佐藤 実樹貴は男の子
ミッキー「ふくちゃーん!」
ふくちゃんと呼ばれた中年女性「あらあらタカ君たら そんなにはしゃいで。
余程 見たい映画だったのね。」
ミッキー「映画なんてどうでもいいよ!
ふくちゃんに会えるの楽しみで仕方なかったよ!」
ふくちゃん「あらあら 嬉しい事 言ってくれるわね。
でももう18歳でしょ もう少し周りの目を気にしないといけないわ。
大人の所作を身に付けてもいい年頃よ。」
ミッキー「迷惑だったかな?」
ふくちゃん「全然、本当は私も嬉しいのに説教じみた事言っちゃったわね。
もうとっくの昔に教師では無くなってるっていうのに。」
ミッキー「先生かどうかは教員免許が有るか無いかの問題じゃないよ。
今だって学校に居場所の無いヤツの先生じゃないか。
そうだ!桜子さんから受け取ったよ、皆んなで お金出し合ってくれたんだね。
福田 佐知子って封筒に入ってた名簿にあったよ。
ありがとう!大切に使わせてもらうよ。」
福田 佐知子 元中学校教師「あらあら桜子さんたら 私の名前はいいって言ったのに。
この前のセミナー好評だったわよ、でも講師として呼んだ藤郷さんの所の部長さんへの謝礼やら 会場の賃貸料やら、タカ君が捻出してくれたんでしょ?
それじゃいつまでも続けられはしないわ。
私達の望みは出来るだけ多くのセミナーで、出来るだけ沢山の人に社会復帰してもらう事なんだから。
でも笑っちゃうわね、かわいいおっさん おばさんになろうセミナーなんて。
でも言い得て妙だわ、人間 辛い目に遭ったら かわいくなくなっちゃうものね、かわいくなくなったらかわいがられないし、そうしたら人間関係も上手く行かなくて仕事だって長続きしないわ。
褒めてるのよ、タカ君は物事の本質を見極める目をもってるって。」
ミッキー「へへへ、もちろん参加してくれる人がいる限り何度だってやるさ。
それより もう時間だ、映画始まっちゃうよ!行こう!行こう!」
ふくちゃん「うふふ あの頃の事を考えると、こんなに素敵に成長したタカ君と一緒に映画が見れるなんて考えられなかったわね。」
ミッキー「三カ月ぶりだね、ふくちゃんはどうしてた?」
ふくちゃん「相変わらずよ、この歳でそう変化があっても困っちゃうしね。
タカ君の方はどうなの?部活 辞めちゃったんでしょ?何かあった?」
ミッキー「え?!何で知ってるの?
もしかして この前の俺が辞めた後の試合 見に行ってくれたとか?
ごめん、ふくちゃんには知らせておくべきだったよ。」
ふくちゃん「本当に勘の良い子ね、私の事ならいいの。
あんなに頑張ってたのにどうしたのかしらって…」
ミッキー「心配させちゃったね、ごめんよ。」
ふくちゃん「だから私の事はいいって言ってるじゃない。
まあね 元々サッカーが好きでやってる訳じゃ無かったのは知ってるから、安心した部分もあるんだけどね。
何かやりたい事を見つけたのね?教えてくれるかしら?
相棒の再放送を見るっていうのは無しよ。」
ミッキー「まいったな、ふくちゃんには何でも分かっちゃうんだよな。
三カ月前のセミナーでさ、何ていうか手ごたえって言うのかな?
生活かかってる参加してくれた公園の皆んなには悪いんだけど、凄く楽しかったんだ。
それで もっと本格的に取り組みたいって思ってさ、
相談してた深爪大学の総合経済学部の先生もゼミに参加していいって言ってくれたし。
でもさ おかしいんだよ、予定なんて全部 吹っ飛んじゃってさ、今スポーツバーでバイトしてるんだ。」
ふくちゃん「あはは、とても嬉しそうに言うのね。
何かとても素敵な事があったんでしょう?」
ミッキー「ふくちゃんにはホント何でも分かっちゃうんだよなぁ。
俺を誘ってくれたマスターも素敵な人だし、常連のお客さん達も素敵な人ばっかりだよ。
それに藤郷さんとマスターは昔からの親友だってさ、世の中 広いようで狭いよね。」
ふくちゃん「それだけじゃないでしょう?」
ミッキー「え?!それってどういう意味?」
ふくちゃん「言葉そのままの意味よ。」
ミッキー「へへへ ふくちゃんには何でも分かっちゃうんだよなぁ。
ホントは言いたくて仕方なかったんだけど、素敵な人に巡り合えたんだ。」
ふくちゃん「さっきの素敵とは意味が違うみたいね。」
ミッキー「うへへへへへへ、もしかしてずっと見てたとか?
とっても騒がしくて、とってもおてんばで、とっても素直で、とっても綺麗で、とっても可愛くて、とっても感性豊かで、とってもいい匂いがするんだ。
フルートがプロみたいに上手で、プロ以上に素敵な曲を作れるんだよ。
力強くて綺麗な目を見てると 何でも言う事を叶えてあげたくなっちゃうんだよね。」
ふくちゃん「うふふ その人のこと好きなのね。」
ミッキー「うん…でもさ…近い将来 日本を代表するような音楽家になる様な人なんて俺には高嶺の花かな…」
ふくちゃん「何 言ってるのよ!贔屓目抜きでも あなた以上に素敵な男の子なんていないわよ!
自信 持ちなさい、その人と吊り合わないなんて言う前に、自分に足りないと思うものを身に付けたらいいじゃない。
折角 信じられる人に巡り合えたんでしょ?!」
ミッキー「まいっちゃうよなぁ…信じられる人か…結局 俺はそこなんだろうな…
ふくちゃん 俺は人を信じられる強い人になれるかな?」
ふくちゃん「あたりまえじゃない、私はねタカ君だからこそ本当の意味で人を信じられる人になれると思うわ。」
ミッキー「ありがとう ふくちゃん。
俺 自分の気持ち伝えてみようと思う。
俺のこと知って貰おうと思う!」
ふくちゃん「良かった 本当に良かった。
タカ君がそんな人に巡り合えるなんて…
ごめんね もうこの歳になると涙腺の栓が抜けちゃって…」
ミッキー「大げさだなぁふくちゃんは。
でも自分でも女の人を好きになれるなんてびっくりしてるよ。」
男の子?女の子?「ねえ ねえ フルートのお姉ちゃんどうしたの?」
亜希「えっ?!私がフルートのお姉さんって分かるの?
ああ、サングラスしてないや、そんな事も気付かなかったのね。」
男の子?男の子?「ねえねえ お腹痛いの?誰かにイジワルされた?」
亜希「違うの…大切な人を信じられない自分が嫌になっちゃっただけなの。
うーん 変な事 言っちゃったわね、ごめんね。
ありがとう大丈夫よ、美味しいもの食べて元気になるわ。」
男の子?女の子?「そんなの美味しいもの食べたくらいじゃ元気になれないよ!
僕の宝物あげる!リジャードンのシールだよ!
リジャードンはパパと交換した一番強いポキモンなんだ!
僕の一番のお気に入りなんだ!
お姉ちゃんもポキモンやってる?やってるなら僕のリジャードンと交換してあげるよ!だから元気出して!」
亜希「え?え?どうして?どうしてそんな大切なリジャードンを私にくれるの?」
女の子みたいな男の子「何言ってるんだよ、お姉ちゃんは僕のお嫁さんになる人だよ、お嫁さんになる人が元気なかったら励ましてあげるのが男なんだよ!」
亜希「うふふ かわいい顔して かわいいこと言うのね。
ねえ リジャードンのシール受け取ったら私はキミのお嫁さんになるの?」
男の子「そうだよ!」
亜希「それじゃちょうだい、こんな大切なものありがとう大切にするね。」
男の子「うん!きっと迎えに来るから もう泣いちゃダメだよ!
それから これからどんな事があっても僕を信じてね!僕もお姉ちゃんの事 信じてるから。
絶対だよ!僕のこと信じてね!それじゃバイバーイ!」
亜希「ちょっと待って!その前に教えて キミの名前教えて!」
男の子「僕の名前?お姉ちゃんもう知ってるじゃん、バイバーイ!」
亜希「ああ 速い!なんて足が速いのあの子…
私あの子に会った事あるのかな?名前知ってるなんて…
でも遠い昔に会った気もするし、さっき会った気もする…」
ミッキー「あれ?亜希さん?亜希さんだ!
さっきはどうしたの?電話切れちゃったけど…」
亜希「ああ!ミッキー!あ、ああ…」
ふくちゃん「(あら この子が例のフルートのお姫様ね。
どうしたのかしら?様子が変だけど。
でも私が口を出すのもおかしいわね、どうしたものかしら)」
ミッキー「亜希さんどうしたの?お腹痛いの?」
亜希「え?!あ、あの、失礼を承知で言うわ!
でないと私変になりそうなの!その人は誰?!」
ミッキー「ああ ごめんごめん、紹介するの忘れてたよ。
この人は ふくちゃん、僕のお母さんさ。」
亜希「え?!何それ?!どういう意味?!」
ふくちゃん「ちょっとタカ君!本当のお母さんに失礼だし、変な誤解を生むわよ!」
ミッキー「いいんだよ!それにホントのお母さんって あの女の事 言ってるの?!」
ふくちゃん「ちょっとタカ君!あのね、お嬢さん良く聞いて、私はね…その…何て言ったら良いのかしら…」
亜希「何で口ごもるんですか!正直に言えない関係だからじゃないんですか!
私 見たんだから!ミッキー…あなたが女の人からお金貰うの!
その人とも そういう関係なの?!私はあなたにとってお母さんでもない人を僕のお母さんだなんて笑って言える人なの?!!」
ミッキー「え?亜希さん何言ってんの?それってどういう事?
もしかして俺の事 つけてたの?…」
ふくちゃん「ちょっとタカ君!(まずいわタカ君の悪い癖が…もう正直に言うしかないわね)
お嬢さん落ち着いて聞いて、私は福田 佐知子といいます。
10年前まで中学校の教師をやってました、でもある理由から…」
ミッキー「いいよ!コソコソ俺の事つけて回る人にそんな事話さなくたって!
俺 もう分かったんだ!信じられる人なんていないんだって!」
亜希「(怖い…ホントにミッキーなの?嫌、嫌嫌嫌嫌嫌嫌!)」
ふくちゃん「タカ君は黙ってなさい!
私はある理由からホームレスになりました。
ある理由は実樹貴君とは関係無いから話せないけど、実樹貴君の努力のおかげで私を始め沢山の人が再び定職に就く事が出来たんです。
さっきあなたが見た女の人はホームレス支援団体の人で、渡したお金は実樹貴君にお世話になった人達が、
せめてもの恩返しがしたいと自分のお給料の中から少しずつ出しあったものなの。
実樹貴君はあなたが思うような人で間違い無いわ、不幸な行き違いがあっただけなの。
お願いだから誤解を解いて下さい、私のせいで実樹貴君やあなたに不幸な誤解を生んでしまったなら、私はどう償って良いかも分からない。」
亜希「嘘……そんな……」
昨夜の銀三郎「あいつの事、他人から聞き出したりしないで欲しいんっす。
どうしても知りたい事があったら本人から聞いて欲しいんっす。
小学校3年の時だったかと思うんすけど。
あいつ登校拒否になって半年くれえ学校来なかったんすよ。
原因はおかしな噂っす、あれこれ親同士の下らねえ噂話を信じたヤツが言いふらしたんすよ。
それでも実樹貴、見た目はヤサ男っすけど、メンタル極強なんで、周りの人の力添えもあって、なんとかかんとか乗り越えやがったんすけどね。
それ以来 自分の知らねえ所で自分の話されんのを極端に嫌がるんすよ。
実樹貴の事、俺の親友の事、どうかよろしくお願いするっす。」
亜希「そんな…そんなことって!
ごめん!ごめんなさい!ごめんなさい!私取り返しのつかないことしたゃった!!
許してなんて言えない!ごめんなさい!!」
ふくちゃん「タカ君追い掛けなさい!!」
ミッキー「いいんだよ!もう終わったんだよ!」
ふくちゃん「ふざけんな!!このひねくれ者おおおおおおおお!!」
ミッキー「ぶへえええええええええ!!」
ふくちゃん「タカ君良く聞きなさい!
確かにあなたは辛い目に遭って来たわ!
人を信じられなくなるのは良く分かる!
でもね そんな事は関係ないの!
あなたは運命の人に巡り会ったの!
あなたの命をかけて守り抜く人に巡り会ったの!
そして不幸な行き違いにも遭ってしまったわ!
だから選ばなくちゃいけない!あの子の胸が痛むか あなたの胸が痛むかをよ!!
ひねくれて過去に縛られ続けるの?それとも あの子を守り抜いて未来を生きるの?
選びなさい!!」
佐藤 実樹貴「へへへ、目が覚めちまったぜ ふくちゃん。
言われるまでも選ぶまでもねぇ!!
こっちの胸さ!!」
ふくちゃん「行きなさい!!」
佐藤 実樹貴は男の子「おう!晩飯の約束すっぽかしちまうけど行くよ!!
ごめんふくちゃん!!」
ふくちゃん「うふふ 単純ね、だけど誰かを守るってなると只事じゃなくなるんだから、本当に素敵な男に成長してくれたわね。」




