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銀の英雄と世界を覆う噓  作者: hini
4章 奪還編
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4-20 迷いの先で

――――――

 「ケビンさん、俺どうすれば良いんですかね」


俺は謎の人物に拘束を解かれた後、気付かない間に組織の本部へと歩いてきていた。


「フウジ。お前はよくやってる」

「きっと王国の手先と会話をしすぎて向こうの価値観にやられたんだ。しばらく休めよ」


ケビンさんはそう言って俺の肩に手を置く。


「いつも街を守ってくれていてありがとう。カクやマイカは気性が荒いから大変だろ」

「いつも、マルトから聞いてるよ。フウジは凄いって」


「ケビンさん……」


俺はケビンさんの目を見る。


ケビンさんの目は俺の方ではなくどこか遠くを向いていた。


「正直に話すと、俺ここにいても良いのか迷ってます」


「……なんでなんだ」


「レイルに触れてしまったからだと思います」


ケビンさんは上を向き天井を見る。


「そうか、触れちまったか」

「そこまで、お前は心を動かされたんだな」


俺は勢いよくケビンさんの方を見る。

ケビンさんも俺の方を見て作り笑いを浮かべる。


「じゃあさっきの俺が話したレイルが王国の手先だって内容もお前は信じてないわけだ」


俺は黙り込む。

実際そうだから。


「困ったな。これ以外の言い訳は考えてなかったんだ」


ケビンさんは頭を掻きながら座ったまま背伸びをする。


「ノアさんが'レガルドの槍'なのは事実だ」


俺はケビンさんの言葉を聞き背筋が凍る。

ノアさんが本当にレガルドの槍ならレイルも……


「だが、ノアさんは俺たちの仲間じゃない」

「王国へ売り飛ばす商品だ」


「商品?」


俺は言葉の意味を理解できなかった。

理解したくなかったのかも知れない。


「そうだ。彼女は行方不明の隊員だったらしくてな、送り返してあげるついでに王国からお金も貰って生活の足しにしようって作戦だ」


ケビンさんはにこやかに話す。


「けどレイルは、助けたいって言ってた」

「ノアさんは本当に王国に帰りたがってるんですか?」


ケビンさんは深いため息をつく。


「フウジ、お前いつからそんなに鋭くなったんだよ」


「ただ疑問に思っただけです」


「そうだな、ノアさんは帰りたがってる。だがあいつは行かせたくないんだろう」


ケビンさんは腕を組む。


「誰だって好きな人が遠くに行くのは辛いもんだ」

「俺だって、母さんがここで野垂れ死んだ時はこの現実を受け入れたくなかった」


「じゃあレイルは現実を受け入れたくないからここまでわざわざ追ってきたのか」


「俺はあいつじゃないから分からないがそうだろうな」


ケビンさんはゆっくりと立ち上がり、俺の前に手を伸ばす。


「ほら、疲れてんだよ」


俺はその手を取り立ち上がる。

まだ思考の整理がつかない。


「納得できたか。ノアさんのこととレイルってやつのこと」


「はい……」


俺はなんとなく返事を返す。


「お前は優しいからみんなを守りたいのは分かるが、出来ることと出来ないことはあるんだ」

「今回の件で言うとレイルはノアさんの決意を変えれないから諦めるしかないんだ」


ケビンさんはそう言うと本部の外に出ていく。


外からは組織の奴らの声が聞こえてくる。


「ケビンさん、今から仕事ですか?」

「今日も街のために頼みます」

「今度、俺とも面談してください」


色々な声が聞こえてくる。


ケビンさんの言ってた話を疑っているわけではない。


けど、やっぱりレイルのあの真っ直ぐな目が俺の心のどこかに引っかかる。


「おい、フウジ!」


肩を叩かれる。


振り向くとカクが立っていた。


「大丈夫だったか?あいつ怪しいと思ってたらやっぱり敵だったか」


カクが俺のことを心配してくれる。


「心ここにあらずって感じだが大丈夫か」


「ああ……大丈夫……」


カクは俺の顔を見て、顔を顰めた。


「大丈夫じゃねーよ。フウジはいつもはもっと明るいだろ」


「いや、今も充分明るいさ」


俺はゆらりゆらりと前に進む。


「ちょっとフウジ。そっちは客人の控え室だからまずいって」


カクは叫びながら俺を止める。


――客人の控え室?

コンガに今きてる客人。

そんな人物いるのか。


「カク……」


「どうした、フウジ」


カクは俺の肩を持ち前に進まないようにする。


「今来てる客人って誰なんだ」


「今は客人なんていないだろ」

「正直、こないだできたこの部屋だけど無駄な部屋だと思うよ。こんな街に客人なんて来ないしな」


直感だけど、ここに答えがある気がした。


「そうか、ありがとう」


俺はそれだけ言い残し、本部の出口へと歩いていく。


「なあ、今日は地上のフウジの家じゃなくて地下で寝ろよ」


カクが俺を引き止める。


「ほら、マルトも心配してたし、マイカだっていつもあんな感じだけどきっとお前が落ち込んでるのを見たら――」


「ごめん、今日は一人がいいんだ」


「フウジ……」


カクが俺の名前を小さく呟いたのだけ聞こえた。

俺はそれを無視して地上の家へと帰宅して、夜の準備を整えた。


――

辺りはすっかり暗くなり、街には月の光すら届かない。


「行くか」


俺は頬を叩き自分を奮い立たせる。


今からやることは冗談では済まない。

バレてしまったら組織から追い出されるかもしれない。


考えると怖くなる。


けど、進むのを止められない。


俺は家のドアを開き外へと出る。


ヒューヒューとひんやりとした風が吹く。


俺はゆっくりと組織の本部の方へと歩く。


何も考えずに歩いていると本部にはすぐに着いた。


俺は正面の扉を開き、中へと入る。


「誰かいるかー」


誰からも返事は返ってこない。


俺は人がいないことを確信すると客人の部屋と言われていた部屋の方へ走る。


本部は広間、会議室、武器庫くらいしかない。

その狭い本部の中にわざわざ客人の部屋を作るなんて変だ。


俺は客人の部屋の前へとくる。


「何してんだ」


背後から声をかけられる。

振り向くとボスがそこにいた。


いつものマントを羽織った姿ではなく、シャツ一枚だ。


「ボスこそ、何してるんですか」


「今後の活動の予定を上層部で決めてたんだよ」


ボスはそう言うと俺から離れていく。


「まあ、なんでもいいけど客人の部屋に入るなら覚悟決めろよ」


「どう言うことですか……」


ボスは何も言わずに俺の視界から消えていった。


言葉の意味はわからない。


けど、覚悟なら決めてきたつもりだ。


俺は恐る恐る客人のドアを開く。


――ギィギィー


ドアが唸りを上げながら開く。


甘い香りが鼻に突き刺さる。


この街で嗅いだことのない匂い。

 

ランタンの下のベッドに腰を下ろしている青髪の女性がいる。


「だれ?」


女性は俺に驚いている。

体がピクリと動いた。


俺は唸りを上げて開くドアを無理矢理閉める。


――ガタン


一瞬の静寂が俺と彼女の間に流れる。


「俺はフウジ」


「フウジ……?」


女性は俺の言葉を繰り返す。


「俺は、君のことが知りたくてきた」


女性は俺の言葉を聞くと布団に視線を落とす。


「私は知ってほしくないから帰って」


俺は女性の方へ近づく。

女性はチラチラとこちらを見て目で怯えているだけで何もしない。


「レイルって男、知ってるんだろう」


「知ってたらなにかダメなの」


「やっぱり知ってんだ……」


ケビンさんはレイルはノアさんの意向を無視してると言ってた。


「レイルのこと、どう思ってる」


「……あなたに言うことじゃない」


彼女の反応を見ていると俺の予感がどんどん確信に変わっていく気がする。


「実はな、教えてもらいたくてきたんだ」

「レイルって男はいつもあんなに真っ直ぐなのか」


彼女は俺の言葉を聞いて目線を上にあげる。

俺の目を見る。


「レイルはね、真っ直ぐでいつだって誰かのために動くんだよ」


「じゃあレイルは嘘をつくような奴じゃないんだな」


彼女はハッと目を見開く。

そして、再び視線を下に向ける。


「いや、レイルはそんなに真っ……すぐじゃない……よ」


分かりやすいやつだ。


「いや、そんなことない。レイルは真っ直ぐな男だった」


彼女がまた、こちらを向く。


「君の名前は」


俺の問いかけに彼女はゆっくりと答える。


「ノア。レガルド王国第六戦略支援部隊のノア」

「レガルドの槍の一人……」


この言葉で俺のさっきまでの確信は消え去った。

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