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助手席  作者: 狸
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水嶋

自分の生活において

想いを寄せている人がいた時

その人に会えない時間は呆れるほど退屈で長く感じる。

なのに会える時間は悲しくなるほど短く感じてしまう。


「友達といるとそんなことないよ。」


昔そう言われたことがあった。


確かに気心知れた友人といる時間はかけがえのない大切な時間である。

でもそうじゃない部分もある。


友人や家族でさえ埋められない心の隙間が。


その隙間を埋めてくれる人が彼ならばなんてふと思う時もある。

彼の隙間を私が埋めてあげられるならと。


そんなことを考えるようになってしまえば、

あとは決して叶うことのない恋へと落ちていくだけで。



「おはよう。今日終われば試験だね。」


浮かない顔をする私に杉本さんはそう言った。


「そうですね〜。」


「まぁ、楽しいのは路上に出てからだからねw」


「嫌だなぁ〜。」


「何言ってんのw本当に自信ないんだねw」


「そうですよ〜。」


「運転向いてない!って諦める人も時々いるけど橋元さんは違うでしょ。中途半端で投げ出さないって僕は知ってるよ。」


なぜそこまで信用されているのだろうか


「あ。今本当にそう思ってんのか?とか思ったでしょw」


「バレました?」


「わかるよ〜。だって僕今まで何人の生徒さん見てきたと思ってるの?」


「経験ですか。」


「そうだよ〜。橋元さんのことは手に取るようにわかるから〜。」


あくまでも軽い口調で言う彼は今日もマスクをしていなかった。

反対に手袋はつけたままだった。


運転中は特に何も話すことはなく

今日も時間はあっという間に過ぎていった。


「うん。大丈夫だね。試験行こっか。」


「え。」


「え。とか言わない。落ち着いて運転すれば僕はいけると思ってるから。ものは試しだよ。」


「またとりあえず受けてみろってやつですね。」


「そうそう。どんなものかを知るのはいいことだと思うよ〜。」


そんな話をしていると私たちが乗っている車の前をあの嵐のように忙しない人が通った。

思わず


「あっ。」


と声を出すと杉本さんは私の目線をたどって


「ん?彼?どしたの?」


「あ、いえ。よく1人でいるときに気にかけてもらったり話しかけてくれてたんですよあの人。」


「あ、そうなんだ。彼に当たったことがあるとか?」


「いえ、それが一回も教えてもらったことがないので不思議で。だから名前も知らないんですよ。」


「あ〜。なるほどね。彼水嶋って言うんだよ。若い子から人気があってね。橋元さんも好き?」

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