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銀の英雄と世界を覆う噓  作者: hini
4章 奪還編
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4-17 最終日

「おい!……」


誰かの声が聞こえてくる。

なんだか頭がフラフラする。


「……としないと……間に……」


うるさいなぁ。

どうしてこんなに今日は外がうるさいんだ。


「間に……ノアがいな……」


ノア?

そういえば、俺は今ノアを探すためにコンガに来たんだった。

コンガにきてからどうしてたっけ?

頭の中を必死に探る。


「さっさと起きないとノアが本当にどっかに行ってしまうぞ」


誰かの怒鳴り声で目が覚める。

目を開いた先には石でできた椅子に座っているクロールがいる。


「ノアがどこかにいくってどう言うことだ」


俺はクロールの方へ向かう。

 

――カシャーン


なにか金属音が俺の背後から聞こえた。

そして、クロールの所へ進もうにも腕が邪魔してなぜか前に進まない。


「やっと起きたかレイル。まあ落ち着け」


クロールは俺が起きたのを確認して足を組む。


「ノアが危ないんだろ!はやく行こう」


カシャンカシャンと背後から音が鳴る。

そんな俺をクロールは呆れた表情で見つめる。


「わかったから落ち着けよ。とりあえずうるさいからさっさとその鎖を脈気で破壊しろ」


そうか、脈気だ。

ノアのことで頭がいっぱいになり忘れていた。

俺は腕に脈気を集める。

勢いよく手を引く。しかし、鎖はカシャンと金属の冷たい音を鳴らすだけで切れない。


「おいおいマジかよ」


クロールは足を組むのをやめ、俺の方へ歩いてくる。


「なんで!なんでなんだよ」


力尽くで鎖を外そうとするが無理だ。

ただうるさい金属音がこの空間に響くだけだった。


「はぁー、こりゃあ万事休すだな。助けてくれーって感じだ」


クロールはその場に倒れ込んだ。

地面は石でできており俺の鎖は鉄格子に溶接されている。


「ここってなんだ。なんで牢屋みたいなとこにいるんだよ」


周りを見て取り乱す俺をクロールが宥める。


「牢屋みたいな場所じゃなくて牢屋だ。ったく、ボロボロの街のくせにこういうところだけには金かけてるな」


クロールはぶつぶつと牢屋に対する文句を呟いている。

けど、こんなとこで道草を食っている場合じゃない。ノアが危ないんだ。

俺は腕が引きちぎれるくらい力いっぱいに鎖を引っ張る。

鎖が腕に食い込んでくる。

冷たい金属が、力強く皮膚に押し込まれていくことで熱く感じる。

何度も何度も挑戦する俺をクロールはただ黙って眺めている。


「なぁクロール。なんかないのかよ」


俺が必死に足掻いているのにクロールはまだ寝転がっている。

それに段々とイラついてくる。


「レイル。もう足掻いたって仕方ない。お前の脈気が回復して、その鎖を壊せるようになるまで待とう」


クロールは呑気なことを言う。

そんな時間があったら俺もそうしてる。


「嫌だ。ノアを助けるんだ!」


「レイル、お前何か忘れてないか」


クロールが俺に問いかけてくる。

俺はこの質問をきいて動きをパタリ止めた。

こういうことを言う時のクロールは頼りになるとここまでの旅で学んだからだ。


「俺たちにはまだサラがいる。あいつはお前と違って賢いからなんとかしてくれるだろ」


クロールは石の椅子の上へと移動し、横になって寝転がった。


「何を言うかと思ったら、サラ任せってなんだよ」


俺は急に力が抜けて鉄格子にもたれかかる。

自分でも出来ないのはわかってる。

鎖を腕で引きちぎるのなんて不可能だ。

俺は諦めて目を瞑った。


――ガンガン


何かが鉄を殴るような音がする。


「―たい――と――――」


甲高い声が鉄格子の先にある鉄の扉から聞こえる。


「お、きたな」


クロールはそういうと起き上がり石の椅子に座る。


「来たって――」


――ドガーン


鉄の扉が倒れる。

扉の奥には暗闇と人影が見えた。


「もう!本当に信じられないよ」


サラは手の甲を摩りながら俺たちの鉄格子へと歩いてくる。


「なんで人間ってこんなに使えないのかな……」


「人間が使えないんじゃなくて俺は歳をとってるだけだ」


クロールがサラに言い返す。


「はいはいそうですよねー」


サラは軽く返事を返すと鉄格子を掴む。


――ギィィィ


金属音を立てながら鉄がキャンディのように曲がる。


化け物だ。


鉄格子を無理やり広げる。

人一人が通れるスペースができた。


サラが鉄格子の中に入ってくる。


「サラ、すまないな。ちょっとあれだよ、手違いで捕まっちまってな。あはは、はは……」


サラはクロールを蔑むように見る。

そして、鎖に繋がれている俺を見る。


「ねぇレイル。クロールがここから出れないのは分かるけどなんであんたも出れないわけ?」


何か怖い。


「脈気が出なくて……」


サラは頷く。

 

「確かに、あんたの脈気がこんなに小さいのは初めて見たかも。今なら私の方が多そう」


サラはそう言って俺の鎖を引きちぎる。


――パァン


金属でできた鎖から破裂したような音が出る。


「やっぱ、脈気使うと楽ちん」


サラはそう言って俺に手を伸ばす。


「ノア、助けるんでしょ?」


俺はその手を握り返す。


「当たり前だろ」


「じゃあ、最終日。いっちょ派手にやりますか」


クロールが背伸びをしながら言う。


――ドタドタ

足音が近づいてくる。


牢屋の出口を見る。

その時には既にフードの男が俺たちの前にいた。


「誰だ」


フードの男がそう言った瞬間。

サラの拳が男の急所を目掛けて繰り出される。


サラが腕を引くと男はその場に崩れ落ちていった。


「おいおい、こりゃ死んだぞ」


クロールが鉄格子からゆっくりと出る。

俺もクロールに続く。


「死んでないわよ。殺すのは後味悪いし」


「いや、男として……」


「そんなことより、ノアをはやく助けよう」


俺はそう言って牢屋から出る。

そこには、明かりも何もない。

真っ暗で長細い空間がどこまでも続いていた。


「なんだここ」


「ここはね、コンガの地下」


サラが俺の背後から話す。


「あんな街にこんな地下がねぇ」


クロールはそう言って胸ポケットを探る。


「ねぇレイル。ノアとは会った?」


「ああ、ノアとか――」


俺の脳内に鮮明な映像が現れる。

俺はフウジに連れられてケビンと会ってそこでノアとも会って……


ダメだ。これ以上は思い出せない。


俺が頭を抱えているのを見てサラが心配そうにこちらを見てくる。


「レイル大丈夫?」


「ああ……大丈夫……」


頭を抑えながら前を見る。

とにかく、ノアの元へいかないと。


「おっちゃーん。耳遠くなったのかー」


細い道の奥から声が聞こえてくる。


「俺はやばそうだから先、走っとくな」


クロールはそう言い残し俺たちを残して背後の方へと走っていった。


「ねぇ、レイル。私たちも行ったほうが良くない?」


サラがそう言った時には既に遅かった。

前からは二人の人影が見えた。


一人は長髪の男。

もう一人は背の低い男。


間違いない。


俺はこいつらを知っている。


「チッ。フウジに出鱈目吹き込んだ野郎か」


長髪の男が俺を見た途端に舌打ちする。


「ねぇ、なんであんた目つけられてるの」


「レイル。……やっぱり君は僕たちの敵なんだね」


カク。

マルト。


「違うんだ。俺はただノアを――」


「黙れ」


カクはそう言うとナイフを持って俺たちの方へ突っ込んでくる。


サラが拳を握る。


俺はサラの方へ飛び込んで、サラを押し倒す。


――ドン


サラと俺は床へ倒れる。


カクは俺たちのいた場所を勢いが余り過ぎ去る。


「カク!何もいきなり攻撃しなくても――」


マルトがカクを制止する。


「うるせぇ!こいつは街にとって危険だ。殺すしかない」


カクがマルトに叫ぶ。


「何すんのよ!私がパパッとやっつけちゃうから」


サラが俺に怒鳴る。


「やっつけたらダメだ」


「また意味わかんないこと言って」


サラは更に怒りを爆発させる。


俺はゆっくりと立ち上がりカクの顔を見る。


カクもゆっくりと振り返り、俺の目をジッと見ている。


「ずいぶんと俺を舐めてるよな。お前」


「舐めてなんかない。ただ、傷つけたくないだけ」


「そうか、じゃあ黙って死ね」


カクは同じようにまた俺へと向かって突っ込んでくる。


俺はサラがいない方へと避ける。


カクは足のつま先を軸に、向きを即座に変え速度を落とさない。


――このままじゃ、ナイフが!


俺は指の先に脈気を集中させる。


――持ってくれよ。脈気


心の中で念じながら俺はナイフを指先で弾く。


――シュルシュルシュル


――ザク


ナイフは宙を舞い地面に突き刺さった。



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