プライベートエリア
開拓村に来て1年もすると、俺たちのプライベートエリアは小さな村の様相を呈して来た。
農地は馬で1時間ちょっと掛けないと平原側から森側までは行き着けないくらいの広さになり、奥の畑で作業する時は移動に時間を取られたくない為に、小作たちは敷地の中央にある雑魚寝用の作業小屋に泊まっての仕事になる。
作っているものも麦、豆、葉物野菜、蕪等多岐に渡り、後から牧場の奥に増設した果実園もある。
森には鳥がたくさんいるので、今の課題は鳥対策だ。
何か良い手はないかなぁ。
案山子はすぐに鳥には役に立たなくなったが、DVDなんてものもこの世界にはないしなぁ。
小作も増え、園内で採れた物を加工するための小さな工場の様な物も出来、畑仕事がまだまともに出来ない子供たちの仕事場となっている。
日本人の感覚だと子供は学校だが、こっちの世界には学校なんてなく、平民の子は小さな時から親を手伝って、親の仕事を覚え、大人になったらその知識を元に自分の生活を立てるのだ。
ただ、工場の中は椅子に座って作業する様に工夫し、体力や力の無い子供でも働ける様にしたんだ。
ヨーグルト工場、バター工場、ピクルス工場等だ。
まだフルーツは採れないけど、採れ始めたらジャム工場とかも建てようかっていう話はある。
その為に最近では砂糖大根も植えているのだ。
それを見て、大人たちの中にも工場で働かせてくれと移住を希望する奴がチラホラ出て来て、更に3家族増えた。
その後すぐ、食事を作るのが大変なので食堂が欲しいという要望があり、給料を下げる代わりに食堂で料理を提供し、そこで皆が食事をする様になった。
その為に、後家さんを一人雇った。
すると一人で料理するには人数が多いのでと後家さんの数が更に二人増えたりと、順次このエリアに住む人数は増えていっている。
もちろん各自の家には台所があるので、自炊も可能だけれどね。
俺たちがちょくちょく森に入って動物を狩ったり、大きな街に行って布とか塩とかを買って来ているのがバレてからは、プライベートエリア内に小さな売店が出来た。
もちろん、俺たちが必要とするものを取り分けた後のモノしか売らないけどな。
その売店にはやはり子供を店員として働かせている。
金勘定が分かる者がいなかったので、辰徳がその子に計算を教えたのだが、かなり苦労していた様子だった。
5年間は無税だから、土地を広げるのも自由だし、俺たち勇者スペックを持つ者が4人も揃っていれば面白い様に整地も進むし、建物は一瞬で出来るしで、ウハウハだ。
最近はとうとう警備の人間も雇う様になって来た。
夜間の見回りと正門での警備用だ。
俺たち4人の他に62名が住んでいるので、もう小さな村だな。
時折、本来の村長であるトボガンが様子見に来るが、自分の村より物と人が揃っているので、何時も帰りには悔しそうな顔をして馬車で帰って行く。
悪いな!勇者スペックは便利だぜ~。




