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喫茶店は前回と同じ場所で、窓際の席からは川面が見える。私が着いた時、佐藤はもう中に座っていた。彼は警備部門の作業服を着ていた。濃い藍色で、胸には社員証を付けている。目の前の珈琲はほとんど飲んでおらず、杯の縁には水の輪が一筋残っていた。彼は軍隊にいた頃のように背筋を伸ばして座っていたが、指で机の上を軽く叩いている——その仕草が彼の緊張を露わにしていた。
私は腰を下ろし、深煎り珈琲を一つ頼んだ。彼は顔を上げて私を見た。その目は穏やかだった。
「小林様、お越しいただきありがとうございます」
「面と向かって話したいことがあると言ったな。何だ?」
彼はしばらく沈黙し、袂から封筒を取り出して机の上に置いた。茶封筒だった。封はされておらず、縁は擦り切れて白くなっている。私はそれを見つめ、手を付けなかった。
「これは祖父が遺したものです」彼は言った。「亡くなる前に私に渡したのです。もしもいつの日か必要だと思ったら、開けるようにと。ずっと開けていませんでした。先日、開けました」
私は彼に、前回は何も遺っていないと言いながら、今回は新しいものを持ってきたことを問い質さなかった。どうやら彼はもう決断を下したらしい。
「中には何が?」
「一通の手紙と、一枚の借用書です」
彼は封筒を押し出した。私は手に取り、中から書類を抜き出した。便箋は色あせ、折り目は深く、文字は歪んでいた。老人の書いたものだ。借用書は薄い紙で、表題には「借用証書」とあり、金額は五百万。借り主の署名は佐々木大輔、日付は三十五年前。
私はその借用書を見つめ、伊藤の話と併せて考えた。おじい様が佐藤の祖父に負っているのは、ただ金だけではない。命もだ。この借用書は、金が確かにその一部に過ぎないことを示している。
「手紙には何と?」
佐藤は私を見た。その目には、何かとても重いものがあった。「祖父は言っていました。当時、五百万を貸して、おじい様が最初の土地を手に入れるのを助けたと。その後、おじい様は返済したが、祖父は受け取らなかった。この金は返さずに、借りとして残しておくのだと。それから、おじい様がこの人生で負っている借りは、この金だけではないと。命もだ、と」
「何の命だ?」
「松本美月です」
私の指が机の上で止まった。彼がこの名前を口にする時、声は穏やかだった。まるで自分とは無関係な人のことを話しているかのようだった。
「祖父は手紙にこう書いていました。松本美月はおじい様の若い頃の人だと。長年彼に従い、彼の子を孕んだが、無事に生まれなかったと。当時、松本美月は死にかけていた。それを助けたのは私の祖父だ。医者を探し、手を尽くし、彼女を救った。おじい様が私の祖父に負っている借りは二つ——一つは金の、一つは人の」彼は私を見た。「小林様、あなたは松本美月が誰かご存じですか?」
私は知っている。彼がこの名前を口にするのはこれが初めてではないが、彼がこれほどこの名に敏感だとは思わなかった。
「いくらかは」
「ならばお分かりでしょう、おじい様がなぜ私を佐々木の会社に置いたのかを」彼の声が突然低くなった。「私に能力があるからではない。祖父に負っている借りがあるからだ。彼は借りを返しているのだ」
私は背もたれに寄りかかり、この図を描き直した。おじい様は佐藤の祖父に二つの借りがある。佐藤の祖父は金を要らず、おじい様にこの借りを覚えていてほしいと望んだ。おじい様は佐藤を佐々木の会社に置き、仕事を与え、おそらくは役職も与えようとしている。彼は借りを返している。しかし彼は借りを返すと同時に、布石を打っている。彼は佐藤を佐々木の会社に入れ、私に旧市街再開発の事業の帳簿を調べさせ、吉田に私を推薦させ、伊藤に私を協力させた。誰もが彼の計算した通りの場所にいる。私は前へ進んでいる。しかし道は彼が描いたものだ。
「佐藤」私は口を開いた。「今日、私を訪ねてきたのは、これらを伝えるためだけか?」
彼はしばらく沈黙した。「いえ。もう一つ」
「何だ?」
「辞めたいのです」
私の指が止まった。
「警備部門の仕事は私にもできます。しかし私はここに合いません」彼は窓の外を見た。川面に船が進んでいる。「祖父がこれらのものを私に遺したのは、仕事と引き換えにしろというためではありません。私に知らせたかったのだと思います。佐々木の家は私たちに借りがあるけれど、私はその借りに頼って生きてはいけないと」
「どこへ行くつもりだ?」
「分かりません。故郷に帰るか、別の街へ行くか。まずはここを離れます」彼は振り返って私を見た。「小林様、私が去った後は、結衣さんをよろしくお願いします」
この言葉は軽かったが、重かった。私は彼を見た。その目は穏やかで、未練も怒りもなく、ただ考えをはっきりさせた後の落ち着きがあった。
「彼女は知っているのか?」
「いいえ。私が去った後にお伝えします」彼は立ち上がり、封筒を私に押し出した。「これらのものは、あなたがお持ちください。もしかすると、お役に立つかもしれません」
私はその封筒を見つめ、手を付けなかった。「佐藤、あなたは誰にも借りはない。去る必要はない」
彼は一瞬呆けた。
「あなたは佐々木の会社で十分にやっている。なぜ去る必要がある? あなたの祖父の借りのためか? おじい様があなたを引き上げようとしているからか? あなたが私の邪魔になると感じているからか?」私は彼を見た。「あなたはどこも邪魔していない。ただここで働き、自分の力で金を稼いでいる。それの何が問題だ?」
彼はその場に立ち、指で机の縁を強く握りしめた。
「小林様、あなたは私を引き止めているのですか?」
「私は事実を伝えているだけだ」私も立ち上がった。「去るかどうかはあなたの自由だ。しかしあなたの祖父の借りのために去るな。結衣のために去るな。私のために去るな。いつかここに面白みを感じなくなったその時に、去ればいい」
彼は長いこと私を見つめた。そして笑った。その笑顔はごく短いが、とても真摯だった。
「あなたは私が思っていたのと違う」
「どう違う?」
「あなたは私に去ってほしいと思っていると思っていた」彼はうつむき、封筒を見つめた。「あなたがこれらのことを知ったら、私に消えてほしいと思っているのだと」
「消えて何になる? あなたが消えれば、おじい様があなたの祖父に負っている借りも消えるのか? 結衣の心の中からあなたも消えるのか?」私は彼を見た。「佐藤、あなたが去っても、問題はなくならない。あなたが残っても、問題はなくなるわけではない。去るかどうかで、何かが解決するわけではない」
彼は沈黙した。長く。珈琲が冷め、給仕が給水に来たが、彼の一瞥で追い返されるほどに。
「では、私は残ります」ようやく彼が言った。声はかすかだった。「あなたのためでも、結衣さんのためでもない。自分のために。自分の力でどこまで行けるのか、見てみたい」
彼は封筒を仕舞い、袂に入れた。「これらのものは、私が預かっておきます。あなたが必要な時に、私のところに来てください」
彼は去った。背筋はあのまま真っ直ぐだったが、前回会った時よりも、何かが増えていた。弛みではない。彼が考えをはっきりさせた後に得た何かだ。私は喫茶店に座り、冷めた珈琲を飲み干した。
携帯が震えた。吉田からの報せだった。「副社長、午後はお越しですか?」
私は返した。「伺います。四時に」
そして背もたれに寄りかかり、窓の外を見た。佐藤は去った。しかしまた残った。彼は去らなかったが、変わった。彼はもう受動的な者ではない。彼は選んでいる。残ることを選び、自分の力でやることを選び、あのものを自分のために取っておくことを選んだ。この種の者には力がある。金の力でも、権力の力でもない。あの「はっきりさせた」という力だ。
携帯がまた震えた。結衣からの報せだった。「佐藤があなたに会ったんだって?」
情報が早い。「会った。辞めたいと言っていた。私が引き止めた」
彼女は長く返事をしなかった。そして声の記録が届いた。私が開くと、彼女の声はとてもかすかで、ため息をついているようだった。「あなた、変わったわね」
「どこが?」
「出会ったばかりの頃は、きっと彼に去ってほしいと言ったでしょう。今は彼に残るように言った」
私は返さなかった。彼女の言う通りだ。出会ったばかりの頃なら、私は彼に去ってほしいと言っただろう。遠くへ行けば行くほど良い。今、私は彼に残るように言った。彼を恐れなくなったからではない。彼が残ることの方が、去ることよりも役に立つと分かったからだ。自分が何を持ち、何を望み、何ができるかをはっきりと知っている者は、逃げ出した影よりもずっと価値がある。それに、おじい様が彼を見ている。彼が残れば、おじい様は安心する。おじい様が安心すれば、私も前へ進める。
私は立ち上がり、吉田の執務室へ向かった。廊下は長く、陽光が窓から差し込み、床に一区切り一区切りの光と影を描いている。私はその一つ一つを踏み越える。速からず、遅からず。




