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銀の英雄と世界を覆う噓  作者: hini
4章 奪還編
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4-19 選ぶ覚悟

「ここが俺の家だ。まぁ勝手にそう思ってるだけなんだけどな」


フウジに案内されて俺とサラは先ほどの場所から少し離れた建物の中へ入る。


中はよく掃除されており、荒れている他の建物とは明らかに違う。


「まあそこ座れよ」


俺はフウジが出してくれた椅子に座る。


サラも俺が座ったことを確認してからゆっくりと座る。


「姐さん、あんたも本当にレイルの仲間だったんだな」


フウジは少し暗い声で話し始める。


「あれ?私あなたに会ったことあった?」


サラはとぼけたように話す。


「ああ、姐さんに椅子に縛り付けられたよ」


「ハハ、ごめんねー。色々な人にしてたからさ」


そんな情報の集め方をしていたのか。


「まあ、そんなのはどうでもいいや」

「レイルと姉さんはノアさんを探してこの街にきたんだろ」


「そうだけど、フウジはノアのいる場所を知ってるのか」


フウジは少しだけ間を空ける。


「ああ、知ってる」


その言葉を聞いて、俺は自然と笑みが浮かぶ。


これでノアを救える。

サラの方を見ると驚いた表情をして固まっていた。


「フウジ、ありがとな!」

「それでどこにいるんだ」


「それはまだ言えない」


「まだ言えないってそれどーゆーこと!」


サラが声を大きく上げる。


「俺はノアさんのこともレイルのことも何も知らねぇ。だから教えてくれ」

「俺は自分の目で見て判断したいんだ」


フウジが真っ直ぐに俺を見つめる。

その真っ直ぐな瞳に濁りはなかった。


「そんなこと後でいくらでも話してあげるから先に教えて!」

「ノアを助けるのが手遅れになっちゃう」


サラがフウジに言うがそれを無視し、俺だけを見つめている。


「レイル、頼む。俺も後悔したくないんだ」


今にもフウジに飛びかかりそうなサラを手で制止する。


「サラ、また俺を信じてくれ」


「もしかして、この金髪の言うようにコイツの選択を待つわけ?」


俺は静かにコクリと頷く。

サラは椅子から勢いよく立ち上がり、俺の方を見る。


そして、勢いよく椅子に座り直す。


「もー、どうせ私には選択肢なんてないよ」

「だって私は人間じゃないから人の気持ちなんてわかんない。でも、レイルのことは信じてみるよ。このせいでノアを救えなかったら覚えといてね!」


サラは早口でそう言うと椅子に深く座る。


「悪いな」


「気にするなよ。何から知りたいんだ」


フウジは俺と向かい合うように椅子を持ってきて置き、座る。


「そうだな。お前達がノアさんのことを大切だと思っているのは二人の会話とさっきのおっさんの態度でよくわかった」


フウジは続ける。


「けどさ、命をかけてまで助ける理由は何なんだ?」

「それほど大切なのか」


少し考える。

けど、考えたって言葉は出てこなかった。


しばらくの沈黙の後、俺は無理やり口を動かした。


「ノアは、そうだな。仲間でもあって俺にいつも大切なことを教えてくれる師匠でもあって優しく包み込んでくれる子だ」


俺は一度深く呼吸をし、息を整える。


「昔、俺が壊れそうな時彼女は俺に生きる理由をくれた。その時から俺は彼女に救われてきたんだ」


話しているうちになんとなくだけど答えが見えてくる。


「だから、俺は彼女に幸せになって欲しい。俺を救ってくれた彼女を幸せにするためにここから連れ出す。それが助けにきた理由だ」


フウジは俺の答えを聞き深く頷く。


「助けにきた理由はこれで終わりか?」


「今の言葉に全部込めた」


俺が短く答える。


「そっか……じゃあもう一つ教えてくれ」


フウジは暗い顔をして続ける。


「レイル。お前は大切な仲間が自分を守るために傷ついてるとしたらどうする」


「そんなの許すわけないだろ!自分の身体を大切にしろって言うに決まってる」


フウジは俺の答えを聞いて静かに笑う。

サラもフウジが笑うのを見て少し笑みを浮かべる。


「やっぱりそうだよな。レイルは任務のために嘘をつけるやつじゃないよな」


フウジは静かに笑う。

目からは涙がうっすらと出ている。


「姐さんも一緒なのか」


「私の場合は少し違うけどね」

「けど、私もノアには幸せになって欲しいと思ってる。彼女には普通じゃない包容力があるから」


サラの声を聞いてフウジは立ち上がる。


「これじゃ、ダメだったか」


フウジは俺の問いに答えずに階段で上の階へと昇っていく。

俺はサラの方を見る。


「サラ、俺ってダメだったのか」


サラは俺の顔を見て小さく微笑んだ。


「バカねー、まだわからないの」


しばらくするとフウジが階段を降りてくる。


「ほらよっ」


 2本の瓶に入った水と2片のパンが飛んでくる。

 俺はそれを掴みとる。


「食えよ、それ」

「何も食ってないんだろ」


 サラは俺の手から水とパンを一つずつ奪い取り食べ始める。


「姐さん獣かよ」


サラはすぐにパンを食べ終えると水も一気に飲み干した。


「獣って失礼ね。私これでもお嬢様なんだからね」


「へー、そうなんだ」


興味がなさそうにフウジは聞き流す。


「ちょっと、本気なんだから」


「それより、レイルもはやく食えよ」


サラの言葉を無視してフウジは俺に話しかける。


「ああ、ありがとう」


俺はパンを一口かじる。

久しぶりの飯だ。

うまい。


「もう、私がお嬢様なのは信じなくていいよ!」


サラが少し怒りながら言う。


「ところであんた、レイルがノアのことを教えたんだからあんたもノアのことを教えなさいよ」


サラが指摘する。

俺も続く。


「そうだ。パンと水をくれたのはありがたいけど、俺たちが知りたいのはノアのことなんだ」


フウジが俺の目を見る。


「話すから待てって」

「ノアさんの話をする前に二人には聞いて欲しい話があるんだ」


「あんたの人生相談なんかはいやだからね」


サラがフウジに釘を刺す。

フウジは苦笑いをする。


「人生相談か。そうだな、人生相談かも知れない」

「けど、これはノアさんにも関係のあることだ」


俺はフウジの言葉に息を呑む。


フウジの言葉にはさっきからずっと圧があった。

文句しか言わないサラもその圧に黙っている。


「俺は'屑拾いの残響'は良い組織だと思ってる」


フウジの言葉にサラは拳をギュッと握りしめていた。

それはそうだ。屑拾いの残響は俺たちからノアを奪った悪なんだから……


「俺もこの組織に長いこといるがそれを誇りに思ってた」

「この貧しい街のために、裕福な人達から少しの幸せを分けてもらう。やってることは盗みだけど、それでも誇りに思ってたんだ」


フウジは一度呼吸を整える。


「レイルがこの街に来るまでは、俺の中で'屑拾いの残響'って言うのは英雄だったんだ」

「その中でもボスに近くていつも自分の取り分すら街のために使ってるケビンさんは憧れだった」


「それで?今のところは自分の悪行を正当化してるだけよ」


サラが口を挟む。

フウジはその言葉を聞いて目を瞑る。


「ああ、そうかも知れない」

「それでも、俺にとってはこの街を守っているケビンさんは英雄だったし組織も正しいと思ってたんだ」


フウジは俺の目を真っ直ぐ見る。


「けど、レイルの想いに触れて気づいたんだ。俺たちは、他人の大切な物も今まで奪っていたんじゃないのかって」

「当然だけど、生きるためにある程度相手に被害を与える覚悟はしてた!けど、実際にそうなるとどうすればいいか分からなくなって……」


「弱いわね、あんた」


サラが短く言う。


「ああ、姐さん。俺は弱い、一人じゃ怖くて何もできなかった。決断できなかった」


「ずいぶん素直なのね」


フウジはサラの目も真っ直ぐに見つめる。


「なになに、急に見ないでよ」


「一人じゃ決めれないから、レイルがあんなに守りたがってたノアさんに会いに行ったんだ。俺たちの組織が何をしているのか」


「話がわからないわよ」


サラが困惑する。


「俺たちの組織は人攫いなんかしない。だって今まで俺がしたことなかったから!けど、レイルはノアさんを探してこの街に来て、実際にノアさんはこの街にいたんだ」


フウジは唇を少しだけ噛み締める。


「俺は、自分自身に誇れることをしていたい。自分の幸せのために他人が傷つくのはいやなんだ」

「だから……だから、俺はノアさんに話を聞きに行った」


フウジの言葉が徐々に大きくなっていく。


「組織が間違ってるのか俺が間違ってるの確認するために……」

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