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銀の英雄と世界を覆う噓  作者: hini
4章 奪還編
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4-18 正しさの形

「この野郎――」


カクが俺の方へ数歩進み止まる。


「ご、ごめん……」


声のした方を向くとサラがマルトを両腕で掴み拘束していた。


「長いやつ、そこから動いたらこの子の腕を折るよ」


「チッ。キモい女だ」


カクは捨て台詞を吐いてナイフを地面に投げ捨てる。


ナイフを投げ捨てたのを確認してから俺もカクを拘束する。


「覚えとけよ……レガルドのゴミが……」


サラは腰から紐を取り出しマルトを縛り付け、牢屋の中へ入れる。


「ごめんね。そこの倒れてる奴が起きたら助けてもらって」


サラはマルトにそう言い俺の方へ来てカクのみぞおちを殴る。


「うっ……」


カクはその場に倒れ、動かなくなる。


「何してるんだ!」


牢屋の中からマルトの声が聞こえてくる。


「そこまでしなくてもいいだろ」


「ダメ。人に狂気を向けるような人は優しくできない」


サラは俺の目を見て真っ直ぐに言う。


俺はその気迫に押されて言葉が引っ込んだ。


「レイル、足縛って。私は手の方縛るから」


サラは冷静に言うとそのまま無言で縛り始めた。


俺も一緒に縛る。

牢屋の中へ入り、何重にも重ねてカクを縛り上げた。


マルトは俺とサラを睨みながら見ている。


「あんた、自分は悪くないって思ってるでしょ」


唐突にサラがマルトに語りかける。


マルトは睨みつけているだけで返事をしない。


「守りたいものがあるのに力がない。それは悪いことなの。残酷だけど、これが世界。だから、私たちがノアを助けてここがどうなっても後悔しないでね」


サラはそう言い残し牢屋から出ていく。

俺は一瞬だけマルトの方を見てから、サラへ続いて牢屋から出ていった。


「じゃあ、行こっか」


サラはいつものように明るい声に戻って俺の前を歩いていく。


サラの背中がいつもより小さく見えた。


きっと、サラも無理をしているんだろう。


「私は魔族!ノアを殺そうとした“敵”!村にとっての悪者でしょ!」

「まさか私の演技を信じてた?いい魔族だとか、仲間だとかさ!」

「人間ってほんと愚か。あんな弱っちい村、好きになるわけないじゃん!」

「……帰らない」


サラがエルド村から出て行った時のことをふと思い出す。


あんなに優しいサラをここまで冷酷にするケビンを許せない。


しばらく歩くと街の居住区に出る。


相変わらず居住区には人が点々と存在していた。


「ねぇレイル。この街、どう思う」


サラが立ち止まり、語りかけてくる。


俺は答えを考えサラの横で立ち止まる。


「いい奴もいれば、悪い奴もいる。そんな街だと思う」


俺の答えを聞いてサラは呆れたように笑いゆっくりと歩き始める。


「そんなことを聞いたわけじゃないんだけどね。まあ、レイルらしいよ」


サラはそう言いながら街の人々の顔を眺めていく。

その顔は死地へ向かう兵士を見送る、母親のようだった。


「サラ――」


声をかけようとしたその瞬間。

地下にベルが鳴り響く。


「ケビンさんが今日の仕事から帰ってきたぞ」


髪の薄いおじさんが地下を駆けながら叫んでいる。


住民達はその声を聞き、のそのそと立ち上がる。

そして全員、同じ方向へと歩いて行く。


「ケビンって聞いたか!」


俺が興奮しながら叫ぶとサラは耳を抑える。


「聞こえたから私の耳元で叫ばないで。やっと見つけたわね」


サラと俺は人が集まる一つの階段へと向かって走って行く。


階段を駆け上がり俺たちは地上へと出る。

地上には多くの人が集まっていた。


「階段の先で立ち止まるな。みんな感謝したいんじゃ」


俺が建物のドアで立ち止まっていると老人に押され建物から出される。


俺は老人に押されて地面に転ぶ。


サラは転んだ俺を無視して建物の横に置いてあった壊れかけの樽の上に乗る。


「あれがケビンってやつね」


サラはそう呟いていた。


俺も立ち上がり、サラの横へ行く。


「サラ、今がチャンスだ。今ここでケビンにノアの居場所を吐かせよう」


「馬鹿ねぇ、こんな相手のホームグラウンドで襲うって馬鹿じゃないの。私はもうこれ以上脈気使えないからね」


サラが俺に説教をする。


「ケビンさんいつもありがとう」

「ケビンさんみたいになれるかな」

「いつも私たちなんかのために恵んでくださりありがとうございます」


至るところからケビンへの感謝の声が聞こえてくる。


「なあサラ、ケビンって悪い奴じゃないのか」


「悪い奴でしょ、ノア攫ったんだよ?」


サラは周りを観察しながら返す。


悪い奴でもこんなにみんなに感謝されることがあるのか。

不思議に思った。


「きゃー」


甲高い声が響く。


「なにやってんの」


サラが呟く。


「ちょっとサラ、俺にも見せて」


サラが乗っている樽に無理やり登り、サラを地面へ落とす。


ケビンの方を見ると、ケビンの前にはクロールが立ち塞がっている。


「おいてめぇ、うちの村のヒロイン無事だろうな」


クロールの発言に周囲がざわつく。


「まあまあ落ち着いて」

「みんな、この方はボスが保護した客人なんだ」


ケビンは住民達を宥める。


「俺は男のことなんて興味はないんだが、うちの可愛い村娘を勝手に連れて行った駆け落ち野郎は別でな」


クロールはそう言うと胸ポケットからジオガンを取り出しケビンに向ける。


「どこでそれを」


ケビンが少し後退りする。


「素敵な場所に落ちてたんでもらった」

「ノアの場所、教えてもらおうか」


クロールがケビンにジオガンを近づける。


「やめろ余所者」

「恩知らずが」

「助けてもらってそれはない!」


クロールを貶す言葉ばかりが飛んでいく。


「みんなそこまで言わないでいい。きっと彼は錯乱してるだけなんだ」


ケビンが叫ぶ。

しかし、その声は誰にも聞こえていない。


「ノアの場所を教えないなら残念だが俺のストレス解消になってくれ」


――ガーン


砂煙が上がる。


「グホッ」


何かが地面と激突するとクロールは吹っ飛びジオガンが手から離れる。


砂煙の中から真っ白な髪の女性が現れる。


「ジジイ、ケビンさんにジオガンを向けるなんていい度胸だね」


クロールはゆっくりと立ち上がり、白い髪の女と対峙する。


「ありがたい。おじさんと戯れるより女の子と戯れる方が好きなんでな」


呼吸を整えながら話す。


クロールに勝ち目なんてない。

助けに行かないと。


俺が樽から飛び降りるとサラが俺の腕を引っ張る。


「どこ行こうとしてるの」


「どこって、クロールのところに決まってんだろ」


俺はそう言うがサラの手が離れない。


サラは首を振る。


「ダメだよ、今出て行ったら私たちまであの女にやられちゃう」

「あの女の脈気、すごく感じるんだ。きっと今の私たちじゃ勝てない」


「けど、行かないと……」


俺は立ち止まる。


今行って、全滅してしまったらもうノアを助けるチャンスはきっと来ない。

 

でも、ここで出なかったらクロールが……

どうすればいいんだ。


「レイル、ここは堪えてクロールに任せよう」


「グオゥ」


クロールの声が聞こえる。


「大口叩いてた割にこんなもんなの?」


さっきの白い髪の女性の声も聞こえる。


「へへ……ずいぶん強いな。姉ちゃん」


「あんたが弱いだけだよ」


――ダン

 

「グァァァァァァ」


クロールの悲鳴が聞こえてくる。

俺は唇を噛み締める。


「マイカ、そこまででいい」


ケビンの声が聞こえる。


「ダメでしょケビンさん。コイツはあなたの命を狙ったんですよ」


「錯乱状態だっただけだ。それ以上痛めつけても何の意味もない」


ケビンが諭す。


「じゃあ最後に一発だけ」


――ダン


次の一撃では、クロールの悲鳴は聞こえなかった。


「マイカやるな!」

「さすがうちのエース」

「屑拾いの残響の最強!」


住民達からは歓喜の声が沸く。


ここで俺の中の何かがプツっと切れた。


「ねぇ、レイルどこいくの」


サラが俺の腕に纏わりついてくるのがわかる。

けど、俺は歩き続ける。


「ねぇ、ダメだって。行ったら終わっちゃう」


サラの声は届いている。

けど、足が止まらない。


「俺も手伝うよ、怪しい姐さん」


俺の足の歩みがピタッと止まる。


「あんた、何が目的」


サラが低い声で問いかける。


「俺はただ知りたいだけだ。お前達がなんなのか」


後ろを振り向くとそこには、金色の髪を輝かせた男が立っていた。


見たことのあるその顔に俺は妙に安心した。

まだ、知り合って少ししか立っていないのに。


「レイル、ノアさんのこと教えてくれよ」

「俺もノアさんのこと教えてやるから」

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