第3話 白夜の日常(夕方)
妖の言葉は『』にしました。でも気持ちは()です。人も妖も。
「ふぁ~、ただいま~」
大きなあくびをしながら家の戸を引いた。
『あっ、お帰りなさいませ』
「・・・・・・」
部屋から出てきた雪をまじまじと見る白夜に雪は不思議がった。
『どうしたんですか?』
「いや、別に・・・・・」
『・・・・?』
朝と同じ縁側を通り自分の部屋に向かう白夜の後姿をじーっと見つめる雪に我慢できなくなって振り向いた。
「どうした?」
『い、いえ別に』
笑って誤魔化し後ろを向く雪に疑いの目で見るが、「ま、いっか」と呟き部屋に入った。
「そうそう、雪」
部屋の襖から顔だけ出す白夜に雪が振り向いた。
『はい?』
「これから買い物に行くが雪も一緒に来るか?」
「一緒に行くか?」と聞かれた雪は笑顔で『はい』と答えた。
「んじゃ、着替えるから少し待ってろ」
襖を閉め着替え始めた白夜と早くも浮かれている雪を庭から見ていた子鬼達は話し合っていた。
『あれだな、人間達が言う新婚ってやつだな』
『だな!』
などと話し合っていた。
「よし、いくか?」
着替え終えた白夜が玄関の戸に手をあて聞いた。
『はい』
二人は外にでて近くの商店街へと向かった。
『これは、しろや様』
「よう」
『雪ねぇ、こんにちわ』
『こんにちわ、小狐くん』
歩き出すとすぐさま妖達が挨拶をしてくる。
妖にとって白夜は人気者である。
『これから、雪殿とお出かけですか?』
雨が降っているわけでは無いのに傘を持った青年が聞いてきた。青年と言っても頭には狐の耳がついている立派な妖である。
「あぁ。そうだコン、何か欲しいものあるか?」
『えっ?』
「たまには何か買ってやるよ。ただし、安いやつだぞ!」
コンに聞くと頭を抱え込んだ。
『そんな急に言われても・・・・』
「なら、一緒に来て決めるか?」
雪をみて「いいだろ?」と聞くと笑顔で頷いた。
『それじゃ、お言葉に甘えるよ白夜様』
「ハハ、そのさ~様付けやめない?」
困った顔で聞く白夜にビックリするコンだった。
『何を言うんですか!白夜様を呼び捨てになんて出来ませんよ!!』
『ほら、コンも言うじゃない』
ため息をしてコンと雪をみた。
「コン、オレとお前の仲なんだから様なんて付けなくていいよ」
『ですが・・・・』
「いいから、今度から呼び捨てにしろよコン!」
『は、はい』
コンは渋々頷いた。
「たくっ、妖だろうがオレがいいって言ってるんだからまったく・・・・・」
一人ぶつぶつ呟いている白夜を見ているコンは小さく笑った。
(やはりこの人はいい人だな・・・・・)
コンと白夜の出会いは七年前じーちゃん・・・・炎羅が他界して、白夜が現当主になって始めての相談者がこの妖、コンだった。相談を解決してもまた何回か相談がありそのうちに仲良くなった妖である。
「いらっしゃい!!」
昔の事を思い出しながら歩いているといつの間にか商店街の八百屋の声で我に返るコンだった。
「ん~、今日はどうする?」
小さな声で雪に聞くと『う~ん』と悩んでいるとコンが口を開いた。
『魚なんてどうすっか?』
「魚かぁ・・・・・」
雪に視線を向けると頷いた。
「んじゃ、そうすっか」
魚屋にむかって三人(普通の人が見ると一人)は歩き出した。
魚屋に着き魚を見ると雪とコンの視線が一匹の魚に向いていた。
(鯵かぁ・・・・)
「おっちゃん、鯵三匹ちょうだい」
「あいよ」
『えっ白夜さ・・』
「様付けんな」
小さい声で言葉を遮る白夜。
「コン鯵食べたいんだろ?」
『いや・・・まぁ・・・・』
「なら、いいじゃねぇか」
「まいどあり」
鯵を三匹買うと三人は屋敷に向かって歩き出した。
「雪は鯵、食べた事あるか?」
『何回かは』
袋に入っている鯵に視線を向けながら答える雪。
「ん」
何かひらめいた白夜は雪に聞いた。
「雪はさっきから鯵に視線が言ってるけど俺より鯵が好きなのか」
『え、ちょ、白夜様?』
言葉を聞いてすぐに袋から白夜に視線を移すと白夜はうなだれていた。
『そんなことはありませんよ。白夜様の方が好きです!』
はっきりと白夜の顔を見て言われたので逆に白夜が顔を赤くして焦った。
『ク・・・クク・・・・』
「おい!」
『す・・いま・・・せん・・・クク・・・』
笑いを堪えるコンに冷たい視線をおくる。
「たく、それより鯵、食っていくだろ?」
『はい!』
うれしそうに答えるコンに微笑む白夜だった。




