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浮気調査から始まる商業帝国築き上げた件について  作者: 白鼠


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11

私は扉を押し開けて入ると、結衣は既にそこにいた。


彼女は窓辺に立っていた。朝と同じ姿だったが、別の服に替えていた——乳白色の連衣裙、彼女が正式な席でしか着ないようなものだ。髪は下ろし、肩に掛かり、毛先が微かにうねっている。空気には彼女のかすかな香水の香りが漂っていた。冷たい木の香りではなく、別の、ほんのりと甘い香りだった。


彼女は扉の音を聞いて振り返った。私を見た時、目が一瞬輝いた——その反応はあまりに速く、まるで本能のようだった。


「来たのね」彼女が言った。口元にごく浅い弧が描かれる。


「道が少し混んでいた」私は歩み寄り、手に持った花を彼女に差し出した。


彼女はうつむいてその白い椿の束を見つめ、一瞬、固まった。「これは……」


「空輸で取り寄せた。あなたの母の花房にあるものより、少し珍しい」


彼女は顔を上げて私を見た。その目には何かが動いていた。感動ではない。もっと複雑な、謎を再評価するかのような眺めだった。


「あなたはいつもそう」彼女が小声で言った。


「どういう意味だ?」


「何をするにも、人より一歩先を行く」


彼女は花を机の上に置き、指で花びらをそっと撫でた。その動きはとてもゆっくりで、何かを考えているかのようだった。


「話したいことがあると言ったな」私は腰を下ろし、彼女にも座るように促した。


彼女は向かいに座り、両手を重ねて机の上に置いた。その姿勢はとても形式的で、まるで会議室で商談を始めようとしているかのようだった。


「小林」彼女が口を開いた。声はいつもよりゆっくりしていた。「昨日、電話を受けたの」


「誰からだ?」


「佐藤の母から」


私の指が机の下で微かに強張った。表面上は、私はただ湯飲みを手に取り、一口含んだだけだった。


「何て言っていた?」


「彼女は……」結衣は下唇を噛んだ。「佐藤はもう諦めたと言っているけど、彼女は信じられないと。自分の息子をよく知っている。彼は諦めるような人間じゃないと」


彼女は私を見た。その目には奇妙なほど静かな落ち着きがあった。


「彼女は言った。佐藤はただ、自分には私の価値がないと思っているだけだって。でももし、いつか自分に価値があると思えるようになったら——」


「彼は戻ってくる」私は代わりに言葉を終えた。


結衣はうなずいた。


「どう思う?」私は尋ねた。


彼女は長く沈黙した。窓の外から川風が吹き込み、白い椿の花びらを微かに揺らしている。


「ずっと考えたの」ようやく彼女が言った。「昨夜は一睡もできなかった」


「それで?」


「それで、こう思ったの」彼女は顔を上げた。その目は先ほどよりも少し確かなものを帯びていた。「佐藤の母が言ったのは、彼女の考えであって、佐藤の考えではない。佐藤があの日、私に別れを告げに来た時、彼ははっきりと言った。彼は約束を違えるような人間じゃない」


「だが、お前は心配している」


彼女は否定しなかった。


「私が心配しているのは」彼女の声が低くなった。「もし本当に彼が戻ってきたら、私は……揺らぐかもしれない」


この言葉の重みで、部屋中の空気が沈み込んだ。


私は彼女を見た。彼女は私を見た。二人とも視線をそらさなかった。


「お前は今、このことを私に話した」私は言った。「私に知ってほしかったからだ」


「そう」彼女は言った。「誰かから聞かされたくない。あなたに隠していると思われたくない」


「では、今それを私に話したのは、私に何かをしてほしいからか? それとも、ただ知らせたかっただけか?」


彼女はしばらく沈黙した。


「ただ知らせたかっただけ」彼女は言った。「あなたに約束したことは、守る。でも、あなたを騙したくない——このことがもう終わったと、偽りたくない。終わってなんかいない。ずっと続くかもしれない」


私は背もたれに寄りかかり、彼女を見つめた。


「どのくらい?」


「分からない」彼女の声はかすかだが、誠実だった。「一年かもしれない。十年かもしれない。一生かもしれない」


この言葉は刃のように、二人の間の薄い体裁をそっと切り裂いた。


「結衣」私は彼女の名を呼んだ。声は穏やかだった。「お前が今言った言葉が、私にとって何を意味するか、分かっているのか」


彼女はうなずいた。


「分かっていて、それでも言った」


「なぜなら、私はあなたにその言葉を借りていたから」彼女は顔を上げた。目の縁は赤かったが、泣いてはいなかった。「あなたは私にできるかと尋ねた。私はできると言った。でも、恋しく思うかと尋ねられたら——『恋しくない』とは言えない」


部屋の中は長く静まり返った。


私は手を伸ばし、彼女の手を握った。彼女の手はとても冷たく、指先が微かに震えていた。


「真実を話してくれてありがとう」私は言った。


彼女は呆気にとられた。この反応は彼女の予想の外だった。


「私はあなたが——」


「どうすると思った? 怒るか? 問い詰めるか?」私は首を振った。「お前は私に話すことを選んだ。もう処理したからではなく、私を騙したくなかったからだ。そのこと自体が、お前の答えよりも大切だ」


彼女の涙がついに零れ落ちた。取り乱した泣き方ではなく、とても静かに、一滴一滴が机の上に落ちた。


私は懐紙を差し出し、彼女はそれを受け取って目元を拭った。


「ごめんなさい」彼女は嗄れた声で言った。「今日は記念日なのに、こんなことを言うべきではなかった」


「言うべきだ」私は言った。「私に考えさせるよりはましだ」


彼女はうなずき、深く息を吸い、涙を押し戻した。そして立ち上がり、窓辺へ歩いていき、窓を押し開けた。


川風が吹き込んできた。水の湿り気と、遠くの街の灯りを運んで。


「佐藤……」彼女が突然口を開いた。声はかすかだった。「今日、この辺りにいるの?」


私の心臓の鼓動が一拍、抜けた。


「どうして分かる?」


「彼が来るたびに、私は感じるの」彼女の手は窓枠に置かれ、外を見ようとはしなかった。「見えるわけじゃない。聞くわけじゃない。ただ……感じるの」


彼女は見ていなかった。だが、知っていた。


「彼に会うか?」私は尋ねた。


彼女は長く沈黙した。川面を船の汽笛が渡る音が聞こえ、階下の食事処からかすかな音楽が聞こえるほどに。


「いいえ」ようやく彼女が言い、振り返って私を見た。「私はあなたを選んだ。今日はあなたと私の日よ」


彼女は歩み寄り、私の向かいに座り直し、懐紙を脇に置いた。目の縁はまだ赤かったが、その表情はもう落ち着いていた。


「何が食べたい?」彼女は尋ねた。口元に無理に作り上げた笑みが浮かんでいた。


「お前が決めろ」私は言った。「私より詳しいだろう」


彼女は献立を手に取り、指はまだ微かに震えていたが、もう真剣に一品一品を読み始めていた。


私は携帯を取り出し、画面を一瞥した。


秘書からの報せだった。「佐藤一郎、まだ同じ場所にいます。移動なし。もう四十分座っています」


私は画面を閉じ、携帯を懐にしまった。


三百米。一枚の壁を隔て、一つの窓を隔て、一条の川を隔てて。


彼女は彼を見なかった。だが、彼がいることを知っていた。


彼は入ってこなかった。だが、去りもしなかった。


そして私たち二人は、一枚の机を挟んで、向かい合って座り、記念日の夕餉を食べようとしていた。


---


料理が運ばれてきた時、彼女はもう普段の姿に戻っていた。口数は少ないが、一言一言が的確だった。彼女は会社のことを尋ね、私が最近何をしているのかを尋ね、明日、一緒に旧屋敷へ行く暇があるかどうかを尋ねた——おじい様が一緒に食事をしたいとおっしゃっているそうだ。


「おじい様、最近よくあなたのことをおっしゃるの」彼女は一切れの魚肉を取って私の茶碗に入れた。「あなたは彼が思っていたよりも面白いって」


「面白い?」


「うん。彼は言った。あなたは何も争わないように見えて、実は何もかも欲しがっているって」


私は箸を止めて、彼女を見た。


「お前はどう思う?」


彼女はしばらく考えた。「半分は正しいと思う」


「どちらの半分?」


「あなたは確かに何もかも欲しがっている」彼女はうつむき、食事を続けた。「でも争わないのではなく——あなたは最善の時機を待っているのよ」


この言葉は、どんな探りの言葉よりも正確だった。


私は彼女を見た。彼女は顔を上げなかった。だが、彼女が何気なく言ったのではないことは分かった。


---


食べ終わる頃、私の携帯が震えた。私は見なかった。


結衣が気づいた。


「見てもいいのよ」彼女は言った。「気にしないから」


私は携帯を取り出した。


秘書からの報せだった。「佐藤一郎、立ち去りました。歩いている方向は、彼が新しく借りた部屋の方角です。振り返りませんでした」


私は画面を閉じた。


「取るに足らないことだ」私は言った。


彼女は追及しなかった。ただうなずいただけだった。


---


食事処を出る時、私は入り口で一瞬立ち止まった。川辺の方角に目をやった。


腰掛けは空いていた。その脇に水の瓶が一つ転がり、風に倒されて、二回転がり、街灯の下で止まった。


結衣が私の隣に立ち、私の視線を追ってそちらを見た。


彼女は何も言わなかった。ただ私の腕を取って、指に少し力を込めた。


「行こう」彼女は言った。「家まで送って」


私たちは川辺を長いこと歩いた。彼女は振り返らなかった。私も振り返らなかった。


だが、彼女の視野の隅が、ずっとあの方向を漂っているのを、私は知っていた。

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