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銀の英雄と世界を覆う噓  作者: hini
4章 奪還編
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4-16 異物のまま

薄暗い地下の中を俺とフウジは進んでいく。

ホコリと淀んだ空気のせいで気分が落ち込んでくる。


「ここが俺たちの指定されている寝床だ」


フウジが指を指したところにはただ布の敷かれただけの地面があった。


「ここ全部使っていいのか」


「そんなわけないだろ」


フウジは布の上に上がり説明する。


「ここがマルト、んでここがカク。俺はここでレイルは俺の隣な」


フウジはそう言って俺の寝床を指差す。

人一人がギリギリ横になれるスペースだ。


「毎日寝転んで寝れるってのは恵まれてんだぞ」


フウジはふぅと息を吐き、軽く飛び跳ねる。


「じゃあお前の寝床の説明もしたしいくか、ノアって子を探しに」


「ありがと、フウジ」


俺は素直に感謝する。


正直、寝床の説明なんてどうでもよかった。


「この地下のどこが一番人が多いんだ。そこに行きたい」


フウジは俺の言葉を頷きながら聞く。


「当然、一番多いのはさっきみたいな居住区だろうな。けど、あんなところを一つ一つ確認してたらキリがないだろ」


フウジは布の上で突っ立っていた俺の襟を引っ張る。

 

俺はバランスを崩しながらもなんとかついていく。


「ノアって子がこの街にいるってことはうちの組織と関係があるはずだ。この街で生きている人間がいるのなんてうちが管理してる箇所だけだからな」


「分かったからちょっと離せよ」


フウジは俺が苦しそうにしながら歩いているのを確認して、勢いよく手を離す。

 

俺はバランスを崩して手を地面につく。


「わりぃわりぃ」


軽く謝ったフウジは話を続ける。


「地上に唯一、俺たちの組織'屑拾いの残響'のなんて言うかな。作戦会議場?まぁ、偉い奴が集まるところがあるんだ。そこでノアって子のこと聞いてみようぜ」


屑拾いの残響。

 

フウジが言った言葉は確かにそう聞こえた。

なら、フウジも屑拾いの残響の一員なのか。

現実だと思いたくない。


俺は頬を叩く。

思ったよりも力を入れて叩いてしまったので少し痛い。


「おい、レイル。どうした、手がかりが見つかりそうで嬉しいのか。これは現実だぞ」


フウジはそう言いながら俺の前を歩いていく。


暗く湿った地下の通路にはフウジの声以外明るいものはない。


――たしかに。


ノアを見つけられそうで嬉しい気持ちはあった。

けど、それと同時にフウジが'屑拾いの残響'の一員だということが信じられなかった。


俺は足を止める。


「なあ、フウジって'屑拾いの残響'の一員なのか」


俺の顔を見て何かを察したのかフウジの歩幅が小さくなる。


「やっぱ……」


小さく何かを呟いた後フウジは俺の方を向いて大きく呼吸する。


「レイル、きっとノアって子は見つかる。はやく行こうぜ」


フウジはそう言って前を向いて歩き始めた。

 

俺もフウジについていく。

しばらくすると、土でできた階段が現れた。


「ここの上がうちの組織の偉い奴らがたくさんいるとこだ。行こうか」


フウジはそう言って俺の前を歩いていく。

 

少し離れて俺はついていく。


「なあレイル。お前うちの組織のことどう思ってんだ」


「え?」


驚いた。


「なーに驚いてんだよ。お前、俺がうちの組織の名前出した瞬間急に静かになっただろ。なんか知ってんのかなって思うのがそんなにおかしいか」


階段を登りながらフウジは語りかけてくる。


ケビンは'屑拾いの残響'の一員。


そうアスヘルは言っていた。

しかし、フウジ達を見ているとそんなノアを攫うような悪い奴らには見えない。

それに……ここでケビンを知っているか聞いて、もしフウジがケビンを知らなかったら俺はきっとまた壊れてしまう。


「知らないよ。'屑拾いの残響'なんて。さっきフウジから初めて聞いた」


俺は愛想笑いを浮かべる。

 

フウジは俺の表情なんて見ずにただ階段を上がっていく。


「そっか。ついたしこの話題は終わりだな」


フウジがそう言って階段の最後の一段を登りきる。

上がりきった踊り場には綺麗な木のドアがある。


「このドアを開けばノアって子の正体はきっとわかる」


フウジはそう言って俺の手を掴んだ。

俺はフウジにドアノブを無理矢理掴まされる。


「なんだよ」


「レイル、行こうか」


フウジは大きく息を吸って俺の手を持ちドアノブを捻りドアを開く。

 

ドアを開くと地下とは全く違う光景が広がっていた。

綺麗に整頓された机と椅子。

棚に並べて置かれているジオガン。

そして布がかけられている大砲のような何か。

そして、光が反射しそうなくらい掃除されている木の床。

 

貧しいように見えたコンガの街にこんなとこがあったのか。


「なあ、ここなんなんだ」


俺がフウジの方を向くとフウジは敬礼していた。

 

フウジが敬礼している先には見たことのある男が立っていた。

  

馬に乗って俺とノアの前に現れた。情けないように見えた男。

 

――ケビンだ。

 

「フウジそんなことすんなよ。お前ずいぶん活躍してるらしいじゃないか」


ケビンがフウジに話しかけ、フウジは嬉しそうに笑みを浮かべている。

 

俺は拳を握りしめる。

フウジは俺の方を一瞬向いて目を見開く。


「ちょっと待ってケビンさん。教えて欲しいことがあるんだ」


フウジは嬉しそうに目を輝からせながら俺の肩に手を置く。

 

ケビンは俺の顔を見て驚いた表情を浮かべている。


「こいつ、新入りなんだけどさ人探し――」


フウジが俺を紹介してくれている隙に俺は床を強く蹴りケビンを殴る。


――バン


鋭い音と共にケビンの体が宙に浮く。

鈍い音ともにケビンは地面に倒れる。


「何の音だ!」


離れたところから声が聞こえる。

だけど、そんなことどうだっていい。


「何してんだよレイル」


フウジが俺を抑えようと体全体で止めるが俺の怒りは収まらない。


「おい!ノアはどこにいる!」


ケビンに怒鳴りつける。

 

ケビンはゆっくりと立ち上がり俺の前にくる。

 

口が切れ、血が少し出ている。

 

ケビンはゆっくりと拳をあげ俺の頬に向かって下ろす。


―ーバン


視点がブレる。

 

フウジが慌てて俺への拘束をとく。


「大丈夫か」


フウジが俺を心配するが手で制止する。

ケビンがゆっくりと口を開く。

 

「こんなとこまで来たのか。あのパンダさんは生かしてやっただろ。諦めてくれ」


ケビンがゆっくりと冷酷な口調で話す。


「ノアも返してもらえないと引き下がれないな」


俺も怒りを抑え、なるべく冷静に話す。

しかし、唇と拳は震え今にも動き出しそうだった。


「ケビンさんもさ、レイルも何かおかしいからやめろよ」


フウジが俺の仲介に入るために俺とケビンの間に割って入る。

 

その時、黒いフードを被った数人が俺たちの周りに集まってくる。

彼らはケビンの口の怪我を見るや否や俺の方にジオガンを向けてくる。


「何者だ」


フードを被った奴らのジオガンなんて無視して俺はケビンに睨みつける。


「なあ、ノアはもう諦めてくれないか。あいつはもう俺たちの仲間だ」


「そんなわけないだろ!ノアは……エルド村でサラやモノ達と笑いながら暮らしたいはずだ」


反射的に俺は言い返す。


――ノアが俺たちを捨てるはずない。

ノアがエルド村で残してた笑顔は本物だったんだ。

俺の無茶な修行やムウやガウ・ロロ達との稽古、一緒に食べたクッキー。サラと一緒に笑い合っていた日々。

全部全部大切なはずなんだ。


「おい、ケビンさん。ノアって子は……」


フウジが何か言いかけた時、ケビンは後ろを振り向き叫ぶ。


「言ってやってくれよ」


ケビンがそう言うと奥の壁から青髪の見たことある女性が現れる。

 

水のように透き通った綺麗な青い髪。

全てを包み込むような優しい顔立ち。


「レイル……」


「ノア……なのか」


俺はもう何がなにか分からない。

 

どうして、自由に動けるのなら今すぐに俺の所へ来て帰ろう。

 

俺は無意識にノアの方へ歩いて行っていた。


「捕まえてくれ」


ケビンの一声で周りにいた黒いフードを被った人物達は増え十人以上になっていた。

 

力の限り暴れる。

 

しかし、次第に俺が黒い男達に殴られる方が回数が多くなっていく。

 

そして俺は、気を失った。

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