第2話 白夜の日常(朝)
「白夜さま、起きてください」
「ん~、あと少しだけ」
和風の広い部屋の真ん中で布団に丸まって寝ている白夜に雪は困っていた。
「む~、凍らせますよ?」
「はい、起きました」
何事もなかったように布団から起き上がった。
「それじゃ、早く着替えてくださいね」
そう言い雪は寝室から出て行った。
「ん~」
背伸びし制服に着替え始めた。
(雪が家に来てから今日で十年だっけ?)
壁に掛けてあるカレンダーを見てふと頭の中を過ぎった。
「ま、いっか・・・・」
オレ、風流白夜。「びゃくや」じゃ無いぞ。「しろや」だ。
オレの家は代々、妖が見えると言う事で妖と人間の手助けをしている。
まぁ、代々と言ってもオレの両親は見えないし、じいちゃんは見えてたけどもう、この世にはいない。
雪が家に来てから三年後、死んでしまった。その為、オレは一人・・・・じゃなかった。雪と二人でこの広い屋敷に住んでいるんだ。
そうそう、先に言っておく。俺の家はあの有名な陰陽師とかとは無縁ですから。(逆に尊敬してますから)
だが、当然の如く雪の姿は一般人には見えない。その為事実上オレは一人暮らしとなっている。
オレもあの時よりも大人になって今は17歳、高校二年生だ。雪も身長が高くなって女子高生の平均身長ぐらいに伸び、髪も子供の頃と比べて背中に髪が掛かるほどになった。
妖が家に訪ねてくるのも月に5~6体ぐらい。ま、たまに人間が来る事もあるけどな。
「白夜さま~」
「今行く」
遠くの部屋から雪の声が聞こえた。
鞄を手に取り寝室を出て縁側を歩き出した。
「あ、おはようございます」
「ちぃ~っす」
家の庭には時々、妖が入り込んでいる。もちろん、害の無い妖だが。
「おう、はよ」
白夜は、庭の池に使っている子鬼達に挨拶を返し雪の待っている部屋に入った。
「遅いですよ、白夜様」
「ん~、何度も言うけどその「様」ってやめてくれない?」
部屋に入ると座布団の上に腰を下ろし、目の前のテーブルには雪が朝食を並べていてくれた。
「そうは行きませんよ!」
朝早くから小さくため息をこぼした。
「たく、じーちゃんとは違うんだから白夜って呼び捨てにすれば良いのに・・・・・・」
「何言ってんですか!まったく」
「はいはい、それじゃ」
適当等に相槌を打つと、箸を手に取り食事の挨拶をした。
「いただきます」
「はい、どうぞ」
挨拶をし、ご飯に手を付けた。
「あっ、雪」
「はい?」
雪がご飯を口に入れようとしたとき白夜に呼ばれた。
「勾玉に霊力まだ残ってる?」
ご飯を置き、味噌汁に口を当てながら聞いた。
雪は言葉を聞くとご飯を一口食べてご飯を置き、自分の左手首に紐で結ばれている勾玉を見た。
勾玉は水色で光っている。
「はい、まだ大丈夫です」
「そうか。だが、切れ掛かったらちゃんと言えよ。勾玉の霊力が無くなったら雪、熱いもの触れないんだから」
「わかってますよ」
微笑む雪を見て心配そうな表情を浮かべる白夜。
「あっ」
「今度は何ですか?」
ふと何かを思い出した白夜、それに雪は聞いてきた。
「雪、おはよう」
「えっ?」
いきなりの挨拶にキョトンとする雪。
「挨拶まだだったろ?」
「そ、そうですね」
微笑む白夜に対して向かい合っている雪は真っ赤になっている。
「おっと、早く食べないと」
飾ってある時計が視界に入ると時間に気付き、白夜は朝食を食べ始めた。
「ご馳走様でした」
食べ終わると挨拶をきっちりとする白夜に雪は
「お粗末さまでした」
と返した。これを傍から見ると新婚さんに見えるが彼らは気づいていない。
「歯磨きしてくるわ」
「あっ、私も」
雪と一緒にお椀などを台所に持っていき水にお椀を付け、二人は洗面台に向かった。
「白夜ー」
「あっ」
門の前から一人の青年の声が聞こえてきた。
「椿だ」
声の主は高坂椿。オレの親友で唯一家族以外でオレが妖が見えることを知っている。
「んじゃ、行ってくるわ、雪」
「いってらっしゃいませ。白夜さ・・」
「しろや!」
白夜の顔が雪のすぐ前まで近づいてきて言った。
「し、白夜」
顔を真っ赤にして名前を言った。
「あぁ」
返事を返し戸を引いた。
「わりぃ、待たせたな椿」
「いいよ、それより今日も雪ちゃんに起こしてもらったの?」
「あぁ」
「ふ~ん」
意味深げに椿は言った。
「別に」
「おまえなぁ」
「オレも会ってみたいなぁ」
「会うか?」
椿の願いに白夜は即答した。
「できるの?」
「勾玉使えばね」
それを聞いた椿はガッツポーズした。
「ん、よう」
「え?って妖?」
「あぁ」
椿には見えていないが今さっき白夜の隣を人の格好をした猫が挨拶してきた。
「・・・分かってるとは思うけど」
「大丈夫、お前の前だからやってるんだよ」
椿に視線を向けながら言った。
「それより、早く行くぞ」
言うと同時に走り出す白夜に椿は少し遅れてその後をを追った。
「ちょ、まってよ」
結局、学校に着くまでに数体の妖に挨拶された白夜だった。




