僕のヒーロー
亜希「(黙って聞く!ド健康優良児は目の前にいるんだから!
だけど 全部夢みたいな事で、ミッキーはもう存在しない人で…
ああ!ヤダ!私また変な事考えて…)」
ミッキー「亜希さんごめん、結果から話せば良かった。
俺は助かったんだ、助けてもらったんだ。
眠ったのか気を失ったのかは分からなかったけど、夢を見てたんだ。
暗い谷底みたいな所にいて、上を見ると沢山の人が俺を見下ろしてた。
登って行くのは嫌だから、仕方なく谷底を歩いて行くとキラキラ乱反射する光が見えたんだ。」
亜希「え?何コレ?ウルトラマン?(もう、いきなり黙ってられないわよ!)」
ミッキー「亜希さん俺の話聞いてるって前提 破壊しないで、見えちゃダメなんだよ。
それに これはウルトラマンじゃなくてゾフィー。」
亜希「あ?え?ごめん…じゃなくてゾフィー?
ゾフィーってエリザベートの皇太后でしょ?
どっからどう見たってウルトラマンじゃない。」
ミッキー「エリザベートだなんて やっぱり亜希さんは文化人だね。
ゾフィーはね ウルトラ兄弟の長兄なんだ。
ゼットンに倒されたウルトラマンを助けに、光の国からやってきたんだ。
胸の模様がウルトラマンと違うでしょ?
ティガとかコスモスより、ウルトラマンは断然 初代がカッコイイよね。
ちなみに仮面ライダーはクウガが一番かな?」
亜希「ああ もうワケ分かんない。
私 女の子よ、ウルトラマンや仮面ライダーの設定 知ってる前提っておかしくない?
とにかくゾフィーとウルトラマンは別人なのね。」
ミッキー「うん、俺 もう死んじゃったと思ってたんだ。
でも光が見えた、それって倒れたウルトラマンをゾフィーの光の玉が包んだシーンに思えたんだ。
ゾフィーが死んじゃった俺にカラータイマーを持って助けに来てくれたんだって目を開けたんだ。」
ミッキー「でも俺を助けてくれたのはゾフィーじゃなくて。」
ミッキー「ふくちゃんだったんだ。
それでキラキラ光ってたのは光の玉じゃなくて、ゴミ袋を張り合わせたサンルーフだったんだ。」
亜希「ああ!良かった!ホントに良かった!もうどうなるのかと思った!ああ 福田さんキレイ!」
ミッキー「うん、もう亜希さんも見えてる前提でいいよね。
俺が紙芝居みたいなフリップ持ってるって事にしよう。
ふくちゃん若かったね、そんでスゲエ キレイだったんだよ。
今は見る影もなく太っちゃったけどね。」
亜希「もう!命の恩人を!今でもキレイでしょ!」
ミッキー「うん 今も最高にキレイさ。
ふくちゃんは清掃の仕事してる時、ハンバーガー屋の前で倒れてた俺を見つけて、自分の家に連れ帰って介抱してくれたんだ。
あったかかったな、いい匂いがしたな。」
亜希「(なんかジェラシー。
私だって倒れたミッキーを見つけたら家に連れ帰って介抱するもの。
それで 大切に大切に育てるわ。
でも黙ってよう、ややこしくなるに決まってるもの。)」
ミッキー「外に出て分かったんだ、ふくちゃんの家は普通の家じゃなかった。」
ミッキー「家の材料はダンボールとブルーシートで、敷地はうっすら雪が積もった駅裏の城址公園の広場だった。
雪が積もったのを見るのも初めてだったから、やっぱりウルトラマンの故郷M87星雲の光の国に見えたな。」
亜希「それに その形!モンゴルの遊牧民の家!」
ミッキー「そうそう!ゲルって言うらしいね。
ふくちゃんは大学で民俗学を専攻してたらしくて、モンゴルに行って遊牧民のゲルに一月位ホームステイしたんだって。
それで組み立て式のゲルの構造も知ってて、ダンボールとブルーシートで再現したって言ってた。
最高にウキウキしたよ。
ウキウキする家第1位はツリーハウスかも知れないけど、第2位は3位を引き離してゲルだからね。」
亜希「んがっ!(ああもう絶句するしかないわ。
福田さんも自由過ぎる。
やっぱりチャチャ入れないで黙って聞こう。)」
ミッキー「もうさ、雪が積もってるし、ふくちゃんは優しいしキレイだし、ゲルだし。
俺 はしゃいじゃって公園の中走り回ったんだ。
で、その直後ふくちゃんの制止も聞かないで走り回った事を後悔したよ。
城址公園はさ、駅との連絡通路があるでしょ?
その連絡通路から おっかない おっさん達が、こっちに向かって走って来るじゃありませんか。」
恐いおっさん「おお!心配したぞ!坊主 目が覚めたか!」
太った おっさん「オモチャいっぱい持って来たぞー!」
レゲェな おっさん「Think rich, look poor!(内面は豊か 見た目は貧しく)」
子供 実樹貴「こわいよぅ!ふくちゃーん!」
ふくちゃん「大丈夫よ タカ君。
とんがり頭は チョーさん。
お腹の大きな人は ヤマさん。
カラフルな人は アンディさん。
みんな 優しい人よ、タカ君にオモチャを持って来てくれたのよ。」
子供 実樹貴「やった!やったぁ!ガンダムだ!ピカチューだ!
でも ちょっと違うねぇ、あはははは!あはははは!
ありがとう チョーさん、ヤマさん、アンディさん!」
チョーさん「まだあるぞ、坊主 寒いだろ?ちょうどいい手袋があったんだ!」
子供 実樹貴「ふわぁ!あったかぁい!あったかいよ!!」
チョーさん「へっへっへ、良かったな坊主、名前は何ていうんだ?」
子供 実樹貴「佐藤 実樹貴!」
ヤマさん「それじゃあ タカ坊だ!手袋あったかいか?良かったなタカ坊!」
子供 実樹貴「うん!ありがとう!」
アンディさん「I like boring things(退屈が好きさ)」
ミッキー「ガンダムもピカチューも ちょっと違うデザインだったけど 嬉しかったな。
手袋も ちょっと痒かったけど 最高にあったかかった。
チョーさんは 大型タンカーの造船所で働いてた頃の、面白くてタメになる話を聞かせてくれたし。
ヤマさんはロープの結び方とか、火のおこし方とか、食べられるキノコとか教えてくれた。
アンディさんは何言ってるか分からなかったけど、心に響く名言を言ってたんだろな。
ふくちゃんは ずっと側にいてくれて、勉強 教えてくれたし、
寝る前にはアレンジした超面白い昔話とか聞かせてくれた。
ふくちゃんは中学校の先生だったの知ってるよね。
あの公園には俺が欲しかった、心の底から欲しかったモノが全部あった。
母親やおばあちゃんの所になんか帰りたくなんかなかった。
事あるごとに そう言うと、ふくちゃんもチョーさんも 公園のみんなも、困ったようだけど嬉しそうに笑ってくれたっけ。
ヤベェな、もうダメかなって時、あの公園の事を思い出すと、キツい事も全然平気になって乗り越えられたよ。」
亜希「(私にとって今がヤバいよ、もう泣きそう。
良かったねミッキー、ホントに良かったね、優しい人達に巡り会えて。)」
ミッキー「ずっとここに居たいと思っててけど、そうはいかないよね。
小学生が公園に寝泊まりするなんて、本人が良くても世間が許しちゃくれない。
子供だったけど、何となく理解してた。
公園の桜のつぼみが膨らみ始めた頃だったな。」
子供 実樹貴「ふくちゃーん こっちこっち!」
ふくちゃん「タカ君もうそんな所に…は!ああ!」
警官A「君、佐藤 実樹貴君だね。」
子供 実樹貴「え?!は、はい…」
警官B無線機に向かって「通報にあった行方不明 少年を確保。
誘拐犯と思われる30代後半から40代女性も発見、ホームレスと思われる。」
ミッキー「世間が許さない、そう理解してたから警官に声をかけられた時は凍りついたよ。
どうやって ごまかすかって頭がいっぱいになったけど、子供の頭じゃ咄嗟に何も思い付かなくて 馬鹿正直に返事しちゃったな。
でも誘拐犯って言葉を聞いて、ふくちゃんが捕まっちゃうって子供なりに必死になって考えたんだろうな。」
子供 実樹貴「この人とはさっき会ったばかりです!食べ物くれて遊んでくれてたんです!
僕をここに連れて来たのは おじさんです!」
警官A「本当かい?どんな おじさんだった?」
ミッキー「あっさり信用されたんで逆に恐くなったな。
警官がまた無線で何やら話して、どうやら俺を警察署に連れて行く事になったらしかった。
ふくちゃんの視線を背中に感じてたけど、振り向いて何か言ったらバレちゃうって、警官に促されるままに歩いたよ。
不安だった、これからどうなるんだろうって。
おばあちゃんの所にも行きたくなかった。
母親の所にも自分の居場所なんて無いと思ってた。
どうすればいいのか分からなかった、でも どうしたいかはチョーさんが思い出させてくれた。」
チョーさん「おい!タカ坊!お前今なんて言った!!
おい ふく!お前それで本当にいいのか!!」
ふくちゃん「だってぇ、いぎいぃう!ひぎいぃい!」
ミッキー「言葉になってなかったけど、何が言いたいかは分かったよ。」
亜希「(私にだってわかる!ミッキーを手放したくない、別れたくない。
でも そんなの無理だって、福田さん どれほど辛かっただろう。)」
チョーさん「おめえ達!ちゃんと返答しろ!
タカ坊!さっき会ったばかりだとぅ!!
ふくは命の恩人だろうが!!母ちゃんに置いて行かれた、家に帰りたくねぇって言うおめえを!
捕まっちまう事 覚悟して かくまってくれたんじゃねえのか?!
違うって言うなら もう俺は おめえなんか知らねえ!
どうなんだタカ坊!ガキが 気い使ってこまっしゃくれた事 言ってんじゃねえ!
おめえの本心はどうなんだタカ坊!!」
子供 実樹貴「いやだああああ!!あんな家になんか帰りたくない!!
ふくちゃんやチョーさんや公園のみんなと一緒にいたい!!
チョーさん助けて!!ふくちゃん助けて!!」
ふくちゃん「タカ君!!」
チョーさん「よく言ったタカ坊!!
おまわり!良く聞け!タカ坊をさらって来たのは この俺だ!!」
警官A「何言ってるんだ このホームレス!!
おい!近寄るな!公務執行妨害で逮捕するぞ!」
チョーさん「望む所だ!俺のクソみてえな人生賭けて、タカ坊の笑った顔が見れるなら願ったり叶ったりだ!
でりゃああああああ!!タカ坊行け!ふくの所に!母ちゃんの所に行け!!」
子供 実樹貴「ふくちゃん!!ふくちゃん!!お母ちゃん!!」
ふくちゃん「タカ君!お母ちゃんだなんて!ああ!タカ君!タカ君!!」
警官A「離せ このホームレス!!
訳分かんねえ!調書に何て書きゃいいんだよ!
イカれたホームレスにシャブ中の息子が!!」
チョーさん「うぐぁ!!」
チョーさん「待てよクソおまわり!!」
子供 実樹貴「ああああああ!!チョーさん!チョーさん!!やめろ!チョーさんをいじめるな!!」
ふくちゃん「チョーさんもう止めて!
私 全部 正直に言います!!
帰りたくないって言うタカ君に付け込んで、タカ君と別れたくなかっただけなんです!!
チョーさんは悪くないんです!!」
警官B「落ち着きましょう!みなさん落ち着いて!」
チョーさん「どいつもこいつもうるせえ!
引く訳には行かねえんだ!こんな小せえ子供を置いて行くなんて好き好んでやる母親なんて絶対いねえ!
行き違いや止むに止まれぬ事情があったんだ!
だけどタカ坊にとったら、そんなの関係ねえ!
置いて行かれた裏切られたって思って当たり前だ!
だから引く訳には行かねえんだ!二度も!こんな小せえ子供が!二度も裏切られたと思わせるには行かねえんだ!
何もしねえで帰りたくねえ家に帰るのを見送る訳には行かねえんだ!!
そうなったらもう終わりだ!人を信じられねえ人間になっちまう!
こんな小せえ子供の人生 終わらせちまう訳には行かねえんだ!!」
ミッキー「今でも はっきり覚えてる。
チョーさんの勇姿、はいつくばって わめき散らした言葉も全部。
最高にカッコよかった、ウルトラマンも仮面ライダーも、五人揃って一人前の奴らなんて目じゃなかった。
チョーさんは俺のヒーローなんだ!」
亜希「チョーさん凄い!カッコイイよ!
ミッキーの…その…先に断っておくけど褒め言葉だからね、ミッキーの破壊的な所はチョーさんから受け継いだんだね。
ヒーローから受け継いだ必殺技なんだね。
ああ!チョーさん死んじゃヤダ!死なないでチョーさん!」
ミッキー「破壊的って…それにチョーさん死んでないから、今でもピンピンしてるから。」
亜希「うん、それで、それでどうなったの?」
警官A「もう許さないぞ この乞食!公務執行妨害の現行犯で逮捕する!」
背の高い男「ありゃりゃりゃ?僕何かしましたか?」
子供 実樹貴「剛二郎あんちゃん!!」
剛二郎「おう、実樹貴!あんちゃんが来たからには もう安心だぞ!」
子供 実樹貴「うん!」
警官A「な、な、な、何だあんた?!」
剛二郎「何だと尋ねられましても、何やら御老人をキレイに投げ飛ばす屈強なあなたを目にしまして。
こりゃ只事じゃ無いと思いましてね。
どうやら警察官に見えましたが、
牛刀で兎をさばくようなマネをする警察官がホントにいるのかなんてね。
ゲスの勘ぐりなんでしょうが お節介な事とは思いながら駆け付けた次第でしてね。
それって公務執行妨害になりますかね?
ありゃりゃりゃダンナ!血が出てるじゃないですか、こりゃ大事だぁ!」
警官A「こ、これは このホームレスが抵抗したからだ!」
剛二郎が小声で耳打ち「おい、おまわりさん 分かってねえな。
色々言いたい放題言ってたな、コジキだのホームレスだの、言うに事欠いてシャブ中だとかな。
不問にしてやるから そっちも お咎め無しで手を打とうって言ってんだよ。」
警官A「う、ううう…」
剛二郎「へへへ、分かって貰えたようでありがたいったらありゃしません。
話がついたなら怪我人の心配だ。
ダンナ!大丈夫ですか?立てますか?」
チョーさん「あ、あんたは?」
剛二郎「あ、申し遅れましたが、わたくし実樹貴の叔父、佐藤 剛二郎と申す者でございます。
ダンナの男気に心底シビれました。
実樹貴への御厚意に感謝の言葉もございません。
筋の通らぬ事とは思いますが、この剛二郎に この一件、任せては頂けませんか?」
チョーさん「あ、ああ、タカ坊の叔父さんだってなら やぶさかじゃねえ。
申し遅れってなら俺の方だ、俺は 関根 尚夫ってんだ。」
剛二郎「あれ?チョーさんって呼ばれてた気が…」
チョーさん「今更 言っても始まらねえから黙ってるが、何でチョーさんなんて呼ばれんのか聞きてえのは俺の方だ。」
剛二郎「あははは!ともあれ御一任ありがとうございます。
それで あちらの お姉様は?
あちらの方にも実樹貴が大変お世話になったご様子。」
チョーさん「ああ、雪ん中 倒れてるタカ坊を介抱したのは あいつだ、福田って言う。」
剛二郎「実樹貴の叔父 佐藤 剛二郎と申します。
福田さん、実樹貴が大変お世話になりました。
亡き兄 鉄太郎に代わりまして 深く深く御礼申し上げます。
ありがとうございます!」
ふくちゃん「御礼なんて困ります。
私はタカ君と離れたくない一心で、こんな路上生活に4カ月も引き留めた犯罪者です。
私に神様が遣わしてくれた天使だって思い込んでいました、とても幸せでした!
剛二郎さん さぞ心配だったでしょう?
どれだけタカ君を探したでしょうか。
タカ君が お母ちゃんと呼んでくれて私はもう これ以上望むものはありません。
どんな償いも受け入れます、申し訳ありませんでした。
うっ、ううっ…」
子供 実樹貴「ふくちゃん泣かないで、ね、ね、ふくちゃん。
剛二郎あんちゃんが来たから大丈夫だよ。
剛二郎あんちゃんはパパ以上にしっちゃかめっちゃかにしちゃう天才なんだよ。」
ふくちゃん「うん、うん…」
剛二郎「福田さん、失礼な事言うようですが、何言ってるか全然分かんなかったっす。」
ふくちゃん「え?!ええええ?!」
剛二郎「要するに こういう事ですよね?
お近付きのシルシにみんなで踊ろうって事ですよね?!ね!ね!ね!
南米チリはイースター島、タパティ ラパヌイって裸祭り御存知でしょうか?!
イエエエエエエエエエェェェェェイ!!」
剛二郎「イエエエエエエエエエェェェェェイ!!
皆さん楽しいですね!あんまり楽しいんで毎日来てもいいですかぁ?!」
公園のみんな「イエエエエエエエエエェェェェェイ!!」
ふくちゃん「何て事でしょう!タカ君と毎日会えるの?!私こんなに幸せでいいの?!
イエエエエエエエエエェェェェェイ!!」




