3:幼馴染は勇者?
家に帰り、雨に濡れて冷えた体をシャワーで温めながら考える
(とりあえず、界人のパパとママは2人共出張に行ってて3日は帰らんって言ってたから、界人がおらん事はまだバレへん…)
学校には私が休みを伝えれば多分大丈夫。
…でも、どちらも4、5日が限界だろう
界人のパパとママも忙しい人達だから、出張から帰った後も仕事で帰ってくるのは遅いだろうけど
さすがに息子が夜家に居ない事には気付くはず
私が友達の家に泊まりに行ったと伝えたとしても、それで誤魔化せるのはせいぜい2日が限界だ
連絡がつかなければ誰の家に行ったのか聞かれるし
それを知らないと答えれば学校に連絡が行くし、学校を休んでる事を知られれば、最終的には警察に捜索願が出されて……
「や、やばぁああい!!」
思ってた以上にやばい!異世界召喚ってこの世界では普通に行方不明や!!
慌ててお風呂から出て自分の部屋へ駆け込むと、本棚にある異世界召喚ものの本を片っ端から出していく
「これは…あかん、これも…あかん!」
私が持っている異世界召喚ものの本はどれも聖女として召喚されたもので、そのどれもが元の世界へは帰らず異世界でヒーローと結ばれてハッピーエンドだった
「誰も帰ってきてないやん…どうしよ」
「ハッ…女の子が主人公やからあかんのかも!」
恋愛ものじゃなくて魔王を倒す旅に出るやつじゃないと参考にならない!とスマホで検索して出てきた勇者召喚系ライトノベルのあらすじと最終章だけを読んでいく。
「なんか、ハーレムやったりとかチート能力でざまぁみたいなんが多いんやな…」
珍しい設定のものが多いけど、だいたいが異世界を受け入れてそのまま異世界で生きていく事を選んでる
「界人も最初は帰りたいやろうけど、実は珍しい力があって、最強のパーティー組んで、一緒に旅した可愛い女の子と結婚したりして、そのまま異世界で楽しく生きていくんかも…」
(界人にとって、この世界に必死に帰りたい理由ってあるんかな?)
連れ戻す方法なんてないし、もしあったとしても
私にとっては、このたった2、3時間ぐらいの出来事が界人がいる世界では何年、何十年の出来事で
もうこの世界に帰る事は何十年も前に諦めた過去の事だとしたら、連れ戻せたとしてもそれって界人にとって幸せな事?
いや、それでもまだどっちも幸せな方だ
そんな状況になる前にもしかしたら界人は死んでる可能性だって…
「ふっ、うぅ…かいとぉ…!」
最悪なパターンを想像してポロポロと涙がこぼれ落ちる、界人がゲームセンターで取ってくれた大きなウサギのぬいぐるみを抱き締めて、あのとき界人の手を掴み損ねた自分を責める
「グスッ…私が異世界、異世界言ってたから界人は連れて行かれたんかなぁ…ごめんなぁ、あんた漫画のキャラクターみたいやからきっと異世界でもいけるって思われたんやわ…界人、グスッ…」
「センチメンタルになってるとこ悪いけど、帰ったで」
自分のものではない低い声に顔をあげると
目の前には消えたはずの幼馴染が立っていた
「……おかえり、なんか、結構早かったな」
なんでもなかったようにウサギをベッドに放り投げ
ティッシュで鼻をチーンとかむ
ついさっきまで目の前にいる男の名前を呼び泣いていたのだ、恥ずかしいのは仕方ない
「ゴホン……で?なんであんたが異世界いってんのよ」
仕切り直すにはちょっと無理がある状況だったけど
恥ずかしいんだ、誤魔化されてくれ!!




