に出ると夜なのにも関わらず月の光で思ったよりも明るい。
「レイルさん!どうして!」
「一人じゃ大変だろ!」
俺はマルトを掴み、背中に無理やり乗せる。
「ちょっと!」
「マルト!方角はどっちだ」
マルトは唾を飲み込み俺に指示する。
「こっちです。南の方角!」
「ちゃんと捕まってろよ!」
俺は地面を踏み込み、強く蹴る。
ビューという風を切る音と変化しない景色が続く。
しばらくして、壊れかけのボロボロの柵が見えた。
俺はそこで止まった。
「レイルさん…これ怖いです」
「そうか、ごめん」
俺はマルトを背中から降ろし前を見る。
目の前には多くの魔物達がいた。
大きな猫のような魔物。
人の顔にトカゲの体を持つ魔物。
牛のような顔で人の体を持った魔物。
挙げていけばキリがないほどの魔物の集団だ。
「応援か!助かる!」
横にはフードを被った男達が一生懸命にジオガンを撃っていた。
しかし、倒れている魔物が見当たらない。
「レイルさん!これ全部ジオガンの効かない魔物です!いくらあなたが強くてもこの数を一人は……」
「悪いけどこの柵、借りるな」
俺はそう言って目の前の柵の木を一本毟り取る。
――パキ
気持ちのいい音を立てて木が折れた。
「マルトは他の人たちを避難させてくれ」
「ここは、俺に任せろ」
「レイルさん!」
俺は地面を蹴り、魔物達の場所へ飛び立つ。
赤い目をした魔物達は俺の方へ一斉に手を伸ばす。
俺はその隙をついて木を振り回し、魔物達の身体を切り刻んでいく。
一体。
また一体と倒れていく。
数分暴れているとあんなにいた魔物が、全員動かなくなっていた。
「なんなんだアイツは」
「ジオガンも何もなしで……」
「マイカでも倒すのに一体数分はかかるぞ」
フードを被った人物達が俺に聞こえるくらい大きな声で話をしている。
「レイルさん……あなたは一体……」
マルトは俺の方を固まった表情で見つめる。
「そんなことより、いつもはこいつらどうやって倒してるんだ?」
辺りには夜の静寂だけが響いた。




