乙女とアメリカ政府の野望
♩あたーらしーい朝が来た 希望の朝だ♩
♩あたーらしーい嫁と姑の折り合いがつかず 事あるごとに
「こんな塩辛い お味噌 飲ませて早死にさせるつもり?!」
「あら お義母さん、まだ味覚はまともなのね。」だとかな〜んとか♩
「こんな歌はないんだけど…
亜希さん睦美さんと仲直り出来たかな?
逃げてはないよ、逃げてはないけど途中で帰っちゃったからな。
でもさ 睦美さんあんなに怖いんだもん 仕方ないよね、ね!
って♩自分に嘘はつけなあ〜い そんな私に優しいのはお酒だけ〜♩
こんな歌はないんだけど…
あれ?あれは亜希さんの革ジャン…あの部屋 亜希さんの部屋なんだ…
亜希さん…亜希さん今日も来るかな?
あーあ、何考えてんだろ 音大生って忙しいだろうし、毎日来る筈ないよな。」
「わっ!!」
「うわああああああああ!!」
「おはようミッキー!」
「お、おはよう亜希さん。」
「びっくりした?」
「するに決まってる!」
「なんで?」
「なんでって…その…」
「私の事 考えてたから?」
「ぬぇいんぬぇい…」
「私の部屋 見てたから?」
「ああああああああああ!!」
「あはは!テンパっちゃって可愛い。
ミッキーが見つけてくれるかもって 窓際に革ジャン掛けておいたんだ、大成功だね!」
「そりゃないよ!亜希さんって意地悪だよ、あんな目立つ物…
そ、そうだ!それよりもアレだ!睦美さんと仲直り出来たんですか?」
「(う!何この罪悪感、このコ 本当に自分の事より人の事 考えてくれるんだ。
こんなにテンパってんのに私の心配してくれる。)
ごめんねミッキー、私 調子に乗ってた、荷物 大丈夫だった?」
「え?そんな 謝んなくていいんですけど。
(亜希さんって正直で素直だよな、悪いと思ったらすぐ謝れるって、簡単そうで難しいよ。
本当は また会えて凄く嬉しかったし。)」
「良かった、ねえ ミッキー、その忍者の子供が持ってるみたいな荷物は なぁに?」
「あはは、忍者の子供!確かにそう見える。
棒が余計ですよね、いや 風呂敷 使った時点でおかしいか。
これはお弁当です、学食は安いけど 毎日だとバカにならないんで。」
「ミッキーが作ったの?」
「そうですけど、そんな事より睦美さんとは仲直り出来たんですか?」
「うーん、それとこれは 関係 無いようであるのよね。
仲直り出来たって言えば出来たんだけど、睦美ったら 毎日ゴハン作る苦労を思い知れって、
これから一週間 私が食べる分は私が作るハメになっちゃったのよ。」
「関係 無いじゃないですか。
料理も いろいろ試したりすれば 楽しいものですよ。」
「それは 名選手は名監督になれないって話よ。
フルートの先生にも苦労して上達して教えるの上手な人と、
感性100%の人がいて、プァーとかシュアーとかしか表現出来ないから、実際どうしていいか分かんないのよね。
つまりよ、どう頑張っても料理出来ない人はいるの、それは私。
それが 料理出来る人には分かんないの、こんな簡単なのにってね、それがあなた。」
「あはは!じゃあ昨日の晩御飯は亜希さんが作ったんですね。
どんな料理 作ったんですか?」
「ダイコン」
「うん」
「ニンジン」
「うん」
「キャベツ」
「うん」
「豚肉」
「ちょっと待って下さい、材料の名前しか出て来ないんですけど。
その材料でどんな料理を作ったんですか?」
「だから言ったじゃない、私は料理が出来ないの。
美味い不味いの前に 料理としてのカッコウもつかないの。
だから 材料を煮たり焼いたりして お醤油をかけて食べたの。」
「あはははは!あはははは!あはははは!
苦しい!腹痛い!
クックパッド見て 手順と分量 通りに調味料 入れたらいいじゃないですか。
楽譜を見て 書かれている様に演奏するのと同じだと思いますけど。」
「そんな 恐ろしい事なんか出来ないわよ!
私がやったら どうなるか分かってんの?!
何かが違うの、レシピ通りにやっても 見た目も味も何かが違うの。
これはね、もう私が悪いんじゃないの、呪いが掛けられているか、前世からの何かなのよ。
だから ね、その…」
「あはははは、弁当と仲直りが繋がりました、良かったら僕の弁当 食べて下さい。」
「え!いいの?催促しちゃったみたいだけど、ミッキーのお昼はどうするの?」
「学校の前にあるパン屋さんで 焼きそばパンを食べます。
時々 無性に食べたくなるんですよ、今まさにそんな感じなんで 亜希さんに感謝ですから、ですからー。」
「ありがとう!もうミッキーったら ホント優しい、涙 出ちゃいそう。」
「おせっかいかも知れないですけど、今日の晩御飯はどうするんですか?」
「それよ!ああ、もう漢字で言うわ、嗚呼 !今夜も あのエサを食べなくちゃいけないの?!
上野動物園のゾウが食べてたヤツの方が美味しそうだったわ、リンゴとか入ってて。」
「確かにゾウのゴハンは美味そうですね。それじゃあ また ベンドニーに来ますか?マスターには話しておきますから。」
「ホントに?!またミッキーの晩御飯 食べられるの?!
嬉しい!超!超!嬉しい!」
「それと 明日の お昼はどうします?
今日の弁当が気に入ってくれたなら、明日もどうですか?」
「もう 嬉しすぎて死んじゃう!
でもさ 気に入るに決まってるけど、気に入ったかどうか 食べてすぐ知らせたいのよねぇ…
(はあああ、ドキドキするううぅ、伝わったかな?ガッツいた感じしないかな?
やんわりと連絡先 聞いたの分かったかな?」
「はい、これLINEのQRコード。
(はあああ、いきなりチャンス来た!あんまり早く出して、昨日からQRコード用意してたのバレないかな?)」
「ありがとう 食べたら必ず連絡するね。
(やった!やった!ミッキーの連絡先ゲットオォ!
でもヤケに早かったな、きっと こういうの慣れてるんだよね、
クラスじゃ あんまり人と話さないって言ってたけど、
人あたりいいしカワイイから きっと学校の外にも知り合い多いんだろうな。
オトナの女とも…嗚呼ヤダ!考えたくない!」
「気に入ってくれたなら、明日の弁当はベンドニーのドアに引っ掛けときますから。」
「え?!なあに?!」
「明日の弁当はベンドニーのドアに引っ掛けておきます。」
「うん、ありがとう、私この時間じゃちょっと早いんだ。
ミッキー来るの待ってたいけど、多分 寝坊しちゃう、そしたら待たせちゃうから。」
「うん、ああ もう学校 着いちゃった、それじゃあ また夕方。」
「うん またねミッキー。」
♩これっくらいのお弁当箱に、オニオニオニオニ鬼嫁に殺されるぅ〜。
何言うてますの義母さん、トリカブトなんて買うてません〜♩
「あまりの嬉しさに変な替え歌 歌っちゃったわ、ミッキーのお弁当 何が入ってるんだろ?
もう 天気もいいし 誰にも見せたくないから今日は中庭の芝生でピクニック気分よ。
うわあああぁ予想通りで予想以上!
これは だし巻き玉子ね、うーん美味しい!なんか色んな味がする、あーお料理に詳しかったら 色んな味が分かって もっと楽しめるんだろうな。
それと ほうれん草の胡麻和え、これも隠れた味がするな。
これは つくね、やっぱり単純な味じゃない、後から大葉の風味が追いかけて来る。
混ぜ御飯は 何が混ざってんだろう?魚だわ…鯵ねアジ!
嗚呼もう なんて手が込んでるの!料理バカじゃなく バカ料理の私にはもったいないよ、ありがとうミッキー!
そうだ!お礼のLINEよ!私ったら なんで食べる前に写真 撮らなかったかな?
食べかけ撮ったら、写真 撮るのも待てない 腹ペコ女って思われるかな?
嗚呼 今更だわ、良く考えたら もう腹ペコ女の印象は強く与えてしまってるわね。
それに 撮っても送らなきゃいいのよ。
(ありがとうミッキー、とっても美味しかった、あつかましいけど明日もお願い。
大好きミッ…)
いやいやいやいや、大好きはまだ早いわ!
全然 恋愛対象にされてなかった場合、調子に乗ったバカ女の痛手から立ち直れないもの。
スタンプはどうしようかな?女の子っぽいのがいいわね、
滅多に使わないけど おもちちゃんのこれ、はい、これでオッケ。
…うわ!もう返って来た!
(どういたしまして、気に入ってもらって とっても嬉しい。)
ですって、あっ!写真来た!
あははは!あははは!焼きそばパンにペヤング足し!これ美味しそ!
嗚呼、私も写真送りたい!そうだ!食べた所を 他から持って来てこうやって隠して、パシャっとな。
…あっ また返って来た!
(だし巻き玉子の隠し味はチョコレートとクコの実です、気付いて貰えましたか?)
嗚呼嗚呼!バレてる!だし巻き玉子無くなってるの、我慢できないで食べたのバレてる!
でも チョコレートってスゲェ!自分で考えたのかな?
そういう発想って音楽にも必要よね!
セオリー外した スケールに無い音も、時には自分の気持ちを表現するのに使えるのよ。
嗚呼!降りて来た!メロディ降りて来た!
ありがとうミッキー、あなたと出会ってから短い時間だけど、私の感性こんなにも彩り豊かになってるの!」
♩吹けば飛ぶよな 将棋の駒も〜♩
「こんちは!マスター !あつかましいけど ご馳走になりまーす!
ミッキーお弁当とっても美味しかったよ!
う!うわ!二人共 何やってるの?!」
「あー?亜希ちゃんか、今 対局中なんだよ 静かにしてくれるかな?」
「え?え?対局中?」
「そうですよ、今 2億3000万手先を考えてるんですから 静かにして下さい。」
「何言ってるのミッキー?対局中?2億3000万手先?」
「そうだよ、そこまでヒント出して分かんないかなぁ、鈍いな亜希ちゃんは。」
「私 鈍くない!こんな向かい合ってモジモジしてるのなんて 他に見た事ないもの!
誰が見たって どうかしちゃった人だもの!」
「そんな失礼な!僕とマスターの間に何か見えませんか?
ヒントは 流れてる歌と、対局中、2億3000万手先、ですよ。」
「ミッキー そこまで言っちゃったら つまんないよ、鈍い亜希ちゃんにも簡単に分かっちゃう。」
「歌?将棋の駒がどうこうって歌?将棋?将棋よ!!見える!二人の間に将棋盤が見える!
ワケあるか!!そんなモジモジしてる棋士がいるか!」
「亜希さん やっと気付きましたね、エアー将棋に。」
「そう、これはエアー将棋、有段者が差し手を言い合って 将棋盤 無しで指すのは盲将棋と言うんだが、
これは お互いに何も考えて無いからエアー将棋と言うんだ。
為になったね亜希ちゃん。」
「あははははは!あははははは!エアーと盲将棋の違い!あはははははあははははは!
で、でもミッキーは2億3000万手先を考えてたわよ!」
「浅い!浅い亜希さん、2億3000万手先を考える、それ即ち何も考えていないのと同じ!」
「あははははは!あははははは!もうダメ!
誰かお客さん来るまで そうしてるつもりだったの?」
「対局が長引くと翌日に持ち越しになる場合もあるからね、亜希ちゃんが来てくれて助かったよ。
ゴルフで言う所の うぃちもつサスペンデッドだね。」
「え?お客さん来なかったら明日までやってなきゃいけないみたいな感じなんだけど。
それにはっきり聞こえなかったけど日没サスペンデッド?」
「そうです イチモツサスペンデッドです。」
「嗚呼!はっきり言った!ミッキーはっきり言っちゃった!」
「言ってませんから、流れで 思わず言ってませんから。
さて マスター亜希さん、今日のまかないは鯖の味噌煮ですよ。」
「きゃーミッキーったら赤くなっちゃってカワイイ。」
「食べさせませんよ。」
「ウソ ウソ ごめんミッキー!」
♩デンデラ龍が出てくるばってん♩
「あー美味しかった!ミッキーごちそさまでした!
マスター、いつもいつも私を甘やかしてくれて ありがとうございます。」
「礼には及ばないよ、亜希ちゃんはウチの子だからね。
学校の課題が一段落したら またウチでバイトしなよ、
思った通りミッキーが人気者でさ 平日でも忙しいんだよね。
亜希ちゃん目当ての客も沢山いるし、二人揃ったら また この店にもバブルが戻って来るよ。」
「へー、やっぱりミッキー人気なんだ。
でも なんだかヤキモチだな、料理できない私より ミッキーの方がずっと役に立つもの。
バイトは難しいです、二年生になってから課題も本格的になって、メロディだけじゃなくリズムセクションから編曲したりしなくちゃいけなくて、
時間かければ かけただけ分かってくるものとかあるから、今は今しか書けない曲を沢山作りたいの。
それにフルートの練習も忘れちゃいけないし。
でも こんなに音楽に のめり込めるのは、このお店で演奏させてもらって お客さんの反応にナマで触れたからなんです。
良い演奏にはすぐ拍手くれるし、イマイチの時は うーんって感じになるし、コンテストじゃ そういうの無いもの。」
「僕も聞きたいな亜希さんのフルート。
亜希さんは凄いなあ、もう人生かけて やりたい事があるんですね。
それがもう 人に認めてもらえるレベルなんだ。
僕には何も無いからなぁ、一年先の自分も想像出来ない。」
「何言ってるのミッキー!私あなたが羨ましいの。
何でも分かってて 思いやりがあって優しいし、真剣に関わってくれるし。」
「うん…」
「へー知らない間に随分と仲良くなったみたいだねぇ。」
「え?!そ!そ!そういう訳じゃ…ま、まあそうかな?
ねぇミッキー。」
「うん…」
「ちょっと聞いてる?何 見てるの?」
「この小麦粉の成分表なんですけど。」
「はぁ?」
「”遺伝子組換えでない”ってよく書かれるじゃないですか。
何か違和感なんですよね、”違和感組換えではない”って書くべきですよね。」
「はぁぁ?」
「もしくは”非遺伝子組換え”って書いてもいいな。
”遺伝子組換えでない”ってクエスチョンマークが付きそうですよね。
遺伝子組換えでない?ってのが自然ですよね、こうなると北海道弁だ!
なまら遺伝子組換えでない?ってな感じで。
そうだ!これは陰謀だ!
アメリカ政府から圧力をかけられて 遺伝子組換え大豆やら小麦やらを既に輸入していて、混ぜちゃってるのを誤魔化してるんだ!
それで 後でバレた時の事を考えて、遺伝子組換えでない?なんて混入を ほのめかしてるんだ!
これ良くない?良くないこれ?組換えでない?
あははははは!あははははは!なんか可笑しくなって来た!あははははは!あははははは!」
「ははは、またミッキーが 可笑しな所に入り込んだよ。
オザケンが久しぶりに曲 出したせいかな?
あははははは!」
「え?!ミッキーってしょっちゅう こうなるの?
(うーん、今日はもっと仲良くなろうと思ってたんだけどな。
昨日は凄く距離がつまった感じがしたけど、
ミッキーの生い立ちとかに踏み込んじゃったせいで 距離 置かれたかな?
辛い思いしてきたんでしょ なんて言っちゃったからなぁ。
会ったばかりで気持ち悪いって思われたかな?
私ったら何で突っ走って あんなこと言ったんだろ?
そうだ!お母さんだ!
「亜希 よく聞いて、辛い時 悲しい時のおまじないよ。
辛いの悲しいの いつかみんな笑顔に変わる。」
そう、大きくなってからは、
「よく笑う人ほど陰で泣いてる、あなたに笑顔をくれる人の隠れた涙から目を逸らしちゃダメ。」
とも教えてくれたんだ。
ねぇ お母さん、ミッキーは陰で泣いてるの?
こんな入り込んじゃって笑ってるの見たら そうは思えないんだけどなぁ。
うーん、今日はマスターもいるから これ以上の進展は望めないかもね。
明日は お望み通り私のフルートを聞かせてあげるわ!
ガッチリ行かせてもらうわよ!朝から晩まで私の事しか考えられないようにさせてあげるわ!全く自信 無いけどね!)
マスター、ミッキー、ごちそさまでした!
今日は帰って曲作ります、いい曲出来たら それが恩返しってことにして下さい!」
「あははははは!あははははは!亜希さんまた明日!」
「また明日、良い曲 出来たら真っ先に聞かせてくれよ。」
「全くこっちの気も知らないで まだ笑ってるわ。
次回は濃厚なラブシーンが見られるかもよ、見てらっしゃい おほほほほ!」




