5.ラウンジ
才華は夜中の三時に目を覚ました。新幹線は六時二十三分だった。静かに身支度を整えた。リュックを背負うと両親にバレない様に静かに動いた。ここで両親と鉢合わせになったら計画が台無しだ。玄関を静かに開けるとゆっくり駅前に歩いて行った。
道には誰も居なかった。鳥たちが朝の挨拶を交わしている。駅前に辿り着くとお弁当を購入した。新幹線乗り場の片隅で新幹線を待った。二人組の女性が笑いながら会話をしている。
「マジで」「そうマジマジ」
頭の悪そうな会話で才華は煩いなと思った。だが、そんな日常もこれで最後だ。
ゴミ捨て場に居るカラスがゴミを漁っている。才華はそれを綺麗だと思った。生きる為に抗う。それは才華もカラスも同じ事だった。もう元には戻れない。
新幹線が到着すると指定席に座った。窓際の席だ。外を眺めながら幕ノ内弁当を食べた。隣には誰も座らなかった。東京まで約二時間。才華は静かに目を閉じた。何故だかとても眠かった。
東京駅までは寝て過ごした。駅に辿り着くと迷路の様な東京駅を歩いた。駅の地下でホームレスの男を見た。目の前には陶器の器が置かれている。日銭を稼いでいるのだろう。才華は五百円玉を器に置いた。
「ありがとう。お嬢ちゃん。良い一日だ」「良い事あるよ」ホームレスの男は笑顔で答えた。
才華は何も答えなかった。地下を抜けて切符売り場に出ると特急成田エクスプレスの切符を購入した。思ったよりも時間に余裕が出来た。特急の指定席に座ると外を眺めていた。自分が育った田舎町は田舎だなと改めて思った。
成田空港まではあっという間に辿り着いた。簡単な地図を目安に空港内を歩いた。東京駅もそうだがもの凄い人ごみが広がっている。迷路を辿りながらラウンジ(ノアズ・アーク)を目指した。
空港内の奥側にラウンジ(ノアズ・アーク)を見つけた。才華は入口の受付に向かった。受付の前には警備員が五人ほど立って居る。受付嬢に話しかけると笑顔で答えてくれた。
「失礼ですが身分証をご提示願います」才華は学生証を受付嬢に渡した。
「鈴木才華様ですね。ようこそ。では中にお進み下さい」
才華が中に入ると大勢の人たちが寛いでいた。
(これが全員、参加者なの?)才華は驚いている。ざっと数を数えてみたが三百人は居る。奥の方には同級生くらいの女子高生が二人で立っていた。才華は戸惑った。(これから殺し合いをするんだよ。呑気にお茶を飲んでいる場合じゃ無いでしょう)才華はそう思いながらもコップにアイスティーを入れた。
他人の事をどうこう言えないな。才華は気を引き締めた。アイスティーを飲むと少しばかり落ち着いた。隣に座っているおじさんが才華に声を掛けた。
「その年で参加するのか?世も末だな」おじさんは気だるそうにしている。
「誰が参加しても自由でしょう」才華は呟いた。
「おっと、そりゃそうだ。でもな。死んだらお終いだぞ」おじさんは席を立った。才華は思った。おじさんも死んだらお終いだよ。
ラウンジにはビュッフェ形式で食べ物が並んでいた。才華は鳥のから揚げを取ると皿の上に乗せた。こんな状況でも小腹が空いている事に驚いた。(緊張して喉を通らないと思ったけど意外と平気なのね)
ラウンジは変な空気の中、続々と人が増えている。
>>登場人物
鈴木才華17歳
>>設定資料
DoomsDayその①。ドゥームズデイは大規模な賭け事であり、様々な事柄が賭けの対象となる。誰が優勝するのか、誰が最初に死ぬのか、誰が最初に逃げ出すのか、など状況に応じて賭け事が成立する。一日に動くお金は三兆円とも言われる。
DoomsDayその②。ドゥームズデイの運営は絶大な力を持つ。世界中の権力者、セレブや富豪が後ろ盾になっている。




