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銀の英雄と世界を覆う噓  作者: hini
4章 奪還編
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4-14 異質な力

カランカランカラン


嫌な音がさっきよりも大きくなる。

俺は壊れた街をアイツらの後を追って駆け抜ける。


――ギィ


一瞬だった。

けれど、今にも崩れてきそうな建物の中から音が聞こえる。


クロールを背負って駆けている時は気付かなかったが恐らくこの街はまだ死んでいない。


視線を動かしながら俺は街を駆け抜けていく。


するとどんどんフウジの背中が近づいてくる。


俺は徐々にスピードを落とし、フウジの真後ろで止まった。


「今日も気持ち悪い奴らだな」


フウジは吐き捨てるように言う。

そして、そのまま壊れかけの柵を飛び越え荒野の方へ駆ける。


俺も視線を荒野へと向ける。


――なんだよ、あれ


翼が四本。

トカゲのような身体。

そして目が三つ。

目の奥には赤い光が宿っている。


「フウジ、一人で無理すんな」


カクが叫びながらフウジの後を追う。


「魔族見るの初めてなの?」


横から声が聞こえた。

 

声のする方向に視線を向ける。


背の低い男。マルトがそこには立っていた。


改めて見ると、マルトの身長は俺の肩くらいまでしかない。

そして何より、話し方が幼く感じた。


「いや、初めてじゃない」


俺は小さくそう呟くように言った。


――ビュンビュン


目の前から音が聞こえた。

これはジオガンの発射音だ。


「ギィャァネー」


トカゲのような魔物は奇声を上げる。


「待ってよマイカ」


隣でマルトが声をあげる。

 

俺が振り向こうとした瞬間、俺の横を何かが通り過ぎる。

かなりの風圧に俺は一瞬だけ目を瞑り目を開く。


そこには黒色のフード付きのマントが落ちていた。


「ギィィィャネェェェェ」


気持ちの悪い叫び声が聞こえる。

目線を向ける。


――信じられない光景だった。

 真っ白な髪の長い人物が何か鋭いもので魔物の羽根の一部を切り裂いていた。


「マイカ!無理すんな」


フウジが真っ白な髪の人物に叫ぶ。


その瞬間、魔物は尻尾を素早く動かし攻撃する。


――まずい


俺は一歩をようやく踏み出したが到底間に合わない。

あの魔物のいる場所まで50mはある。


フウジが咄嗟にマイカを押して二人ともギリギリで交わした。


俺は腰から木刀を取り出し魔物の前に立つ。


「やめろ、死ぬぞ」


カクが少し離れた位置から俺に忠告する。

俺はそんな声は無視して四足で地面に足をついている魔物の羽根部分を木刀で斬る。


「おい、お前。そんなので斬れるわけないだろ」


フウジの声が聞こえた。

確認してみると羽根は少し傷ついているだけで斬ることはできていない。


「あれ……」


俺が困惑しているのをお構いなしに魔物は突っ込んでくる。


前足を高くあげて空気を切り裂きく音と共に俺の体を目掛けて振り下ろす。


俺も木刀を握る手に力を込め弾き返す。


――ボンッ


魔物の皮膚に衝撃が吸収され、鈍い音が響く。


魔物は俺の攻撃を食らってひっくり返りもがいている。


今がチャンスだ。


「危ない」


高い声が聞こえて俺の隣に真っ白な髪の人物が立ち構えている。

武器は何も持っていない。

素手で構えている。


「危ないってこっちのセリフだ。ここは任せろ」


俺はそう言って再び前を見るとさっきまで転がっていた魔物の姿が消えていた。


「上だ!」


カクの声に反応し上を見ると遙か上空から魔物が俺達を目掛けて落下してきていた。


俺は咄嗟に地面を強く蹴り攻撃をかわし、魔物から距離を取る。


「無茶だよ。木刀で戦うなんて」


マルトが俺のそばに寄ってきて語る。


「アイツらはジオガンが効かないんだ。今フウジが応援を呼んできてくれてる。ここはみんなで協力して耐えよう」


「それでアイツを倒せるのか?」


俺の質問にカクが答える。


「無理だ。だがそれが俺たちの限界だ。マイカのバックアップするぞ」


マルトはカクの言葉に静かに頷く。


俺はカクの言葉を無視して魔物と戦闘中のマイカと呼ばれている人物の方へ走る。


「待ってよ!」


マルトの制止。

今の俺じゃ戦力にならないのはわかってる。でも、止まれなかった。


マイカが必死に魔物の攻撃をかわしている。

魔物が尻尾を振り回すと上に飛び、前から飛びかかってきたら横に避け、爪で攻撃してきたら何かで受け止めている。


「大丈夫か」


「貴方が来なければね」


マイカと言う人物は高い声だった。

近くで横顔を見てみると整った顔立ち。綺麗な肌。

同じ性別には見えなかった。


――バシ


魔物がマイカの攻撃を受け、また一つ羽根が地面に落ちた。

その羽根からは白色の線のようなものがダランと垂れている。


「強いんだな」


「うるさいどっかいって」


マイカが俺の方を見た一瞬。

魔物は急に二枚の羽根を高速で動かしマイカを目掛けて突撃する。


咄嗟に魔物の突撃を木刀で止める。


――ザザザザ


受け止めた衝撃で地面を滑る。


「うそ!魔物の攻撃よ」


俺は魔物の攻撃を受け止める。

そして地面に落ちている羽根から白色の線を引き寄せる。

一部はマイカの方へ流れていったがほとんどは俺の方へと流れる。


――この白い線は間違いない。脈気だ。

普段どのくらいの脈気を纏っていたのかは知らない。けれど、今使えるのはさっき見えた少しの脈気だけだ。

木刀に俺は脈気を流す。薄く、そして鋭く。


俺は受け止めていた攻撃を押し返す。


魔物はバランスを崩し腹を俺に見せる。

――今だ。

木刀を振り抜き魔物の体を切り裂く。

水の中で木刀を振るような重いが進んでいく感覚。


――パサ


魔物の体が真っ二つになって俺の足元に落ちてくる。

体の切れ目からは少しの脈気がふわふわと宙に浮き消えていっている。


「何者なの」


隣で見ていたマイカが俺の顔にどんどん近づいてくる。


「ねぇ」

「なんで」

「こんな常人離れしてるの」


連続して圧をかけてくる話し方に俺は少し圧倒される。


「マイカの言うこともわかるよ。普通の人間はこんなことできない」


マルトもマイカの意見に同意して俺の方を見つめる。


俺が説明しようとしたその時

 

――バン

 

横から音が聞こえる。


すぐに音の方を振り向くと既に目の前に紫色の光がきていた。


俺は咄嗟に交わそうとするが間に合わない。


――カン


紫色の光は何かに弾かれて空へ消えていった。


「やめなよカク」


マルトが俺の方を横から見ていたカクの腕を掴んでいる。

カクの手にあるジオガンは俺の方を向いていた。


「うるさい、こいつは絶対に人間じゃない!魔族の類だ」


暴れるカクを必死にマルトが押さえつける。


「俺は人間だって」


カクに向かって主張するがカクの目の鋭さは変わらない。


「カク、黙って」


マイカはそう言うとカクの首元に爪を押し付けていた。

爪の長さは50cmはあるんじゃないか。


「ねぇ、レイルって言ったっけ?」

「あんた、その力どこで手に入れたの」


――どこで手に入れたと言われても、脈気はエルド村で教えてもらったことでこんなことを言っても到底信じてもらえるはずがない。


「どこだったらダメなんだ」


俺が質問を返すとマイカは短く答えた。


「レガルドの槍」


――レガルドの槍は知ってる。レガルド王国にいた時街にいたあの生きてる感じがしない部隊でノアの所属。


「おい、マイカ何やってんだよ」


フウジが街の方向から数人を引き連れてこっちへ来る。

この人物達も全員黒色のフードを被っている。


「フウジ、タイミング悪いね」


マイカはそう言い街の方向へ去っていく。


フウジは頭を掻きながらその様子を見ている。


「協調性ないなぁ……」


フウジはそうため息をつきカクとマルトの方へ歩み寄る。


「怪我はないか」

「うん、大丈夫」


マルトが真っ直ぐな声で答える。

 

カクはフウジの言葉を無視し、俺の方を指差す。


「フウジ、こいつは信用すべきじゃない。危険だ」


大声で語るカクをフードを被った数人の注目を集める。


「んー、まあボスが仲間って受け入れたんだからいいんじゃねえか」


フウジがめんどくさそうに返事を返す。


「もういい、俺も好きにやらせてもらう」


カクはそう言い街の方向へ駆け出していった。


「本当に何があったんだよ……」


フウジのため息だけが荒野の戦場跡に残った。

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