行かないで
変なおじさん「実樹貴ぁ 学校終わったらでいいから明日も診せに来るんだぞぅ。
お前は骨折したって診せに来ないからなぁ。
ぐへへへへ…」
ミッキー「うん、分かってますよ。
それより 今更なんですけど、どうして先生の病院名 フルネームの大日向 今二郎 医院なんですか?
大日向 総合病院でいいと思うんですけど。
築80年のモダンな建築と関係あるんですか?」
変なおじさん改め 大日向 今二郎 医院長「昔なぁ 大日向って医者はなぁもう一人…
なぁい!ないないなぁい!ぐへへへへ…フルネームそれは行き過ぎた自己主張!」
亜希「もう先生ったら訳わかんない。
なんで この町には自由な人ばっかりなんだろ?」
今二郎「ぐへへへへ…今二郎はコンジローマ♪
コンジローマ♪コンジローム♪ぐへへへへ…医者の不養生コンジローマ♪コンジローム♪ぐへへへへ…」
ミッキー「やばい!やばい!やばい!やばい歌出た!
先生ダメだよ朝っぱらから!
亜希さん聞いちゃダメだよ、耳塞いで!」
亜希「え?!コンジローマってやばいの?
どういう意味?ミッキー教えてよ。」
ミッキー「ああ、ヤブヘビだった!
先生の顔や頭の感じがまさにコンジローマなんだけど。
僕の口からは言えないから自分で調べて。」
亜希「あ、ああ分かった、性病ね。」
ミッキー「もう 身もフタもない。
ヤダよ亜希さんが そんなワードを口にしちゃ。」
亜希「ごめん ごめん ごめん!もう言わない!
でも先生って診察や手術の時は あんなに凛々しいのに、なんで普段は変なおじさんになっちゃうのかな?
ねえ先生。」
今二郎「ケツ丸出しで走り回ってた子供の頃から診てきた お前達が、こんなに仲良しだったなんてなぁ。
それにしても亜希っぺは いいケツになったなぁ、ぐへへへへ…」
亜希「触ったら ぶっ殺しますよ。」
ミッキー「触ったら めり込ませますよ地面に。」
今二郎「ぐへへへへ…実樹貴 お前のケツもいい感じに成長したなぁ、ぐへへへへ…」
ミッキー「やばい!やばい!やばい!もう行こう亜希さん!
先生 昨晩は 遅い時間にお手間かけました!
もうご迷惑かけないよう心掛けます!ありがとうございました!失礼します!」
亜希「そうね行こうミッキー、先生 お世話様でした!」
今二郎「ムリムリ、町一番の問題児がムリムリ。
いくらでも迷惑かけろ、ぐへへへへ…」
未有「あれ?亜希ちゃんに実樹貴君!
心配したのよ登校時間になっても来ないから…
あれ?二人とも昨日ままの服…」
ミッキー「いやいやいやいや!誤解ですよ!
それに今日は日曜日…いやいやいや!余計に誤解が!
その、あれだ!昨日の晩に病院に行ったら、念の為に一晩入院しろって言われて。
ね、ねえ亜希さん!」
亜希「そ!そうなのよ未有ちゃん。
(まあ誤解されててもいいんだけどね私は。)
乗りかかった船って感じで私も付き添ってたのよ。
そ、そんな事より 早速ジョギング始めたのね!」
未有「う、うん…本当に念の為?
怪我の具合が酷かったんじゃ…」
ミッキー「いやいやいやいやいや!僕も言った通り怪我の内に入らないって、今二郎先生から木工用ボンドでくっつけられたくらいなんですから!
あははは!あははは!
ウェア似合ってますよ!もう結構走ったみたいですね!」
未有「ホント実樹貴君は優しいんだね。
ごめんね 変に勘ぐって、私がどうこう言うのも変よ、二人は仲良しだもんね。
もう詮索しないで甘えます。
ところで実樹貴君 走るの凄く早いから、走り方 教えて欲しいんだけど…いい?」
亜希「え?!(なんか悔しい!未有ちゃんにばっかり!)
私にも教えてよミッキー!」
ミッキー「へへへ、二人から そんなこと言われたら嬉しいですね。
教えるのは得意ですよ、何しろ僕は小さい頃 才能ナシの超鈍足でしたからね。
サッカー始めるって決めてからネットで調べたり、父さんの走り方 研究して。理論と努力で とりあえずのいっちょまえ走法を身に付けたんですから。」
亜希「ウソウソウソ!あんな走り方して才能ナシってウソでしょ?!」
ミッキー「ホントですよ、走る才能なら見た感じ、亜希さんや未有さんの方があります。
走るのって やり方次第であっと言う間に上達するもんなんですよ。」
未有「それって実樹貴君に才能があったって事にならない?」
ミッキー「うーん、まあ とりあえず基礎的な第一歩を…
体を前に倒して 転ばないように足を出すって感じで…」
未有「こう?」
亜希「こうね?」
ミッキー「そうそう二人ともお上手です。
それで足は蹴り出すって感じより、回すっていうか次々って前に運ぶって感じで。
それから前ばっかりじゃなく、時々横見て流れる景色見て下さい。
横見るとスゲえ景色流れて早く走ってる感あるんで 調子に乗れるんですよ。
でも危ないからホント時々…」
未有「ホントだ!私凄く早く走ってる!」
亜希「楽しい!ミッキーも走ろうよ!」
ミッキー「それと 間寛平さんがアースマラソンした時みたいに、足が慣れるまでは膝を上げるより すり足みたいにすると膝を傷めないので…
聞いてないよ!
でも未有さん 昨日とは別人だな、普通に亜希さんと同級生の女の子だよ。
亜希さんのキュッと上がった お尻もいいけど、揺れる未有さんのお尻もいいな。
いやいや俺は亜希さん一筋だし、尻を好むのは本能で俺の人格とは関係無いからね。
ともあれ良かった良かったホントに良かった。」
天の声「どうしようもないエロガキである。」
亜希「この奥がミッキーのアパートなんだね!
メゾンドアイニージューって名前がアレだけど。
ここホントに素敵!森の小道みたい!
白いウサギ出てきそう!不思議の国に連れて行かれるぅ!
いつも通りかかる度に見てたけど、中々奥に行きづらいから気になってたんだ!
大家さんセンスあるよね、左にある大家さんのお宅もイイよね。」
ミッキー「う、うん、そうなんだよ…」
亜希「今日はね 私頑張って お掃除とかお洗濯とか買い物とかするから、ミッキーはゆっくりしてて。
でも お料理はお願いね。」
ミッキー「う、うん…(亜希さん昨日の晩に言ってたよな。
「私 命懸けで守ってくれた この人以外の男には触れられるのも嫌。」
はい、ありがとうございます。
触れたいです、思いっきり触れたいです。
「でも 聞かれちゃったみたい、私のどうしようもないバカさ加減を。」
はい、聞きました、意識朦朧でしたけど聞いちゃいました。
バカさ加減なんてとんでもない、未有さんに両手を差し出した、あなたの勇気と潔さに惚れ直しました。
「どのツラ下げて この人の女になれるって言うの?」
どんなツラでもかまいません。
お願いするのは こちらの方です、あなたの男にして下さい。
夢じゃないんだよな、どさくさまぎれって感じだったけど…
それだけに確かに、亜希さんも俺と同じ気持ちでいてくれてるんだ。
嬉しい、超嬉しい、だったら俺からはっきり気持ちを伝えなくちゃいけない。
出来るかな?こんな俺に そんな大それたこと…
いや!やれ!一度決心した事じゃないか!
どんな形にしろ亜希さんの気持ちを知ってしまったんだ!
このままじゃ俺は卑怯者だ!
俺が気にしてる事なんて全部 思いグセだ!
実際にはもう 有りもしない事なんだ!)」
亜希「ミッキー?どうしたの?考え事?」
ミッキー「あ、う、うん、見た目はさ おとぎ話に出て来る森の小道みたいな感じなんだけど、ヤブ蚊がいっぱいなんだよ。
僕の部屋は二階だけど、一階はもっと大変だろうね。」
亜希「二階?どの部屋?もしかして私の家が見えたりして!」
亜希「わぁ!ここがミッキーの部屋!
いい匂い!お料理の匂い!玉子焼きの匂い!」
ミッキー「へへ、ようこそ亜希さん。
偶然 片付いてて良かったよ。
(やっぱり この無邪気なはしゃぎっぷり大好きだ!)」
亜希「ベッドかと思ったら 一段高くして畳敷いてるんだ!
ここにお布団敷くの?
おもしろーい!でも なんか落ち着く。
あ!私の家 やっぱり見える!
ヤダ、お着替えしてるの覗かれてたかも!」
ミッキー「いやいやいや見てないよ!
最近まで亜希さんの家だって知らなかったんだから。」
亜希「冗談よ冗談、ミッキーは女の部屋を覗くような卑怯者じゃないもんね。」
ミッキー「(卑怯者…そうだ俺は卑怯者なんかじゃない。
今、伝えるのは今か?
いやいや落ち着こう、一息つこう。)
亜希さんお茶を淹れるね。
日本茶しかないけどガマンしてね。」
亜希「うん!ミッキーが淹れてくれる お茶大好き!」
亜希「ああミッキーがキッチンに立ってる。
新婚生活ってこんな感じなのかなぁ?
って逆じゃん!
でもイイなぁ、エプロン姿のミッキーもイイだろうなぁ。
カワイイだろうなぁ、エプロンの枕詞って確か裸よね。
裸エプロン!ミッキーの裸エプロン!
最高!!
裸エプロンのミッキーが包丁の音で私を目覚めさせるの!
あれ?それってお母さん?…玉子焼きの匂いと包丁の音…
あれあれ お母さんが見えてきちゃった。
あーお母さん!」
実樹貴に似た女「何を浮かれてるのかしら?
もしかして自分も人並みの幸せを手に入れられるなんて、大それた事を考えいるのかしら?」
実樹貴「出て来るな!お前は過去の人間だ!
母親らしい事なんて何一つしてくれなかったのに、いつまで俺にまとわりつくつもりだ!」
実樹貴の深層にある母親「つれない事言うじゃない。
過去と言うなら過去だけど事実あった事じゃない。
あなただけ幸せになれるなんて思わない事ね。
血のつながりはね、たち切る事なんて出来ないのよ。
あなたは私に良く似て人を不幸にする人間なの。
一人で生きて行かなければいけない人間なの。
人間はね 自分が受けた仕打ちを 同じ様に他人もせずにはいられない生き物なの。
その子に あなたと同じ思いをさせたいの?憎しみの連鎖に巻き込みたいの?
諦めなさい、あなたには私がいるじゃない。
ずっとずっと母さんと死ぬまで一緒にいましょう。
うふふうふふふふふふふふふふ!」
実樹貴「(くそ!くそぉお!)」
亜希「お母さ…違っ!ミッキー!!」
実樹貴「うわああ!うわああああああ!!」
亜希「きゃああああ?!」
実樹貴「ご!ごめん亜希さん!」
亜希「痛たた…こっちこそごめん。
あの…突然だったかな?びっくりさせちゃったかな…
え?!ウソ!なにそれ?!鳥肌?!」
亜希「やっぱりだ!やっぱりそうだったんだ!!
嫌ぁあああああああああ!!」
ミッキー「うわっ!サトイモが!おばあちゃんから送られたサトイモが!
亜希さん待って!!」
実樹貴「亜希さん待って!誤解だ!誤解なんだ!」
亜希「離してよ!誤解って何よ!
私ちゃんと理解してるわ!
口でいくら言ったってごまかせないわよ!鳥肌立てるほど私に触られるの嫌なんでしょ!
無神経に人を傷付けて、汚い男に目を付けられて、未有ちゃんを踏みにじった私が嫌いなんでしょ!!
お情けで一緒にいてくれてるならありがた迷惑よ!
そんなの あなたにだけはされたくない!
触れてはいけない あなたと一緒にいるなんて死んでも嫌!!」
実樹貴「違う…違うよ…話を聞いて…」
亜希「痛い!離してって言ってるでしょバカ力!」
実樹貴「行かないで…」
亜希「えっ?(ミッキーってそんなこと言うの?
震えてる、ミッキーが震えてる。
あんな強そうなヤツも全然 恐れなかったミッキーが震えてる。
そんな顔しないでよ。
私が行っちゃうのが怖いの?そんなに怖いの?
そんなに手が震える程に?
ああ血が!傷口が!どうしよう!そんなにまでして私を引き留めたいの?!
ああ!私また自分のことばっかりだった!
自分が傷付くことばっかり怖がってた!
痛いのは私の心じゃない、痛いのはミッキーの方!)」
亜希「ごめんねギャーギャー騒いで、もう落ち着いたから そんな顔しないで。」
ミッキー「あ、ああ亜希さん。」
亜希「ミッキー痛い?ごめんね 少しガマンしてね、どうしてもこうしたいの。
(ミッキーの左手、私を守ってくれた左手。
私のバカさ加減を全部 引き受けてくれた左手!
愛おしくてたまんない!こんなことしたって叶わないけど、その痛みを分けて欲しいの!
傷の痛みじゃないわ、少し考えたら分かったのよ。
ミッキー思いつめた顔してたじゃない!
カン違いでも何でもいい!ミッキーは何かと戦ってるの!私の為よ!
私の為に戦ってくれてるの!
今度は私が守る!嫌われたって突き飛ばされたって守り抜いてみせる!!)」
ミッキー「亜希さん…俺…話さなきゃいけない…さっきの事を説明しなきゃいけない…
だから待って、どこにも行かないで…」
亜希「うん、どこにも行かない、嫌われたって何だって あなたの側にいる。
ほら、もう大丈夫、ミッキーは大丈夫だよ。」
ミッキー「ありがとう…ありがとう…亜希さんありがとう。」
亜希「覚えてる?ミッキー、やりたい事行きたい所をガマンしなくちゃいけないって とっ散らかった私を、こうやって落ち着かせてくれたでしょ?
やれてる?私にも同じようにやれてる?」
ミッキー「うん、もう大丈夫。
ありがとう亜希さん、勇気 貰ったよ。
もう母親の事なんか怖くない、俺の話を聞いて亜希さんにどう思われようと、俺の気持ちは変わらない。
ふくちゃんは 俺がふくちゃんや公園のみんなを助けたみたいな事を言ってくれてたけど違うんだ、助けてもらったのは俺の方なんだ。
ああ、面倒くさいけど俺、ホームレスって言葉は死んでも使いたくないんだ。
だから 公園のみんなって言ってる。」
亜希「うん、分かった、私も公園のみんなって呼ばせて貰う。
あの、母親ってオリビアさんの事?とってもいい人だったけど…」
ミッキー「母さんに会ったの?いや、母親ってのはオリビア母さんの事じゃなく、産みの母親のことなんだ。
また 面倒くさいけど、産みの母親は母親って呼んで、オリビア母さんは母さんって呼ぶ。
それで産みの父親はパパで、剛二郎父さんは父さんって呼んでる。
今から話す事に関わるから覚えておいて。」
亜希「うん、分かった。」
ミッキー「回りくどくなったけど、母親の事と公園のみんなの事は亜希さんに話しておかなくちゃいけない事なんだ。
そうしないと俺、亜希さんに気持ちを伝えられない。」
亜希「え?気持ちを?え?!え?!」
ミッキー「前にも言ってたけど俺が6歳の時パパは死んだ、交通事故だった。
それから母親はパパの工場の取引先との交渉やらで忙しくなって、家にも殆ど帰らないようになった。
パパの技術とマンパワーでやってた工場だったから、取引して貰えなく ならないように必死だったんだろうな。
パパの遺した工場を潰したくなかったんだろうな。
でも寂しかったよ。」
天の声「後半に続く。」




